ミニ・レビュー
全英チャート初登場1位を獲得したシンガー・ソングライターのデビュー作。ポール・ヤングを想起させるハスキーな声で熱く誠実に歌い込む、真っ直ぐな姿に惹かれる。UKブルー・アイド・ソウルの伝統を継承する大型新人、どこまで伸びるか楽しみ。
ガイドコメント
甘みのあるハスキー・ヴォイス、天性のメロディ・センス、ロック、フォーク、ソウルの伝統に裏打ちされた感性、鋭くナイーヴな感受性……。多彩な才をあわせ持つアーティスト、ジェイムス・モリソンの会心のデビュー作だ。
収録曲
01UNDER THE INFLUENCE
ストリングスを導入したファンキーなナンバー。古いソウル・ミュージックを思わせる泥臭いサウンドに、腹の底から吐き出すような野太く渋い歌声が踊る。パーカッシヴなピアノのフレーズが、曲全体を熱く盛り上げている。
02YOU GIVE ME SOMETHING
ロッド・スチュワートを彷彿とさせる、ハスキーな歌声が美しく輝くラブ・バラード。一度聴いたら忘れられない甘いメロディに乗せ、愛する女性に向けた素直な思いを綴っている。人間味にあふれた温かな歌声が、心地よいビートとともに体に染み込んでくるナンバーだ。
03WONDERFUL WORLD
ソウルやブルースの要素を取り込んだミディアム・バラード。自身の不遇の時代を思い出し作った曲でもある。心の琴線を震わせる切ないメロディを背景に、怒りや悲しみを秘めた激しいシャウトが、熱く響くナンバー。
04THE PIECES DON'T FIT ANYMORE
優しさに満ちた穏やかな抒情派バラードは、彼が現在付き合っているガールフレンドとのいさかいを描き、愛するからこそ生まれる悲しみや怒りを語ったもの。ディープ・ソウル・バラード風の、哀愁のあるメロディが美しい。
05ONE LAST CHANCE
ドラッグに溺れ堕ちていく友人へのメッセージ・ソング。歌詞からは21歳とは思えない人生の深みと若者らしい希望に満ちた世界観が感じられる。16ビートの心地良いメロディに差し込まれる、優しくムーディなピアノの音色が美しいナンバー。
06UNDISCOVERED
“自分を信じ頑張れば、いつか見い出される”というポジティヴなメッセージを込めたミディアム・バラード。後半のサビ部分では、女性コーラスとの情熱的な掛け合いも披露。ソウルフルでブルージィな歌声がたっぷりと楽しめる。
07THE LETTER
失恋をした男の苦悩を歌った、物悲しいバラード。白人のイギリス人男性には珍しいブルージィ&ソウルフルな歌声で、滋味あふれる音楽世界を作っている。古いソウルやブルースに親しんできた彼の、渋い音楽観が表われた作品。
08CALL THE POLICE
野生的な男臭さを放つかすれ声で、感情を吐露するブルース・ロック。スティーヴン・タイラーを思わせるパンチの効いた歌声が、ブルースの泥臭いサウンドとあいまって、70〜80年代のような雰囲気を醸し出している。
09THIS BOY
辛い少年期を過ごした彼が、母に送るメッセージ・ソング。“母さんのせいで僕の人生は滅茶苦茶だった。でも恨んだりするつもりはない”という正直な思いを書いている。スワンプ・ロックのようなメロディが、ほどよい土臭さを醸成しているナンバーだ。
10IF THE RAIN MUST FALL
ソウルやブルースの渋みに、メロディアスなポップ感を融合したナンバー。スティーヴィー・ワンダーやヴァン・モリソンらを彷彿とさせるソウルフルな曲調と腹の底からしぼり出すような歌声が、熟成された世界観を作り出している。
11HOW COME
激情のこもった歌唱で聴かせるソウル・ロック。ギターのシンプルな爪弾きに合わせて発する、しぼり出すようなハスキー・ヴォイスが心に響いてくる。オーティス・レディングが引き合いに出されるほど、表現力豊かな作品に仕上がっている。
12THE LAST GOODBYE
シンプルなドラムのリズムに、上品なストリングスが重なるバラード。しっとりとした大人の雰囲気のメロディに乗せ、別れ際の男の生々しい感情を描いている。“歌を通し感情を表現すること”を重視した彼の姿勢が伝わってくる作品。
13MY UPRISING
ブルースの要素を持たせながら、メロディがキャッチーなロック・ナンバー。前向きに生きていこうという感情を、ブルージィな歌声で表現している。エリック・クラプトンのブルース・ロックに通ずる郷愁感が心地良い。
14BETTER MAN
静かなギターの弾き語りでじっくりと聴かせるナンバーで、ガールフレンドに向けた永遠の愛を、人間味あふれる温かな声で歌っている。15歳の頃から路上で弾き語りをしていたという彼の実力が、魂に響く歌声から感じられる。