ガイドコメント
前作から約1年3ヵ月ぶりとなる、aikoの通算6枚目のアルバム。2曲のヒット・シングル「かばん」「花風」に加え、アルバムに先がけてリリースされたシングル「三国駅」を含む、充実の1枚。
収録曲
01青い光
イントロの1フレーズが空に溶け込んでいきそうに儚げで哀しく、この後のドラマティックな展開を予感させるナンバー。「僕」という一人称で語られたリリックは別れを予感させ、どこかクールで傍観者的。そんな「僕」の暗さが「空」の美しさをより際立たせている。
02恋人同士
ピアノとヴァイオリンの美しいメロディがクラシカルな雰囲気を醸し出す、ちょっと異色のポップ・ナンバー。恋人同士ならではの不安や矛盾やわがままをさらりとキュートに歌った、愛らしい1曲となっている。
03エナジー
「恋人にもっとくっついていたい」という女心を“目を離さないで 風が今日は強いから”という言葉で間接的に伝える歌詞が、もどかしくもかわいらしいアップ・テンポなナンバー。裏打ちのギターが効いたピアノ・ロックのサウンドが、ポップな世界をより引き立てている。
04明日もいつも通りに
昔の恋人を思い出して、時が経っても変わらない愛を主観的かつ感情的に歌った、切ないミディアム・ナンバー。クライマックスに向けてのサウンドの盛り上がり、徐々にエモーショナルになっていくヴォーカル、ラストの転調……と、曲構成も完璧だ。
05かばん
大好きな人への想いを胸にしまい込みながらも、気持ちをさとられないよう、さまざまに夢想していく彼女の心模様。片想いだけど、けっして肩肘貼らず前向きに受け止めゆく恋心を、温かさ覚える歌声を通して素直に描写。
06恋の涙
ピチカート奏法によるストリングスとピアノの、追いかけっこのようなイントロで始まる軽快なナンバーで、全体的にストリングスを効かせたサウンドが魅力。涙が止まらないと歌う失恋ソングも、彼女の手にかかれば、女の子の共感を呼ぶ応援ソングに早変わりだ。
07ビードロの夜
不安や嘘という恋愛の負の部分を歌った、ロック歌謡ともいうべきノリのいいナンバー。「救急車」「ビードロ」など独特の表現がちりばめられながらも、リスナーが主人公に感情移入してしまう共感を呼ぶ詞は見事だ。
08愛のしぐさ
ヴォーカルを浮き立たせるような、ピアノをメインとしたシンプルなバラード。aikoが歌う「愛のしぐさ」は、恋人同士でも伝わりづらいほどに繊細で不器用。愛するがゆえのすれ違いに、余計に切ない気持ちにさせられる。
09ずっと近くに
ピアノやホーンをフィーチャーした、ジャジィで大人のムードたっぷりのナンバー。カタカナひとつ見当たらない日本語のみで、星空の下で川辺を歩く2人を細やかに描写した詞は、曲の雰囲気に負けず劣らず、しっとりと甘く薫ってくる。全編を包むアンニュイさも魅力的だ。
10Smooch!
予測できないスリリングなメロディ・ラインが曲中に出てくる「シャボン玉」を思わせる、テンポのいいライトな1曲。恋愛において、女性の方がイニシアティヴを握っている状況を、コミカルに描いている。ラストの口笛はaiko本人によるもの。
11花風
花風を覚えたとき、悲しかった想いも素敵な思い出として受け止められる。時の経過のおかげで、切ない感情をポジティヴな想いへと昇華していけた女性の心境を、躍動的なビートに乗せ、優しげに歌いあげていく。
12三国駅
aikoが学生時代に毎日のように学び遊んでいた、大阪府淀川区にある阪急宝塚線の実在する駅名からタイトルがつけられた、17thシングル。過去の自分を振り返りながら変わらない街並みを眺める、一人の女性の視点で綴られたリリックが味わい深いナンバーだ。
13星物語
ローズ・ピアノとハモンド・オルガンのやわらかな音色が、タイトル通り星空が輝くさまを思わせ、まるで子守唄のようにソフトな1曲に仕上がっている。優しく透明感のある歌唱が、曲の世界観を巧みにまとめているナンバーだ。