ミニ・レビュー
1年8ヵ月ぶり8枚目のアルバム。2006年に発表した3枚のシングル曲を、カップリング曲も含めてすべて収録。彼ららしいラブリーなロック作に仕上がった。タイトルの“32”は“ミー・トゥ”の意味で“俺もだよ”と言える経験値に達したいという和田唱の思いが込められた。
ガイドコメント
2006年にデビュー10周年を迎えたTRICERATOPSが放つ、節目的なアルバム。“一緒に踊ろう”をテーマに掲げてきた彼らの、2006年の活動の集大成的な仕上がりとなっている。楽曲にみなぎるポジティヴなパワーがなんとも痛快だ。
収録曲
01トランスフォーマー
特徴的なイントロから、低音のリフを中心に勢い良く疾走していくロック・ナンバー。周りを変えるにはまずは自分からと言い聞かせ、“前にひたすら進んでいこう”と歌う姿勢を、骨太なグルーヴが後押ししている。
02Scar
シンプルに削ぎ落とされたアレンジに、中期ビートルズを彷彿とさせるギターが絡むナンバー。テーブルの傷を見ながら、心が傷つくことは悪いことじゃないと気づく詞が、甘いメロディとは対照的にクールな印象を残していく。
03Warp
ファンキーなリフが支配しながら、サビでは流れるようなコーラスを聴かせている。力強いバンド・サウンドにR&B色の濃いメロディが溶け合うナンバーで、“Warp!”という言葉とともに、未知の世界へ飛び込んでいきたくなる。
04Walk In The Park
優しいメロディに乗せて、恋人への別れを歌ったミディアム・ナンバー。一定に保ったリズムに寄り添うギターが柔らかな旋律を繰り返し、ノスタルジックな気持ちにさせるメロトロンの音色に耳が引かれていく。
05Vine
要所でかき鳴らされるギター・リフ以外は淡々と進んでいくバンド演奏が、メロディと歌詞をくっきりと際立たせていく。後半の言葉をゆっくりと追ってくるコーラスが印象的な、愛し抜いてこそ知れる喜びがあることを歌った曲。
06ホログラム
ビートルズ『ラバー・ソウル』を意識したサウンド作りで、ギターが刻々とリズムを刻む曲。日常の中に“輝く笑顔の光”を見つけていこうというメッセージが、繰り返しが中心のサウンド・アレンジによってリアルに伝わってくる。
07ベル
アコースティック・ギターをフィーチャーした牧歌的なナンバー。信号が赤から青に変わるまでのちょっとした心の動きを捉え、最後には“君とともに歩むこと”を確認していく。温かみのある演奏から漂うレトロな空気が絶妙だ。
08僕らの一歩
愛する人とのエピソードをたどりながら、1人より2人の楽しさや愛することの素晴らしさ、理解することの深さを歌うミディアム・バラード。弾むようなリズム隊によるサウンドが、愛に包まれて幸せな2人の鼓動を表現しているようだ。
09ハンマー
この3ピースには珍しい、超ガチンコな作風の異色作。勝負師の強さと興奮を、重厚感たっぷりに響くギター・リフで表現。小気味良いリズムのリフレインと“俺ではなく僕”と言ってしまうあたり、彼らのナイーヴさがにじみ出ている。
1033
11アンブレラ
雨宿り中に夢の世界に迷い込み、再び現実へと戻ってくるまでを描く。ドラムとベースを中心にしたアレンジで、ほのかにサイケデリックなギターが特徴的。センチメンタルなメロディが、切ない余韻を残していくナンバー。
12ブレーカー
重低音の力強いビートが弾む、オーソドックスなロックンロール・ナンバー。自然と踊り出したくなるようなリズミカルなサウンドにリード・ギターのエキセントリックなリフが絡む演奏は、リスナーをゴキゲンにさせてくれる。