ミニ・レビュー
先行シングル(3)(11)やCMイメージソング(10)など真骨頂のバラードはもちろん、NHK連続テレビ小説主題歌(1)や(4)などにうかがえるポップ感がより印象的なセカンド。ファルセットにも脂がのり、フォークから派生する多彩な世界が個性的に体現されている。
ガイドコメント
『新たなる香辛料を求めて』以来、約2年半ぶりとなる森山直太朗のオリジナル・アルバム。ベスト盤『傑作撰 2001〜2005』以降のシングル曲「風になって」などを収録。さらにレア音源が楽しめる、ボーナスCD付きだ。
収録曲
[Disc 1]
01風になって
アコースティック・ギターとストリングス&ヴィブラフォンの響きが美しくもキャッチーなミディアム・チューン。彼の持ち味である存在感あふれるヴォーカル&ファルセットが良く映えて、聴くだけで心が癒される。希望に満ちたさりげなくも力強い詞も好印象だ。
02BLUE
夢を追いかける少年の、ポジティヴさとネガティヴさが入り混じったような、青くさい心情を歌った青春ソング。内省的な歌詞の中に光るユニークな言葉のセンスが印象的。間奏に挿入される口笛の優しい音色に癒される。
03恋しくて (オーケストラバージョン)
美しくてどこか寂しげな冬の街景色が目に浮かぶような、ドラマティックで切ないラブ・バラード。透明感のあるファルセットを織り交ぜた伸びやかなヴォーカルと、ピアノとストリングスの温かみのあるサウンドとの相性も抜群。
04平凡ぶる〜す
ハワイアン・テイストを盛り込んだ、どことなくレトロなサウンドが印象的なナンバー。シンプルな構成によって、ユニークな詞の歌いまわしを楽しむことができる。タイトルとは裏腹に、森山の非凡な言葉のセンスと音楽的才能が実感できる。
05シルビア
喫茶店で彼女を待つ男を歌った詞と不安げに語りかけるようなヴォーカルが、往年のフォーク・ソングを彷彿とさせるシンプルな弾き語り曲。サビのバックに流れるクリスマス・ソング風のドラマティックなコーラスが印象的だ。
06風花
森山の澄みきったハイトーン・ヴォイスが冴えわたるミディアム・バラード。「僕たちのエデンの園」「綻びは堕天使のように」など、一歩間違えば陳腐になりかねない歌詞を違和感なく聴かせる彼のキャラクターと、歌の世界に引き込ませる声の魅了は圧倒的。
07しまった生まれてきちまった
フォークの神様と呼ばれた岡林信康や、伝説のフォーク・グループ、フォーククルセダーズの系譜を継ぐかのような、ユニークさとメッセージを兼ね備えた弾き語り曲。語尾をしゃくり上げるようなクセのある歌い方が印象的。
08Q・O・L
タイトルは「クオリティ・オブ・ライフ」の頭文字。飾らずに自分らしく生きようとのメッセージが込められた、ポップなナンバーだ。アコースティック・ギター中心のシンプルなサウンドに、さまざまな言葉遊びや歌声の使い分けがちりばめられた、さりげない傑作。
09愛のテーゼ
重みのあるバラードを思わせるタイトルとは異なり、意外にもアップ・テンポに展開するポップ・ナンバー。男性の中に潜む可愛らしさが感じられる詞が印象的。「まぁ君は 僕の救世主」というフレーズこそ、究極の「愛のテーゼ」?
10君は五番目の季節 (アルバムバージョン)
流れるような美しいメロディが胸にしみる切ないラブ・バラード。ピアノを基調としたシンプルなサウンドに、ハモンド・オルガンとフリューゲル・ホーンの音色が幻想的な雰囲気を漂わせ、透明感のあるヴォーカルを引き立てている。
11夢みたい〜だから雲に憧れた〜
サウンド・プロデューサーに笹路正徳を迎えて制作されたバラード。ピアノを中心としたドラムレス・トリオにストリングスや管弦楽を配した編曲によって、穏やかなメロディを上手く引き立て、温かみのあるサウンドとなっている。エプソン「カラリオ」CMソング。
[Disc 2]
01虹 (屋久島ドミニカバージョン)
ナイーヴさと力強さを合わせ持った、温かみのある歌詞と流れるような美しいメロディが心に響くミディアム・ナンバー。繊細なピアノの音色と屋久島の子供たちによるコーラスが、作品にハートフルな雰囲気をもたらしている。
02マザーアース (リビングルームセッション)
母である森山良子をコーラスに迎えた、シンプルなギター弾き語り曲。2人それぞれの歌声の美しさはもちろんのこと、母子ならではの息の合ったコーラス・ワークと声の相性の良さを堪能できる。冒頭と最後に、レコーディング時の母子の会話を聴くことができる。