ミニ・レビュー
デビューから16年を数えても、あいかわらずスマートなラジカルさを失わない三人組ラッパーの10枚目のアルバム。今を感じさせる歌作りも健在で、その意志がタイトルに表われている。いい感じにポップなところも変わらないが、さすがに大人っぽくなったなあ。
ガイドコメント
3人組ラップ・グループの約2年半ぶりとなるアルバム。シングル「DISCO SYSTEM」のほか、デジタル配信のみで発表した楽曲、未配信曲を収録。エレクトロ、オールドスクールをユニークな発想で集約したサウンドが展開されている。
収録曲
01con10ts
ゆるい打ち込みのリズムが心地よいジャジィなトラックに女性ヴォイスによる英単語をちりばめた、アルバム『コンテンポ』のオープニングを飾るオシャレなSE。水中で録音されたような浮遊感ある不思議なサウンドが、スチャダラ・ワールドへと誘ってくれる。
02マニュアル
タイトルどおり、自分たち自身のことをよく耳にする最新電子機器の宣伝文句風に紹介したリリックが面白い、ビートのきいたエレクトロなナンバー。ところどころに混じっているユーモアたっぷりの現代社会への皮肉も、スチャダラらしい仕掛けだ。
03BD発言
身近なことから社会現象まで、世の中で多くの人が「なんか変だな」と感じていることをバッサリ斬ったリリックには思わず「あるある!」とうなってしまう。BOSEとANIの掛け合いによる、キレのあるラップが冴えわたったアッパー・チューン。
04Disagree〜涙のディスアグリー
80年代ディスコ風のサウンドに乗せて、淡々と世間の矛盾を皮肉っていくナンバー。最後のエフェクトをかけたヴォーカルが呪文のように繰り返す、「夢は金持ち 声に出したい 一日5回 夢は金持ち」に凝縮されたメッセージには思わず共感。
05Soft Focus
せつないシンセサイザーのメロディが印象的なトラックに、多くの人が経験したことがあるような恋のはじまりの描写が乗った、メランコリックなスロー・ナンバー。ユーモアのなかにも、胸がキュンとするようなピュアなリリックが満載。
06People People
思わず身体を揺らしてしまいたくなるようなサンバのリズムを、エレクトロニックにアレンジしたトラックがキュートで都会的。“People People”と繰り返すヴォーカルが、効果音の一部のように頭の中をループする中毒性のあるナンバー。
07DISCO SYSTEM
スペーシーなエレクトロ・トラックにエフェクトの効いたヴォーカルが乗った、フューチャー・ディスコ・チューン。まさにリリックどおりの「OLD to the NEW」といえるポップ・サウンドは、おしゃれでセンス抜群だ。
08CATCH the DROP
ルーズでファンキーなイントロから、脱力感のあるBOSEとANIの掛け合いによる、ブラックジョーク満載の男前なリリックが炸裂。重低音のベース・ラインとタイトな音数の斬新なグルーヴがクセになる、「反骨ベースのあっさり系」といえるナンバー。
095 cups
さりげない日常を切り取ったBOSEとANIの掛け合いは、友人同士の会話のようにリラックスしていてナチュラル。メランコリーなギターのメロディが、せつなさを誘うオーガニックなトラックにほどよくマッチングしている曲だ。
10荒野ウォーカー
マカロニ・ウエスタンの雰囲気があふれるトラックに、スチャダラパーの十八番の辛口リリックが炸裂。いろいろ気になる世の中、周囲が言いたくとも言えないことを面白おかしく言い放った、聴いてスッキリ、踊ってスッキリの楽しいナンバー。
11DAI-KOUBUTSU
ヴェルディの世界的大名曲、歌劇『アイーダ』の「凱旋交響曲」をファンキーにサンプリング。「四番 ストライカー 金メダル」と世間の人々が大好きなモノを思いっきりリリックのなかに凝縮した、ゴキゲンなナンバーだ。
12ジャカジャ〜ン
SLY MONGOOSEの笹沼位吉、ヒックスヴィルの木暮晋也が参加した、ノイジーなディスコ・パンク風サウンドがかっこいいアッパー・チューン。ロックで骨太なサウンドとファンキーなラップが融合して、テンションは最高潮に。
13ソング オブ ザ ヒル
サビのエフェクトがかかっているヴォーカルと浮遊感のあるキャッチーなメロディが心地よい、ポップなナンバー。街で目にした光景から思い浮かぶことをとりとめなくフロウしていくようなリリックは、多くの人が身に覚えがあるはずという内容だ。