ミニ・レビュー
ザ・フーの実に24年ぶりのアルバム。近未来を舞台にしたロック・オペラというコンセプトは彼らの得意とするところ。多少ワイルドさには欠けるが、考えて見れば年相応か。ダルトリーがストーリーに沿ってダミ声まで駆使して頑張っている。期待に違わない力作!
ガイドコメント
“世界で最も影響力のあるロック・バンド”といわれるザ・フーの、なんと約四半世紀ぶりとなるオリジナル・アルバム。精力的なライヴ活動を経て、本作で本格的な復活が実現する。
収録曲
01FRAGMENTS
ピート・タウンゼンドの小説『The Boy Who Heard Music』に登場するバンド“ザ・グラス・ハウスホールド”が小説内で飛ばすヒット曲を作品化。「ババ・オライリィ」をアレンジしたイントロにおのずと気分は高揚する。
02A MAN IN A PURPLE DRESS
キリストの最期と復活を描いたメル・ギブソン監督映画『パッション』に触発されたアコースティック・ナンバー。神の代弁者たる宣教師らへの疑問や皮肉が綴られた歌詞で、曲調は穏やかさの中にも力強さを感じさせる。
03MIKE POST THEME
硬軟織り交ぜたロック・アンサンブルで構成された秀作。『ヒル・ストリート・ブルース』など数々の傑作TV音楽を手がけた巨匠作曲家の名を冠した曲で、“若さ”をテーマにした歌詞中でもキーワードとして名が挙がる。
04IN THE ETHER
肉体が滅しても生き続ける精神を描いた哲学的な歌詞の曲。ロジャーは「ピートが歌うべき曲」だと歌唱を辞退。作中の主人公が90歳の設定であるため、ここでのピートはトム・ウェイツのようなダミ声歌唱を展開している。
05BLACK WIDOW'S EYES
『エンドレス・ワイヤー』唯一のザック・スターキー参加曲は、2004年のベスラン学校占拠事件を舞台にした異色のラブ・ソング。往時のダイナミックな作風を思い出させる、陰りとグルーヴが同居した彼ららしい音世界が広がっている。
06TWO THOUSAND YEARS
映画『パッション』に触発されたアコースティック・ナンバー。“ユダの福音書”の解読で浮上した「ユダの裏切りはキリスト自身の指示」説を歌った曲で、曲題は人類がその仮説に思い至るまでに要した年月を示している。
07GOD SPEAKS OF MARTY ROBBINS
アコースティック・ギターの調べが美しい弾き語りナンバー。創造主と甘い歌声のカントリー歌手マーティ・ロビンスを絡めたスケール大きな詞世界を通じ、音楽が万国共通の魅力的な創造物であることを歌い上げている。
08IT'S NOT ENOUGH
映画『軽蔑』(1963年)に触発されたロック・ナンバーで、ピートと恋人レイチェルの共作名義。恋愛における“満足”を題材にした歌詞は、他の局面での欲望にも置換可能。演奏、歌唱、編曲、そのすべてが精悍な名曲。
09YOU STAND BY ME
ピートが自分を支え続けてくれた恋人やロジャー、家族や友人、そしてファンへの感謝を綴った感動的なナンバー。アコースティック・ギターによるシンプルな弾き語りは、それゆえ彼の真摯な謝意が直裁に伝わってくる。
10SOUND ROUND
11PICK UP THE PEACE
12UNHOLY TRINITY
13TRILBY'S PIANO
14ENDLESS WIRE
15FRAGMENTS OF FRAGMENTS
16WE GOT A HIT
17THEY MADE MY DREAM COME TRUE
18MIRROR DOOR
19TEA & THEATRE
20WE GOT A HIT
21ENDLESS WIRE