ミニ・レビュー
スタジオ録音作としては2年ぶりになるサラ・マクラクランのアルバムは、彼女にとって初のクリスマス・アルバム。定番の曲をはじめ、ジョン・レノンの(1)や同郷カナダの先輩ジョニ・ミッチェルの(3)などを、美しい声でしっとりと歌った心温まる好作品となっている。
ガイドコメント
サラ・マクラクランの約2年ぶりのアルバムは、極上のクリスマス&ウィンター・アルバム。“天使も心を奪われる”と言われるほどの美しい歌声を持つ彼女ならではの、稀有なアルバムといえるだろう。
収録曲
01HAPPY XMAS (WAR IS OVER)
ジョン・レノンとオノ・ヨーコによる名曲をカヴァー。元々透明感のあるハートフルな曲だが、サラの澄んだ歌声でさらに違った美しさを与えられている。彼女が設立したワーク・ショップの子供たちによるコーラスは感動的。
02WHAT CHILD IS THIS? (GREENSLEEVES)
伝統的なゴスペルをサラ流にアレンジ。愁いを帯びたアコースティック・ギターとピアノ中心のアレンジで、儚く淋しげな雰囲気が漂う。枯葉舞う冬の風景が目に浮かびそうな、感傷に浸りたい人にぴったりの曲。
03RIVER
サラ自身がリスペクトするアーティスト、ジョニ・ミッチェルの名曲。クリスマスの哀しみの一面を歌ったという、ノスタルジックなバラード。サビで聴かせるファルセットや伸びやかなヴォーカルが、爽やかに胸を突く。
04WINTERSONG
数々の名曲をカヴァーしたアルバム『ウィンターソング』の中にあって、唯一サラが書き下ろした1曲。ピアノ1本のシンプルなアレンジで、彼女の美しい歌声に酔いしれることができる。どこか懐かしさがこみ上げる名曲。
05I'LL BE HOME FOR CHRISTMAS
第二次世界大戦のころ、戦地の兵士が母国にいる家族を想う気持ちを歌った曲で、いつの時代にも通じる家族愛を感じることができる温かいバラード。サイレントされたトランペットの音色もどこかホッとする柔らかさがある。
06O LITTLE TOWN OF BETHLEHEM
優しく包み込んでくれるようなストリングスによるアレンジが秀逸で、サラの歌声と絶妙にマッチ。ドブロ・ギターの音色が特徴的で、日の暮れかかった田舎道をゆっくりと歩いていくようなイメージを喚起させるナンバー。
07THE FIRST NOEL|MARY MARY
アルバム『ウィンターソング』で、名曲2曲がメドレーでつながる聴き応え十分の作品。モノトーンの長い音にサラのヴォーカルが乗る冒頭部分で引き込まれ、「メアリー・メアリー」にスイッチするブリッジ部分からは民族的なサウンドに心躍る、2つの魅力を持った曲。
08SILENT NIGHT
日本でもおなじみの「きよしこの夜」をカヴァー。ヴォーカルの多重録音を使用し、幾重にも重ねられたサラの歌声は、曇りのないガラスを何枚も合わせたような強さと透明感に満ちている。美しいハーモニーは芸術の域だ。
09SONG FOR A WINTER'S NIGHT
シンガー・ソングライター、ゴードン・ライトフットの曲をカヴァー。孤独と希望が同居した、独特な雰囲気を持ったバラード。アコースティック・ギターと分厚いコーラスをメインに構成されており、ノスタルジックな仕上がりとなっている。
10HAVE YOURSELF A MERRY LITTLE CHRISTMAS
キラキラした鈴の音がメルヘンに響き、これぞクリスマスといった趣の1曲。ロマンティックな夜にぴったりの幸福感あふれる正統派クリスマス・ソングとなっていて、恋人や家族と一緒に聴けば心温まることうけあいだ。
11IN THE BLEAK MID-WINTER
澄み切ったサラのヴォーカルにエコーがかかり、聴くものの周りを空気のように覆い尽くす存在感がある。シンプルなアレンジの曲だけにその美しさが際立ち、雪の結晶のような輝きさえも目の前にイメージできるかのよう。
12CHRISTMAS TIME IS HERE
“スヌーピー”と“チャーリー・ブラウン”のアニメーションに使用されていたという楽曲。ピアノのみでアレンジされたスロー・バラードで、ピアノの演奏は友人であるダイアナ・クラールが担当している。サラならではの聴かせるナンバーだ。