ミニ・レビュー
15歳でデビューし、18歳でセカンド、そして21歳で本サード作を発表。高音域の広いレンジを活かして、キース・スウェットのスローのカヴァー「ライト・アンド・ア・ロング・ウェイ」から南部仕様のシンセ・バウンス「レット・ミー・ウォッチ」まで、多彩なスタイルを我がものとして歌いこなした大人な意識と力量が立派。
ガイドコメント
前作『ターニング・ポイント』でトップ・アーティストの地位を完全に確立した、マリオが放つ3rdアルバム。俳優デビューとなった映画『Step Up』の劇中で使われた、美しいデュエット・バラード曲も収録する。
収録曲
01GO
ネプチューンズの都会的センスあふれるサウンドとマリオのしなやかさが光る作品。緊張感のあるシンセ・ストリングスにキレのあるリズムが食い込んでいく。洗練されたダンス・ビートは、泥臭さがまったくないブラック・コンテンポラリーの新境地だ。
02CRYING OUT FOR ME
プリンスのヒット曲「リトル・レッド・コルベット」のコード進行をいただいた、ジャスパー・キャメロンのペンによる21世紀版スウィート・ソウル。ヴォコーダーやファルセットを駆使したヴォーカル・アレンジが、甘い曲をさらに甘く聴かせてくれる。
03SKIPPIN'
80年代の香りがプンプンする変幻自在のポップなコンテンポラリーR&B。Aメロのキャッチーなリフ・フレーズがサビの歌メロに流用されていて頭脳的だ。控えめなストリングス・アレンジやBメロのみでピアノを登場させるアイディアもあざやか。
04MUSIC FOR LOVE
甘くて洗練されたR&Bの名人、ラルフ・B・ステイシー制作のウルトラ・メロウなサウンド。ファルセットと細かい符割りのヴォーカルに、計算しつくされた企みを感じる。マリオの七色の声にも感心してしまう力強い作品だ。
05KRYPTONITE
この人はどんなキーの曲でも自在に歌いこなしてしまうんだ! と感じる、マリオの歌の力があふれている作品。ダビーなピアノと「スロウ・サム・ディーズ」のヒットで世に出たリッチ・ボーイのひねたラップも印象的だ。
06HOW DO I BREATHE
ヒット曲の方程式を解きつくしたスターゲイト制作のアルバム『GO』からの1stシングル。R&Bテイストが隠し味的に使われるポップ・サウンドで、マリオにはこんなクオリティの高いメロウなメロディが良く似合う。
07NO DEFINITION
奇想天外なリズム・ヒットと緊張感のあるフレーズが迫ってくるティンバランド作品。重ねられたヴォーカルがコード感を生み出す贅沢なアレンジは、マリオならではだ。品の良いハープとピアノのブレンドが、地味派手に訴えてくる。
08WHY
2005年あたりからはやりだした、メロウ・サウンドに細かい符割りの歌メロをぶつけるニュー・タイプのバラード。リリックもアレンジも甘いが、マリオがさらっと軽快にパフォーマンスしており、飽きがこない工夫がこらされている。
09LAY IN MY BED
メロウの名人、ビッグ・リース&ジャスパー制作のメロウ・ポップス。マリオのオリジナリティである“甘くなっても艶っぽくならない”パフォーマンスがしつこくなくて良い。彼女をベッドへ懇願するリリックを良い意味でさらっと聴かせてくれる。
10RIGHT AND A WRONG WAY
キース・スウェットのデビュー・アルバム『メイク・イット・ラスト・フォーエヴァー』からのカヴァー・ソング。大ヒット「アイ・ウォント・ハー」ばかり目立ったアルバムの中に、こんなメロウで素晴らしい作品があったんだと感謝させてくれるリメイクだ。
11LET ME WATCH
変態的で猥雑なミッドウェスト・サウンドはミスター・コリパークのプロデュース。ヒップホップ・サウンドでもマリオはしっかり歌で聴かせてくれるが、余裕でフロウもこなしている。ジュエルズ・サンタナが粘っこいラップで花を添えている。
12DO RIGHT
生楽器をふんだんに使ったエイコン制作のシンプルなポップ作品。ゴスペル・テイストで不安が洗いざらい歌われた後に力強く“正しい道はひとつしかない”と繰り返される。落ち込んだときにオススメしたい聴きやすいチア・ソングだ。
13LET ME LOVE YOU
2005年を代表する大ヒット曲。シンプルなアコースティック・アレンジは曲の良さを再認識させてくれる。ニーヨのソング・ライティングの能力もさることながら、マリオの嫉妬深いリリックに説得力を与える歌唱力の懐の深さに感心してしまう。