ミニ・レビュー
デビュー・シングルやファースト・アルバム収録曲のセルフ・カヴァー、ノラ・ジョーンズの楽曲のカヴァーに新曲も加え、彼女のヴォーカリストとしての魅力を堪能できる一枚。スタジオでバンドと一発録りに近い形でレコーディングし、臨場感が生きている。
ガイドコメント
松浦亜弥の2006年11月発表のアルバム。セルフ・カヴァーや洋楽のカヴァー、スタジオ・ライヴ音源などを収録したヴァラエティ豊かな1枚だ。精力的にライヴ活動を続ける彼女の、着実な成長ぶりがうかがえる。
収録曲
01Feel Your Groove
“Dr.JAZZ”の異名をとるベン・シドランの曲を日本語でカヴァー。キャッチーなコーラスが特徴的だった原曲を大胆にアレンジし、フォーキーなボサ・ノヴァ風に仕上げている。サウンドに合わせた俯瞰するようなクールな歌唱が、松浦の潜在能力の高さを感じさせる。
02Rock My Body
Joey&The Boyというアメリカのバンドの楽曲を日本語に訳してカヴァー。歪んだギターと生音のドラムが特徴的な80'sファンクの香りがむんむんのアダルトな一曲。日本語詞ながら洋楽の雰囲気はまったく失われず、巧みなフェイクにも震撼!
03ひとり
別れてしまった恋人に思いを馳せる、センチメンタルなスロー・ナンバー。ゆったりとしたオルゴールのようなAメロ、Bメロから、突然エモーショナルに喚起するCメロの導入が、寂しさを効果的に演出している。
04オシャレ!
アルバム『ファーストKISS』収録曲のセルフ・カヴァー。コンテンポラリーで軽い印象の原曲が、ブラス・アレンジを加えたことで、より深みのある情緒的なイメージに仕上がっている。リリックにちらりと垣間見られる黄昏感も、いっそう色濃く感じられる。
05I Know
「愛の」と「I know」をかけた、言葉遊びがコミカルなブラス・ロック。すべて生音で録音されたブラス・バンドのサウンドが、懐かしくも新鮮な印象だ。飛び出すような軽快なホーンの音とともに、テンション高め↑で踊れそう!
06初めて唇を重ねた夜
アルバム『ファーストKISS』収録曲のセルフ・カヴァー。壮大なオーケストラ風のストリングスが際立っていた原曲を、アコースティックな楽器をベースとした、スローで大人なイメージに大胆にアレンジ。ウッディかつしっとりと濡れた気だるい印象に。
07LOVE涙色
彼女のブレイクの呼び水となった3rdシングル。過ぎた恋の思い出を強がりで追い払おうとする意地っ張りな主人公の感情が、澄んだメロディと凝ったアレンジのトラックに乗せて歌われる秀逸なアイドル・ポップス。シンセの被せ方が絶妙。
08ドッキドキ!LOVEメール
当時まだ14歳だった彼女のメロウ&ポップなデビュー曲。ワウ・ギター、ストリングス、ブルース・ハープ、「パパパ〜」なコーラスなどの小技をフル活用したアレンジの妙に最後まで耳が釘付け。サビ部でのストリングスが絶品。
09トロピカ〜ル恋して〜る
どこぞの芸人の一発ギャグのようなタイトルからは想像つかないポップな夏ソング。彼氏に旅行に誘われ戸惑う気分を、全編アッパーなサウンドに乗せ歌う彼女が魅力的。要所で炸裂するサマー・ブリーズなシンセ・サウンドも秀逸。
10Don't Know Why
ノラ・ジョーンズの有名曲をカヴァー。原曲の気だるく物悲しいイメージはそのままに、ややポップで親しみやすい仕上がりとなっている。シンセサイザーやストリングスを加えたオリジナルのアレンジに、あえてコーラスを加えないソロ・ヴォーカルが切なく響く。
11砂を噛むように…NAMIDA
20歳を迎える年、あややが初めてつんくプロデュースから離れ、大きな一歩を踏み出したミディアム・バラード。失恋した女性が立ち直り、前向きに生きようとする姿を爽やかに歌う。切ない感じも繊細に伝わってくる。
12dearest.
“dearest=最愛の人”をテーマに永遠の愛を誓う、壮大かつシリアスなラブ・ソング。ヴォーカル・ワークを駆使した大人っぽい歌声に、心地よく裏切られる意欲作だ。「夜空」「星座」「未来」といったキーワードが、ユニヴァーサルで神秘的なイメージを強調している。