ミニ・レビュー
DJ FUMIYAが復活した2年ぶり5枚目のオリジナル・アルバムは、『進め!電波少年』のようなサイバー・ドラム入りアフリカン・ビートで幕を開ける。テーマは“自然と文明の共存”。くるりやスチャダラパー、m-floのVERBALら豪華なゲスト陣が華を添えるアッパーな仕上がり。★
ガイドコメント
休養していたDJ FUMIYAも復帰したRIP SLYMEが放つ、約2年ぶりとなるオリジナル・アルバム。くるりとのコラボ作「ラヴぃ」やヒット・チューンの「ブロウ」などを収録。2ndステージの幕開けにふさわしい、エポック・メイキングな作品に仕上がっている。
収録曲
01EPOCH〜intro〜
野生動物の雄たけび&鳥のさえずり、そして、アジア・テイストたっぷりの弦楽器のフレーズでスタートする『エポック』オープニング・イントロ。しばらく療養していたDJ FUMIYAへの“おかえり!”がたっぷりと含まれたMCも、かっこよくて感動的。
02ELEPHANT
コミカルな音像と聴く者をがっちりとROCKする“強さ”が兼ね備えられたトラックは、まさにFUMIYAならでは。“理由なんて考えないで、とにかくパーティを続けていこう”といった、ヴァイブレーションが伝わるフロウも気持ちいい。
03Hot chocolate
“ビター・チョコレート”な感じの、グルーヴィでセクシーな低音ラップから、誰もが口ずさめるサビへの展開はさすがRip Slyme。トロットロに甘くエロい歌詞も要注目。DJ FUMIYA不在ながら見事!
04ブロウ
生のエレクトリック・ギターをフィーチャー、テイストの異なる複数のリズムを組み合わせ、さらにストリングまで加えたFUMIYAのトラックがとにかく素晴らしい。しっかりと抑制を効かせ、大人っぽいヴァイブレーションを放射するフロウもいい。
05Island
森広隆との共作によるレゲエ・チューン。TUFF SESSIONのヨウヘイ(パーカッション)をフィーチャーしたリズムは十分に骨太でありながら、とろけるほどにメロウ。スロウ&フリーな雰囲気がたまらなく気持ちいい。
06パーリーピーポー (Hosted by VERBAL)
VERBAL(m-flo)をホストに招いたパーティ・チューン。チープでシックなムードをたたえたエレクトロ・ビートのなかで、VERBALがリップスライムのメンバーを紹介。そしてパーティへと突入だ!
07DIG DUG
80'sゲーム・ミュージック風のサウンドと“ドスンドスン”という形容がぴったりハマるビートがひとつになった、ユニークなナンバー。リップスライムが持つ“ナチュラル・ボーン・遊び心”がばっちり炸裂している。
08レッツゴー7〜8匹 (feat.スチャダラパー)
スチャダラパーをフィーチャー、ドリフから“ちょっと、ちょっとちょっと”まで、幅広いギャグ・センスとヒップホップの自由さが交差するフロウが軽やかで印象的。FUMIYAとシンコのスクラッチ・バトル(?)もかなり楽しい。
09Break beats ERA
緻密に構築されたリズム・アレンジやチル・アウト系のグルーヴと、ほんのりと生まれてくる高揚感をたたえたインスト。FUMIYAの持つ唯一無二の音楽センス、トラックメイカーとしての技術の高さがここにもはっきりと示されている。
10アゲインスト
アグレッシヴかつダークなイメージのトラックの中で、”逆らえ 抗え”という強烈なメッセージが響きわたる、ラジカル・ヒップホップ。“精神的にアンチエイジング”というフレーズからは、彼らの存在の強さがストレートに伝わってくる。
11ラヴぃ (リップスライムとくるり)
“リップスライムとくるり”名義としてリリースされたシングル。アコースティックなサウンドとヒップホップ的ビート、ノスタルジックなメロディとスムースなフロウが完璧に融合したこの曲は、まさにコラボレーションの理想形だ。
12Present
60〜70年代のエヴァーグリーン・ポップスの2000年代ヒップホップ的解釈、とでも形容すべき、ポップで愛らしいナンバー。“プレゼント”をめぐる感情の数々を叙情的に映し出したリリックも、なんだかとてもかわいい。
13LINDA
本格的なアコースティック・ジャズのムードをたたえたピアノに、けだるくもセクシーな女性ヴォーカルをフィーチャーしたインタールード。ゆったりと心地よい気分転換であると同時に、アルバム『エポック』全体のアクセントにもぴったりだ。
14Wonderful
ジャズのビッグバンドっぽい大らかでクールなスウィングをバック・トラックに、“どんどんさわげ、がんがん踊れ。明日はきっと素晴らしい!”というメッセージを感じさせてくれるフロウ。これらが、聴く者の気分を軽やかに上げてくれる、シックでハッピーなナンバー。