ミニ・レビュー
ニュージャージー出身の5人組による“患者を迎えに来る死”をテーマにした3作目。エモコアの代表的なバンドとして有名だが、コンセプチュアルな本作では単なるエモコアに留まらない、壮大で多彩な音楽性を披露。一段と大きく成長した姿を聴かせる。
ガイドコメント
マイ・ケミカル・ロマンスの3rdアルバム。官能的にメロディックで、ため息が出るほどシアトリカルなナンバーが満載。彼らがイメージする“ブラック・パレード=死のパレード”を体現したコンセプチュアルな力作だ。
収録曲
01THE END
生ギターに導かれて始まる、グラム・ロック時代のデヴィッド・ボウイを彷彿とさせるドラマティックな曲調。ジェラルドが渾身のスクリーモ・ヴォーカルを聴かせる、荘厳な雰囲気漂うアルバム『ザ・ブラック・パレード』のオープニング・ナンバーだ。
02DEAD!
シンプルかつパワフルなロックンロール・ナンバーで、その陽性な曲調や死への恐れと憧憬が複雑に交差する歌詞のミスマッチ具合が、いかにも“マイケミ”らしい。ジェラルドの力強いヴォーカルに思わず惹きこまれそうだ。
03THIS IS HOW I DISAPPEAR
日本のビジュアル系に通じる、メロディアスで疾走感あふれるナンバー。耽美的な雰囲気がにじむ世界観を持った詞を表情豊かに歌い上げ、ロマンティックな香りをプラスしたジェラルドの歌唱力には脱帽だ。
04THE SHARPEST LIVES
パワー・ポップとニューロマンティック、エモコアをミックスしたナンバー。どこか懐かしさを感じさせつつ、“マイケミ”にしか作りえないオリジナリティをしっかりと表現している。エモーショナルな歌声にも注目だ。
05WELCOME TO THE BLACK PARADE
アルバム『ザ・ブラック・パレード』の根幹となるナンバー。クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」を思わせるドラマティックな展開と、静と動を巧みに使いこなすジェラルドの歌唱によって、シアトリカルな効果を最大限に引き出した傑作。
06I DON'T LOVE YOU
メロディアスなミディアム・ナンバーだが、情感に流されることなくサウンドはあくまでもパワフルに響いていて、ジェラルドのヴォーカルも実にエモーショナルだ。間奏のギター・ソロがいいアクセントになっている。
07HOUSE OF WOLVES
アグレッシヴに突っ走る、これぞ“マイケミ”といえるエモコア・チューン。急き立てるようなサウンドをバックに、水を得た魚のごとく感情をぶちまけるジェラルドのヴォーカルが最高にカッコいい。
08CANCER
キャンサー(癌)に侵されて、余命いくばくもない患者の家族や恋人に向けた心情を、切々と生真面目に綴った感傷的なナンバー。美しいピアノの音色と訴えかけるようなジェラルドのヴォーカルが胸に迫る。
09MAMA
死から逃れられない凄惨な戦場から、懺悔や悔恨が入り混じった想いを母親宛の手紙を模した詞で綴った悲しく切ない歌。叫びにも似た悲痛なヴォーカルとドラマティックでダイナミックな曲調が胸を打つナンバーだ。
10SLEEP
穏やかなイントロから急転直下、なだれのように畳み掛けてくるヘヴィなサウンドとエモーショナルなヴォーカルが印象的。不穏な雰囲気を増幅させるマーチング・サウンドの導入もいいアクセントになっている、ドラマティックなナンバーだ。
11TEENAGERS
ティーンエイジャーに対する大人社会の視線や姿勢にどう対処すればいいのかを綴った詞を、ポップなテイストを含んだパンキッシュ・サウンドに乗せて歌っている。古典的かつ普遍的な内容をテーマにしたストレートなナンバー。
12DISENCHANTED
“マイケミ”というよりジェラルドの体験を織り交ぜたと思われる、プライヴェートな思考や心境を描いた歌。イントロとクロージングに奏でられる生ギターの柔らかな音色が心を和ませ、聴き手を落ち着かせてくれる。
13FAMOUS LAST WORDS
ヘヴィかつドライヴ感いっぱいに鳴り響くギターをフィーチャーした壮大なパワフル・チューン。ハード・ロック/ヘヴィ・ロックをも呑み込む、“マイケミ”の貪欲さとスケールの大きさが実感できる。
15HEAVEN HELP US
活力に満ちた疾走感のあるサウンドを奏でながらもメロディアスな部分をしっかりと残した、“マイケミ”を象徴するようなナンバー。肩の力が抜け、吹っ切れた感じのジェラルドのヴォーカルも実に心地よい。
仕様
CDエクストラ内容:ウェルカム・トゥ・ザ・ブラック・パレード (ミュージック・ビデオ)