ガイドコメント
2006年12月発表、メアリー・J.ブライジのベスト盤。92年のデビュー以来、シーンを牽引してきた彼女の数々のメガ・ヒット・ナンバーに加え、新曲も収録。“クイーン・オブ・ヒップホップ・ソウル”の名にふさわしい、聴きごたえのある1枚だ。
収録曲
01REFLECTIONS (I REMEMBER)
ベスト盤のオープニングとなる、アルバム・タイトルを冠した新録作。悲壮感が漂うストリングスを用いたイントロから過去の苦難を語り綴るミディアム・スローで、ブライアン・マイケル・コックスがプロデュース。昔の自分はもういないと強く言い切っている。
02WE RIDE (I SEE THE FUTURE)
あなたとともに歩む未来が見えると語りかける、女性からのプロボーズ・ソング。起伏のあるピアノの美しく繊細な旋律をアクセントにした泰然なトラック制作はブライアン・マイケル・コックス。賢明に冷静さを保とうとする熱情的なヴォーカルが心を打つ。
03YOU KNOW
とにかく“You Know When You Know……”のコーラスが耳に残る、軽妙な展開が鮮やかなアッパー・ソウル。制作はエリック・ハドソンで、“この人だってわかっちゃう”と一緒にいたい人への愛を言わずにいられない弾んだ気持ちを歌っている。
04KING & QUEEN
当初はジョン・レジェンド『ワンス・アゲイン』に収録予定だった、ベスト盤に新録のデュエット曲。スティーヴィー・ワンダー「愛の国」をサンプリングしたまどろみのある緩やかなグルーヴの中で、互いはいつか王と女王になると歌う。ジョンはピアノでも参加。
05NO MORE DRAMA
全米人気昼メロドラマ『THE YOUNG AND THE RESTLESS』のテーマを用いたイントロで幕を開ける5thアルバム・タイトル曲。“もうドラマのような人生はご免”と自己への怒りを込めた歌唱が強烈。ジャム&ルイス制作のミッドだ。
06FAMILY AFFAIR
全米チャート6週連続1位を記録した人生讃歌、人間讃歌、フロア讃歌の超ポジティヴなヒット曲。悩みも心配ごとも、ゆったりとしたリズムに身を任せれば何だか答えが見つかるかも。タイトルは録音に家族が立ち会ったことに由来。
07REAL LOVE
オーディオ・トゥーのヒップホップ・クラシック「トップ・ビリン」を引用した1st『ホワッツ・ザ・411?』からの第1弾シングル。フレッシュで躍動するヴォーカルが魅力の本作は、彼女の代表曲というだけでなく、不滅のクラブ・ユース・ナンバーとなった。
08NO ONE WILL DO
アルバム『ザ・ブレイクスルー』の幕開けを担うオープニング・トラック。紆余曲折あってリリースされたアルバムのように、波乱万丈な人生を生き抜いてきた彼女の、“あなたしかいらない”という切なる願いが強い意志とともに展開されていく。
09BE WITHOUT YOU
『ザ・ブレイクスルー』からの1stシングルで、ブライアン・マイケル・コックス制作による泣きのミディアム・スロー。あなたなしでいられないと激情的な愛を歌うだけでなく、“男たち、自分の大事なレディに愛を告げて”と諭すところが女王たるゆえんだ。
10I'M GOING DOWN
2ndアルバム『マイ・ライフ』に収録のローズ・ロイスのカヴァー。サウンドは明快なオールドスクール・ソウルだが、当時の盟友との確執やドラッグ依存などの荒れ狂った私生活が見え隠れするような、悲痛な叫びがにじむ生々しさを持った佳曲だ。
11911
ワイクリフの2ndアルバム収録曲で、彼のスモーキーな声と哀愁漂うギターがブルージィな雰囲気を生んでいる。タイトルは緊急ダイヤル番号の意だが、メアリーの絞り出すような歌唱を聴くと、“911テロ事件”の悲痛さを思い起こさずにはいられない。
12NO T GON' CRY
映画『ため息つかせて』挿入歌で3rd『シェア・マイ・ワールド』収録曲。ベイビーフェイスを制作に迎えたムーディなスロー・バラードだが、それに寄り添うというよりむしろ魂をたぎらせる熱い歌唱を焚きつけている。メアリーの気迫がみなぎる名曲だ。
13MY LIFE '06
2ndアルバム・タイトル曲に生楽器を加えたアレンジを施したケンドゥ・アイザック制作曲。ロイ・エアーズ「Everybody Love The Sunshine」引用の幻想と酩酊を行き交うバックに乗る、悲しみから立ち上がろうとするような歌唱が見事。
14BE HAPPY
カーティス・メイフィールド「You're Too Good To Me」を引用したショーン“パフィ”コムズ制作曲。心地よいグルーヴの上を軽妙なヴォーカルがたゆたうが、“私は幸せになりたいだけ”という詞は、当時のパフィとの確執がうかがえるようで悲しげだ。
15I'LL BE THERE FOR YOU/YOU'RE ALL I NEED TO GET BY
メソッド・マン「All I Need」にメアリーをフィーチャー。マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル「ユーアー・オール〜」を引用したトラックをベースに、RZAによるエッジを効かせたリミックスを施したスリリングなヒップホップ・トラックだ。
16AS
スティーヴィー・ワンダーの名曲をジョージ・マイケルとデュエットでカヴァー。ゴスペル風のバック・コーラス・アレンジが楽曲の高揚感をさらに盛り立てている。ジョージ・マイケルの洗練された安定感ある歌唱が、メアリーの情感を巧く支えている。
17ONE
ロン・フェアがプロデュースを手掛けた、U2のオリジナル曲でのコラボ。7th『ブレイクスルー』ではボノとのデュエットだが、本作はメアリーがカヴァーするスタイル。過去のしがらみや苦労から脱した余裕から、自信に満ちた歌唱が聴ける爽快なミッドだ。
18MJB DA MVP
宣言というより強烈な通告のメッセージ・ソング。ザ・ゲーム「ヘイト・イット・オア・ラヴ・イット」をモチーフに、メアリー仕様に彩ったクラブ・ヒップホップ。中盤に自身の初期ヒット曲フレーズを盛り込んだ、ファンには感涙もののトラック。