ミニ・レビュー
フレーミング・リップスなどで有名なデイヴ・フリッドマンをプロデューサーに迎えた話題のセカンド。サイケ風味を増した音作りは予想どおりだが、バンドの基本的なアレンジとともにアレック・オンスワースのメロディと歌という個性が際立っているのはさすが。
ガイドコメント
ニューヨークはブルックリン出身の5人組ロック・バンド、クラップ・ユア・ハンズ・セイ・ヤーの2ndアルバム。デイヴ・フリッドマンをプロデューサーに迎えた本作では、より進化したパワフルなサウンドを聴かせてくれる。
収録曲
01SOME LOUD THUNDER
強烈に歪んだ音像で構築された異形のポップ・ソング。フレーミング・リップスやナンバーガールなどを手掛けたプロデューサーのデイヴ・フリッドマンの個性が存分に発揮された、プログレッシヴなサウンド・プロダクションだ。
02EMILY JEAN STOCK
3コードの旨味を活かしたシンプルなコード進行とキャッチーなメロディ・ラインの組み合わせがクセになるギター・ロック。音の隙間を縫うように奏でられる奔放なフィードバック・ギターがリスナーをトランス状態へと誘う。
03MAMA, WON'T YOU KEEP THEM CASTLES IN THE AIR AND BURNING?
アコースティック・ギターのウォール・オブ・サウンドとドリーミーなコーラス・ワークがシンクロして生み出すメランコリックなポップ・チューン。アレック・オンスワースの柔らかい歌声が、どこまでも優しく、伸びやかに響きわたる。
04LOVE SONG NO.7
ピアノの弾き語りを基調としたミディアム・ナンバー。リヴァーブ効果によって遠くで演奏されているかのように聴こえるパーカッションの音色や、不安定なコーラス・ワークなどによって楽曲の寂し気な雰囲気が強調されている。
05SATAN SAID DANCE
まさにタイトルそのままのタイトなリズム・セクションが楽曲全体を引っ張っていくダンス・ナンバー。フリーキーなフレーズを奏でるピアノとエレクトリック・ノイズの応酬が謎めいた美しさと緊張感を生み出している。
06UPON ENCOUNTERING THE CRIPPLED ELEPHANT
アコーディオンとオルガンによって奏でられる1分弱のインストゥルメンタル・ナンバー。ワルツのゆったりとしたリズムと、ストリートの空気がそのまま伝わってくるかのようなザラザラとしたサウンドの質感が魅力的だ。
07GOODBYE TO MOTHER AND THE COVE
左右のチャンネルに置かれたクリアなトーンのエレクトリック・ギターが、静かな、しかし緊張感に満ちたバトルを展開するトリップ・ロック・チューン。さざなみのように繊細で表情豊かなバンド・アンサンブルがお見事!
08ARM AND HAMMER
アコースティック・ギターの弾き語りから始まるポップなギター・ロック・チューン。肩の力の抜けたバンド・アンサンブルと強烈なコンプレッションのかかったサウンドのミスマッチが何ともいえない不思議な魅力を醸し出している。
09YANKEE GO HOME
ドラムスの地を這うような重たいサウンドが前面に押し出されたスロー・ナンバー。ブルージィなフレーズを奏でるエレクトリック・ギターに絡みつくように、アレック・オンスワースがねっとりと情熱的に歌い上げている。
10UNDERWATER (YOU AND ME)
大きめの音量でミックスされたベース・ギターが、サウンドの中心にどっしりと構えるロック・ナンバー。装飾音として鳴らされるエレクトリック・ギターの甲高いキラキラとした音色が、メロディ・ラインの流麗な美しさを際立たせている。
11FIVE EASY PIECES
ジャック・ニコルソン主演のアメリカン・ニューシネマの名作からタイトルを頂いたサイケデリック・ロック・チューン。強烈なリヴァーブのかかったメイン・ヴォーカルと牧歌的なバンド・アンサンブルの絡みが生み出す酩酊感が心地良い。
12THE SWORD SONG
音圧の高いアコギのコード・ストロークを中心に組み立てられた、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド調のギター・ポップ・ナンバー。哀愁漂うメロディ・ラインをアレック・オンスワースがけだるく歌い上げている、『サム・ラウド・サンダー』の日本盤ボーナス・トラック。