ミニ・レビュー
3年ぶりの3作目のアルバム。共作も含め全曲オリジナルが収録された初のアルバムで、これまでになかったタイプの曲も聴かせ、歌詞にも変化を見せる。サウンドはシンプルに整理され、ノラの歌と見事にマッチ。やや地味にはなったが、味わい深さはぐっと増した。
ガイドコメント
デビュー・アルバムがグラミー8部門のすべてを受賞した、ノラ・ジョーンズの3rdアルバム。シンガー・ソングライターとしての彼女の魅力がきわだつ、美しさと気品の漂う作品に仕上がっている。
収録曲
01WISH I COULD
3枚目のアルバム『ノット・トゥ・レイト』のオープニング曲。穏やかなアコースティック・ギターや悲しい響きのチェロとともに、いつものノラ特有の美しいヴォーカルが聴こえてくる。3年ぶりにようやくアルバムが聴けるんだ、という至福の時がスタートする。
02SINKIN' SOON
マンドリンやトロンボーンをフィーチャーしたラグタイム風のナンバー。バック・ミュージシャンたちと楽しみながら演奏した感じが伝わる。ちょっぴりセクシーなヴォーカルを聴かせる、2作目までにはなかった新境地を引き出した曲といえる。
03THE SUN DOESN'T LIKE YOU
ブラジルをツアーしている時に書かれたという曲。ヴォーカル・スタイルやアコースティック・ギターなど、ミステリアスな雰囲気を醸し出しているのがなんとも魅力的だ。実にシンプルな演奏だが、生き生きとしたヴォーカルが絶妙。
04UNTIL THE END
「ドント・ノー・ホワイ」のイメージを引き継いだような、いかにもノラらしい、しっとりとしたヴォーカルが味わい深いピアノ曲。さり気なく流れるハモンド・オルガンも曲調にぴったりとマッチしていて、とてもリラックスできる。
05NOT MY FRIEND
共作も含め全曲オリジナルを収録した初のアルバム『ノット・トゥ・レイト』の中で、本作はノラ一人による作品。アンビエント風ともいえる不思議な感覚に陥ってしまいそうで、とても新鮮だ。何かにたとえようもない、新生ノラを見せつけた曲といえる。
06THINKING ABOUT YOU
99年頃に書かれたという、当時共演していたイルハン・エルシャヒンとのコラボ曲。トランペットやサックスをフィーチャーした、R&B調も垣間見せる彼女らしいメロディ&サウンドを持ったポップス。アルバム『ノット・トゥ・レイト』の1stシングルとしてはうってつけのキャッチー感だ。
07BROKEN
ノラのエレクトリック・ギターのほか、チェロやピチカート・ベースを加えて演奏されるのどかなナンバー。とてもシンプルに聴こえるが、実はオーヴァー・ダビングが施されているという。サウンドへの工夫と意欲を感じさせる作品だ。
08MY DEAR COUNTRY
オハイオで書かれたという、愛する自国についての社会的な詞からも成長ぶりを感じさせる自作曲。ヴォーカルとピアノをメインにしているが、中盤あたりで曲調が変化する変則的な構成が面白い。メッセージ性の強い詞を歌うためか、ノラの声も少々緊張感が漂っている。
09WAKE ME UP
ノラがギターとパンプ・オルガンを演奏。ラップ・スティールが使われていることもあり、とても穏やかでゆったりとした曲調だ。シンプルこの上ないサウンドだが、繊細で豊かな表情を持ったヴォーカルに惹きつけられる。
10BE MY SOMEBODY
パートナーが出かけて一人ぼっちの寂しさを歌った曲。歌詞の内容とは反対に、カラっと明るいサウンドに仕上げた意図はなんだろうかと興味が湧くが、それ以上に個性的なリズムやノリに耳がひかれてしまうサウンドに注目だ。
11LITTLE ROOM
デビュー以前に作られたという曲。かつて住んでいた小さな部屋の楽しい思い出についての歌で、ヴォーカルや詞、メロディやリズムからもウキウキとした感じが伝わる。口笛まで入っていて、ノラのお茶目な一面を見るようで微笑ましい。
12ROSIE'S LULLABY
タイトルどおり子守歌のようなとても穏やかな曲。もちろんヴォーカルもゆったりとして優しいのだが、聴いていて時々ゾクっとする瞬間があったりするのは、優れたヴォーカリストである証しだろう。深く心に染みわたる歌だ。
13NOT TOO LATE
アルバム『ノット・トゥ・レイト』本編のラストにふさわしい静かなラブ・ソングだが、メロトロンがフィーチャーされるなど、サウンドに工夫を凝らしている。自国の憂う現状を嘆くだけでなく、“まだ間に合う”と楽観的かつ真摯に受け止めた詞に成長を感じるアルバム・タイトル曲だ。
142 MEN
ピアノの弾き語りによるアルバム『ノット・トゥ・レイト』日本盤のみのボーナス・トラック。ノラにしては珍しくそれほど穏やかではない恋の歌。ヴォーカルはメリハリが効いていて、ちょっぴりユーモラスなエンディングのピアノなど、遊び心も感じられる。