ミニ・レビュー
デビュー10周年を記念してリリースされた、全曲リマスタリング・シングル・ベスト集。このクオリティの高さ、このタイアップの数々。世にベスト盤多かれど、これほど極めたものはないと思われる。ジャパニーズ・ファンクの礎を築いた男の軌跡に、感嘆するばかり。★
ガイドコメント
スガ シカオの10年間の集大成といえる究極のベスト・アルバム。デビュー曲「ヒットチャートをかけぬけろ」から「午後のパレード」までのシングル曲に加え、「夜空ノムコウ」「春夏秋冬」などの人気曲も網羅している。
収録曲
[Disc 1]
01午後のパレード
ファンク・テイストあふれるサウンド、ウイットに富んだ歌詞、そして繊細なハスキー・ヴォイス……そんなスガシカオの魅力がすべて凝縮した1曲。思わず体が動き出すような、ダンサブルなナンバーに仕上がっている。
02真夏の夜のユメ
夢と現実が入り混じったようか歌詞の世界が印象的なラブ・バラード。アコースティック・ギター、エレキ・ギター、ベース、ドラムのシンプルな構成のなかで、ストリングスが幻想的な歌の世界観を際立たせている。
0319才
19thシングルは、アニメ『xxxHOLiC』のオープニング・テーマ曲。多感な「19才」の時期を赤裸々に綴った歌詞と、ポップでありながら緊迫感のあるメロディの絡み合いが絶妙。ちまたで騒然のエロティックなPVも必見!
04奇跡
18thシングル曲は、2005年夏の高校野球「甲子園大会」の統一テーマ・ソング。なんとなく危険なムードが漂うAメロから、爽やかな夏と輝くような予感を抱かせるサビへの展開が鮮やかなポップ・チューン。
05夏陰〜なつかげ〜
ゆったりとしたメロディ・ラインが爽やかな青春ナンバー。朝日放送・テレビ朝日共同制作『熱闘甲子園』のエンディング・テーマのために書き下ろされた楽曲で、ひと夏の終わりに感じる切なさが余すところなく表現されている。
06サナギ〜theme from xxxHOLiC the movie〜
女性視点から書かれた毒のある歌詞とけだるい曲調が印象的。アニメ映画『劇場版 xxxHOLiC 真夏ノ夜ノ夢』主題歌に使用されており、映画の妖しげでゾクっとするような雰囲気にピッタリとはまっている。
07光の川
誰にでも日常的に起こりうるような感情を独特の言葉で表現する、スガシカオらしい楽曲。過去の恋愛を密かに引き摺っている男の心象風景を、スガシカオならではと言うべき視点でえげつなくえぐり出している。
08クライマックス
“ふられてしまう”というドラマの“クライマックス”のような状況にたたされ、ドラマの主人公になりきって悲しみから立ち直ろうとする失恋ソング。フュージョン調のアッパーなサウンドが、酷な状況を精一杯明るくしようとしている。
09秘密
8thアルバム『TIME』に収録された、歪んだ“恋愛の機密性”を得意のファンク・サウンドに乗せたスガ節炸裂の一曲。甘い恋愛が徐々に危うい感情へとねじれてゆく様を描いた歌詞にハラハラする。
10サヨナラ
2003年にシングル・リリースされた、スガお得意のブルージィなファンク・ナンバー。オープニングの豪華なホーン・アレンジやソウルフルなコーラスがブラック・テイストを演出。恋人との別れのシーンを、ドラマティックかつ美しくみせるテクニックはさすが。
11アシンメトリー
アルバム『SMILE』収録のシングル曲。独特の潰れそうなヴォーカルとR&Bをミックスしたようなポップ・チューンがハマったスガ節全開のナンバー。いかにもスガシカオ的な屈折した優しさが心に響く。
12青空
13Cloudy
[Disc 2]
01夜空ノムコウ
作詞家としてスガシカオの知名度を一躍全国区に押し上げた、SMAPの大ヒット曲をセルフ・カヴァー。歌詞の意味を一語一句噛みしめるかのような丁寧な歌唱は、作者だからこそ。しっとりとしたストリングスがさらなる感動を呼ぶ。
028月のセレナーデ
アルバム『Sugerless』収録のシングル曲。美しいストリングスに思わずうっとりしてしまうような雰囲気だが、そこはスガシカオ。うっとりどころかじっとりした屈折感がなぜか心地よく感じられる。
03AFFAIR
04SPIRIT
力強いイントロが印象的な、黒人音楽のツボをズバリ押さえたノリノリのファンク・チューン。自身も認める明るい曲で、いつもの陰や疎外感とは無縁の、真夏を感じさせる爽やかな楽曲に仕上がっている。
05あまい果実
君へのあふれすぎた想いを、腫れあがるまで熟した果実にたとえ、些細な反応が過剰なまでに悪い妄想に膨れ上がっていくさまを描いたナンバー。コーラスとストリングスの美しいハーモニーが、メランコリックな世界を感じさせる。
06夜明けまえ
ジメジメした閉塞感を一気に吹き飛ばしてしまう爽快なサビが印象的なポップ・ナンバー。キャッチーなメロディに乗った悶々とした歌詞が、いかにもスガシカオらしい歪みきった世界観を展開している。
07ぼくたちの日々
08ストーリー
恋人との歩みはいくつもの壁や違和感の連続だ。それを乗り越えるため、心に刻まれたお互いの「願い」を信じ、まだ見ぬ明日へと歩んでいく。これでもかと「愛」の力強さと希望に満ちた心境を描いた、物語性あふれるナンバー。
09愛について
数多くのバラードを歌うスガシカオが、ストレートに愛を語るナンバー。「おびえることは何もない」と深い包容力ある声で伝え、聴き手を優しく抱きしめる。日差しのように温かい穏やかなメロディも心地良い。
10ドキドキしちゃう
君への想いが揺らぐ心情を、アッパーなテイストで聴かせる。エレクトリック・サウンドはカラフルなスポット・ライトのように空間を創り上げ、うねるギター・サウンドがアダルトで危険な雰囲気を醸し出すダンス・ナンバー。
11黄金の月
情熱は冷めてしまっても、闇を背負ったとしても、そこから手さぐりで答えを掴み取ろうとする心情が綴られたナンバー。胸の深い部分を刺激するスガシカオの優しい歌声、緩やかで浮遊感漂うメロディが心へと染み込んでくるナンバー。
12ヒットチャートをかけぬけろ
スガシカオの記念すべきデビュー・シングル曲。ソウルとポップさを併せ持ったメロディ・ラインやスガ独特の歌詞世界は、この時点で十分に確立されている。ファンキーなテナー・サックスに酔える一曲。
13春夏秋冬
日本テレビ系『NEWS ZERO』テーマ・ソング。スロー・テンポなストリングスのメロディに、滋味のあるハイトーン・ヴォーカルがなじんで実に心地良い。一日の終わりでの、ふと気持ちが緩んでニュートラルになる瞬間などにぴったりのナンバーだ。