ミニ・レビュー
第一線で活躍するクラブ・ジャズ的なスタンスのバンドの中でも、オーソドックスなジャズの迫力と刺激を楽しみたいなら彼らを聴くべき。踊れるファンクやラテンの要素を加えつつ、確かなスキルとキャッチーなメロディ感覚が他にはない親しみやすさを生む。
ガイドコメント
ジャズの壁を超えて世界でも注目を集める、爆音ジャズ集団の3作目となるアルバム。圧倒的なパワーをメインに据えながらも、スリリングなアンサンブルや緻密なコード・ワークなど、成熟したサウンドを聴かせてくれる。
収録曲
01DAWN
決して爽やかではない、どこか陰うつな明け方(DAWN)をイメージさせる革新的ジャズ・ナンバー。アンサンブル的には終盤の高速4ビートに突入するあたりが聴きどころ。元晴(as)のソロは圧巻の一言に尽きる。
02A.I.E
メイン・ストリーム的フォーマットに則った範囲で最大限の爆発を見せるアグレッシヴなジャズ・ナンバー。丈青(p)やタブゾンビ(tp)のキレ具合も素晴らしいが、元晴(as)の爆発的ソロは比較にならないほど感情的だ。
03マクロケ
グルーヴィなエレピのバッキングやエフェクトを駆使したソロなど、丈青(p)を大フィーチャーしたダンサンブルなクラブ・ジャズ。アルバムの次曲「マシロケ」と対をなしていて、社長の雄叫びを挟んで繋がっている。
04マシロケ
社長(アジテイター)の雄叫びで景気よく始まるジャズ・サンバ風味のファスト・ナンバー。洗練されたテーマ・メロディはキャッチーこの上なく、アンサンブルのテンションも極めて高い。2007年発表の3rdシングル。
05WE WANT MORE!!!!!!
リズミカルで明るいメロディを特徴とするミディアム・ラテン・ナンバー。随所で社長のスキャットやスクリームが奏者をアジテイトする一方で、ソロ中は4ビートにリズム・チェンジするなど、手堅くまとめた好楽曲だ。
06ZAMBEZI
社長(アジテイター)と元晴(as)の合作曲。バスドラムの4つ打ちが心地よいダンサブルなジャズ・ロック。シンプルなフレーズの繰り返しが多いが、そこを勢いとノリで聴かせ通してしまうあたりが見事。丈青の暴れ放題のピアノ・ソロも痛快だ。
07RED CLAY
フレディ・ハバードがCTIレーベルに残した名ジャズ・ロックのカヴァー。元晴のソロ中にロック・リズムからジャズ・サンバに展開するあたりが聴きどころ。タブゾンビのディレイを駆使したスペイシーなソロにも注目。
08HYPE OF GOLD
普段、絶叫でバンドをアジテイトしている“社長”が作曲したとは思えないほど、うつろな雰囲気に満ちたジャズ・ワルツ。物静かなバッキングに合わせるように、炸裂ソロを心なしか控えている元晴(as)に好感が持てる。
09PLUTO
ピンプお得意のサンバ風4つ打ちジャズ・ロック。執拗なまでに同一フレーズを繰り返し、それだけでソロを完成させてしまう元晴の執念には“反復の美学”が感じられ、感動すら覚える。丈青・社長・元晴の3人による共作。
10THE PARTY
ドラムのみどりんが作曲した超高速4ビート・ジャズ。ピアノ・ソロ後のベースの“ブンチャカ”フレーズが最大の聴きどころ。ジャズの世界ではドラマーがいい曲を作ることが多いが、彼もその典型的な例と言えるだろう。
11FUNKY GOLDMAN
一度聴けば覚えてしまうほどシンプルでキャッチーなメロディを繰り返すミディアム・スロー・ファンク。ヴォコーダーを通した性別不明のヴォーカルが印象的。タイトルと秋田ゴールドマン(b)はあまり関係ないようだ。
12THE SLAUGHTER SUITE
“爆音ジャズ”の復活と思いきや、1分を過ぎたあたりでコテコテなファンクへと展開するピンプらしいナンバー。SUITE(組曲)と銘打っているが4分にも満たないのはご愛嬌。聴き手にもエネルギーを要する厄介な1曲だ。
13SCALES
アルバム『PIMPOINT』のラストを飾るスロー・ナンバー。曲アタマから繰り返される重厚なピアノ・フレーズと大陸を感じさせるようなスケールの大きいテーマ・メロディが魅力。秋田ゴールドマン(b)のソロにも注目。