ミニ・レビュー
デビュー7年目、中堅実力派ロック・バンドの4枚目のフル・アルバム。UKIのヴォーカルはぐっと表現力が増し、ギターやドラムスの重ね方、ビートの刻み方も疾走&高揚感がバツグン。これまでの自信と意地をみせつける、濃やかでいて爆発力を持った仕上がりとなっている。
ガイドコメント
2007年3月発表のオリジナル・アルバム。クオリティを上げたサウンド・プロダクションなどから、4人の音楽への強い探求心と情熱が伝わってくる。何事にも屈しない信念を感じさせる渾身の作品だ。
収録曲
01MutRon
7弦ギターを使ったグルーヴィなサウンドに可愛い歌声が揺らめくアッパー・チューン。幻想的なのにどこか狂気的な趣きを持つ詞が、UKIらしくて文学的。思わず体が動き出すディスコ・パンク風のメロディが気持ち良い。
02ダズリングスープ〜spicy made〜
サイケデリックかつファンキーなリズムが印象的なミディアム・ロック。前半の気だるい雰囲気から後半に来て曲調が一転、スピード感を上げていく展開が面白い。巧みな緩急を取り入れる構成に、彼らのクオリティの高さを感じる。
03少年と白い犬
キュートでパンキッシュなロック・チューン。ビデオカメラで撮ったドラム音をサウンド・リメイクして使ったという、冒険心いっぱいの音展開も新鮮。体の芯に響いてくる歪んだドラム音に、パンチの効いたUKIのヴォーカルが炸裂している。
04満天の星を探そうとも空は見ない
伸びやかなUKIの歌声が可愛い、キャッチーなロック・チューン。詞には“自分を持ちながら、流されることなく真実を見極めたい”という思いがこもっている。満天の夜空を見上げた時の、心洗われるような清らかさが漂っている。
05靴音にSludge
アコースティック・ギターとテレキャスが絡むメロディック・ハードコア。胸騒ぎを覚える性急なリズムの中にあふれ出す、“誰も殺めずに、誰もが憎しみあわずに”という彼らの叫び。緊張感がみなぎる激情的なメロディが美しい。
06KARENA
初期の作風を彷彿させるパンキッシュなナンバー。ハイテンションな高速サウンドの中で、元気いっぱいなUKIの歌声が軽快に弾けている。“キャッチーなヒッピー”を描いた陽気な詞も、曲を明るく楽しく盛り上げる。
07モノローグ
12thマキシ・シングルは、ノスタルジックで浮遊感があり、気持ちを高揚させる不思議な感触を持ったミディアム・チューン。メロディやサウンド、そしてヴォーカルにさまざまな表情や起伏が感じられ、聴き込むとかなりの熱さを包括していることがわかる。
08マリーゴールド
アコースティック・ギターとストリングスを背景に歌う、透明感あふれる美しいバラード。音の広がりやクオリティの高さを感じさせ、彼らの音楽的な成長が実感できる。繊細でロマンティックな詞が、心を洗い清めてくれるよう。
09AruHinAta
可愛いらしく楽しげなミディアム・ポップ。幸せな恋人たちの時間を彼女の視点から描いた詞が、平和な空気感を作っている。UKIには珍しい、日記のように素直な詞で心温まる日常を綴り、ギターとドラムの優しい演奏に乗せている。
10Push “The Peace” Switch
短い英詞を繰り返す、キュートでパンキッシュなスカ・ナンバー。“軍隊にはない、ピースという名の爆弾を発射しよう”という平和を願うメッセージが、明るく軽やかなメロディとともに響いてくる。原点に立ち返ったサウンドも面白い。
11candy gram
エレクトロな音で奏でるゴス系グラム・ロック。物憂げな雰囲気を漂わせるUKIの歌声が、歪みを効かせたダークな演奏に絡みつくように溶けている。可愛いのにどこかグロテスクな詞が、妖艶な魅力を曲中に醸し出している。
12シルク
アコギによるゆったりしたイントロから一転、裏打ちのハイテンポ・リズムで駆け抜けるスカ・コア・ナンバー。お得意のキャッチーなスカ・サウンドがサビで転調する曲構成が魅力的。UKIのパワフルでガーリーなヴォーカルが、爽快な疾走感を運んでくれる。
13RECOVERY
UKIの甘えるような歌声がロマンティックなアコースティック・バラード。“こんな世界だけど、だからこそすべてを信じたい”という純粋な思いを歌っている。爽やかな青空を想像させる、穏やかなメロディに心が和む美曲。
14Raise up
死んだ魚を埋めにいく物語を詩的に描いた、明るいギター・ロック。“生きる原動力を見つけ出せないなら、それを見つける旅に出ればいい”という、前向きな思いをこめている。“何事も気持ち次第なんだ”と元気が出てくるナンバー。