ミニ・レビュー
三人組ユニット、いきものがかりのファースト・アルバム。あどけない顔立ちとは裏腹に、ドラマティックなバラードや活気あるポップ・ソング、ロック調のナンバーと幅広い才芸を示顕。タイアップ付きシングル曲が凝縮されており、彼らの躍進もたどれる。
ガイドコメント
いきものがかりの1stアルバム。デビュー作から「うるわしきひと/青春のとびら」までのシングル曲を網羅。めぐる四季とともに、人が触れ合うことで生まれる繋がりや心の動きが描かれている。
収録曲
01SAKURA
タイトル通り春をテーマにしたデビュー曲(NTT「DENPO 115」東日本エリアCMソング)。ストリングスを効果的にフィーチャーしているのが印象的。紅一点、吉岡聖恵の温もりのある歌が心を打つポップ・ソングだ。
02KIRA★KIRA★TRAIN
最終列車に乗って、大好きな人が旅立っていってしまう。そんな別れのワン・シーンを秀逸に切り取った情景歌。悲しみをグッとこらえて明るく歌われる、つよがりにも似た心模様が無性に切ない後味を残す。
03HANABI
力強く鳴り響くハーモニカが際立つアップ・ナンバー。煽情めいたヴォーカルと文語的なタッチのリリック、それらに寄り添ったアレンジが儚い美しさを演出。テレビ東京系アニメ『BLEACH』のエンディング・テーマ。
04君と歩いた季節
別れを清々しく前向きにとらえたミディアム・チューン。後ろめたさをいっさい見せずに、新たな歩みを進める恋人の将来を案じるさまが切ない。ヴォーカル吉岡のみずみずしいファルセットが美しく、ストリングスも壮麗だ。
05コイスルオトメ
日本テレビ系『恋愛部活』エンディング・テーマとなった3rdシングルは、恋する気持ちをストレートに歌ったラブ・ソング。過去2作で見せた叙情性や疾走感とはまた違う表情を見せる、吉岡聖恵のヴォーカルがみずみずしく響く。ライヴでも定番の人気ナンバー。
06流星ミラクル
ポップなメロディにシンプルなコード進行のナンバー。ベースはフォークながらも、ハードでソリッドなギターを導入することによって、フォークの素朴さとロックのエネルギッシュさを兼ね備えた楽曲に仕上げている。山下穂尊のブルース・ハープが切なさを演出している。
07青春のとびら
櫻井雄一(ART-SCHOOL)と和田勉(Stereo Fabrication of Youth)を迎えたダンス・ポップ・ロック。“ららら ららら”の疾走感あるフレーズから“青春のとびら 開け”へ結ぶ、憂いを漂わせながらも強い意志を打ち出した展開が絶妙だ。
08ひなげし
彼ら自身の若さとは裏腹に、華麗に大人っぽく聴かせる昭和歌謡テイストたっぷりのナンバー。ブルージィなギター・リフや儚げなヴォーカルも、実にムーディだ。恋愛に悩める哀愁の詞は女性から共感を呼びそう。
09ホットミルク
亀田誠治がプロデュースした軽快なポップ・ナンバー。ハーモニカなどもフィーチャーした楽しくカラフルな演奏だ。ヴォーカルもそうだが、曲もタイトル通りとても可愛らしい佇まいを持つ、ライヴで聴きたくなる曲だ。
10いろはにほへと
のんびりとしたムードで紡がれる、かわいらしい印象のポップ・ソング。童謡のようなシンプルさやセッションのような自由度で、タイトルどおりの七色カラフルでハッピーなテイストを表出。力の抜け具合も微笑ましい。
11うるわしきひと
水野良樹が詞曲を手掛けた爽快なポップ・ロック・ナンバー。ドラムにターキー(GO!GO!7188)を迎えた若さあふれるアグレッシヴなサウンドで、等身大の“愛”を歌っている。山下穂尊のハーモニカにも注目の、「アクエリアス ビタミンガード」CMソング。
12夏・コイ
メンバー3人がそれぞれ交互にヴォーカルを取る、変則的な形式のナンバー。ゆるやかでピースなムードが終始続き、ラストは「ララララ……」と楽しげに大合唱。ライヴでも盛り上がること必至の一曲だ。
13タユムコトナキナガレノナカデ
ストリングスを前面にフィーチャーした壮大なミディアム・バラード。人生の岐路に立ったかの境地で歌われる揺るぎない決意は、若さゆえに初々しくもあるが、それもまた魅力。晴れやかな気分になれる一曲だ。
14SAKURA (acoustic version)
デビュー・シングル曲のアコースティック・ヴァージョン。春の色が切なさとともに描かれ、妖艶なヴォーカルが情緒を深める。オリジナルで聴かれた壮大なストリングスに代わり、優しい音色のキーボードが主翼を担当。