ミニ・レビュー
サード・シングル「解読不能」がスマッシュ・ヒットとなった4人組のロック・バンド、ジンのファースト・フル・アルバム。女性ヴォーカル、ひぃたんのややハスキーで印象的な声を最大限に活かした、風景が見えてくるようなサウンド・プロダクションになっている。
ガイドコメント
男女4人組ロック・バンド、ジンの1stフル・アルバム。シングル曲「雷音」「マラカイト」「解読不能」に加え、ライヴでの定番曲なども収録。リスナーを異空間に導くひぃたんのヴォーカルと、バンドの存在感を強烈にアピールする会心作だ。
収録曲
01レミングス
アルバム『レミングス』のオープニングを飾るのは、平均年齢20歳のバンドとは思えないほどの壮大なスケールを感じさせるポエトリー・リーディング。美しい旋律を奏でるギターが、大地の記憶をしっかりと刻み込むかのように、優しく流れていく。
02四季彩彩 (Other side)
2006年にリリースしたマキシ・シングル「雷音」のカップリング・ナンバーを、アレンジも新たに別ヴァージョンで再録。よりパワフルでアグレッシヴさを増したギター・サウンドに、彼らのバンドとしての成長を見る思いだ。
0326 (Other side)
マキシ・シングル「雷音」のカップリング・ナンバーをリアレンジしたヴァージョン。ハネるようなリズム感が気持ちいい、ミドル・テンポ・チューン。ギターのハルカが弾くヴァイオリンが、楽曲に鮮やかな彩りを与えている。
04トーン・ジギ
ヴォーカルのひぃたん曰く“作詞に最後まで苦しんだナンバー”とのこと。疾走感のあるサウンドにのせて、「欠落」「渇望」「殺伐」といった言葉が容赦なくリスナーの心を刺していく、エモーショナルなトラック。
05√135
オルタナ系のテンションの高いサウンドをバックボーンにしながらも、アコースティック・ギターの優しい音色が全編を優しく包み込む、至極のスロー・ナンバー。この楽曲を国道135線で聴けば、感慨もまたひとしおだ。
06みこと
演劇の台本を書いた経験があるというひぃたんによるリリックは、まるで村の長老が子供に教訓を語って聞かせるかのような“語り口調”。三線(さんしん)が奏でるメロディが、琉球の風を届けてくれるかのようだ。
07解読不能
文字どおり解読不能のシュールなリリックと勢いのあるサウンドが渾然一体となった、独特の世界観を創り上げている変拍子のロック・チューン。TBS系アニメ『コードギアス 反逆のルルーシュ』のオープニング・テーマに起用された。
08マラカイト
草原を吹き抜ける風のような大きなスケール感で描かれた大地の歌。力強いリズムとメロディをポップにまとめた魅力的な曲で、ハスキーな女性ヴォーカルが感情の赴くまま大地の果てまで連れて行ってくれる。テレビ朝日系『草野☆キッド』エンディング・テーマ。
09メイ
大地、海、大樹……。一聴しただけで果てしなく広がる風景が眼前に広がる、スケールの大きいロック・ナンバー。圧倒的なオリジナリティと真摯なヴォーカル、そしてダイナミックな演奏が、理屈を通り越して胸に迫りくる。
10雷音
ダークな疾走感とハスキー・ヴォイスのパワーが圧倒的なナンバー。“雷音”と“ライオン”をかけるなど言葉遊びの詰まった歌詞は、1度では意味を掴みにくいほどトリッキーだが、キャッチーなメロディとメリハリの効いたリズム感がしっかりと耳に残る。
11Someday
3rdシングル「解読不能」のカップリングとして収録された、ゆったりとしたバラード。ドラマティックで壮大な詞世界と“ひぃたん”の神々しいヴォーカルが、静かに心に染みわたっていくナンバーだ。
12片暝り
夢、希望、愛、そして心までもとあらゆる物が街に溶けていくという不気味なテーマの曲。ハスキーなヴォーカルが人間の切なさを、単調なビートが街の非情さを示すようだ。デビュー・ミニ・アルバム『言錆の樹』のシークレット・トラックの新録ヴァージョン。
13薄夕湖
隠しテーマは、“湖に映る美しい夕日を見て、「自分は何てバカなことをしているんだろう」と自殺を思いとどまる男の子”の歌。痛みも哀しみもすべて受け入れ真摯に人生に向き合った、ドラマティックで壮大なバラード。