ガイドコメント
1973年以来、約33年ぶりに制作されたストゥージズ名義でのスタジオ・アルバム。プロデュースをスティーヴ・アルビニが手がけており、パンクの代表格らしいパワフルな演奏が楽しめる。
収録曲
01TROLLIN'
荒削りなギター・サウンドとタイトなリズムはイギー&ストゥージズそのもの。シンプルなコード・ギターと自由に跳ね回るギター・ソロの丁度中間で、イギーの歌が絶大なカリスマ性を発揮している。
02YOU CAN'T HAVE FRIENDS
ゴツゴツしたコード・ギターの上を金属的なギターのカッティングがスパイスとして加わり、どこかユニークな香りが漂う明るい一曲に仕上がっている。おふざけ加減な歌い方はややセックス・ピストルズな感じも。
03ATM
3コード・ギターが生み出す下品で粗暴なサウンドはまさにセックス・ピストルズなパンク・サウンド。原点回帰とも言えるほどシンプルだが、60歳を超えているとはとても思えないサウンドの瑞々しさに驚かされる。
04MY IDEA OF FUN
ヘヴィなギターがギャンギャン唸りながら疾走していくロックンロール・ナンバー。サウンドに比べイギーの歌声が若干息切れ気味ではあるが、ほとばしるロック・スピリットは確かに息づいている。
05THE WEIRDNESS
メロディアスでセンチメンタルなミドル・ナンバー。絶望と孤独感を歌った詞の内容は、イギーのキャリアを通して常に顔を出すテーマではあるが、力の抜けたバンド・セッションによるローファイ・テイストのサウンドにより、今回は虚脱感がいっそう際立っている。
06FREE & FREAKY
岩のように重いギター・サウンドが転がるパンク・テイストのナンバー。ギミックのない直球サウンドのリピートでありながら、聴いた途端心をつかむ展開は流石の手腕。サビで美麗なコーラスを披露しているのはラカンターズのブレンダン・ベンソン。
07GREEDY AWFUL PEOPLE
タイトなリズムとハンドクラップがご機嫌なロックンロール・ナンバー。ファズ・ギターやソロ・ギターの展開が若干グランジを感じさせる。2分弱しかないが、よくも悪くも凝縮されたロックのダイナミズムと適当さを味わえる一曲。
08SHE TOOK MY MONEY
フックの効いたギターとオーディエンスを煽るようなイギーの歌声が印象的なアッパーなロックンロール・ナンバー。Aメロ、Bメロ、サビを繰り返すだけの構成だが、フレーズが一巡するごとにテンションが上がっていくのは、シンプルさがもたらす高揚感ゆえだ。
09THE END OF CHRISTIANITY
スピーディなビートと疾走感に満ちたギターが炸裂するパンク・ソング。イギーの曲の中でも比較的BPMが早く、ヴォーカルも若干息切れ気味なところに老いを感じさせる部分もあるが、極悪おじさんとも言うべき気迫は流石だ。
10MEXICAN GUY
ビートとギターが跳ね回るダンサブルなロックンロール。『1969』時代と変わらぬ瑞々しさを誇りながらも、ずっしりとしたバンド・サウンドと腰の座ったイギーの歌声に貫禄が感じられる。
11PASSING CLOUD
ファズの効いたギターがずしりと重く、イギーの歌声も押さえた感じで、どこかしらダークなイメージが漂うロック・ナンバー。そこにサックスをフィーチャーしたことで曲全体に艶っぽさが加味されている。
12I'M FRIED
ぎゃんぎゃん唸るギターとビートが駆け抜けるパンク・ソング。10代の少年が鳴らしているような瑞々しいギターの暴走っぷりはなかなか。それに比べてドラムが若干すり切れ気味ではあるが、おじさん連中の奏でるパンクとしては微笑ましく感じる部分も。
13O SOLO MIO
ヘヴィなギターが重々しく鳴り響くスロー・ナンバー。ポエトリー・リーディングのように淡々と歌を紡いでいくイギーの歌声は、神秘的でありながらどこか呪術的なまがまがしさすら感じさせる。