ミニ・レビュー
ご存じパンク・レジェンド、ストラングラーズの通算16作目。ジャン・ジャック・バーネルとバズがヴォーカルを取り、パンクの原点でもある60'sガレージ・パンクを彷彿とさせるスタイルが最高に刺戟的。結成以来30余年を経てこのエネルギーは立派です。★
ガイドコメント
1974年の結成以降、メンバー・チェンジを繰り返しながらも21世紀まで活動を続けるザ・ストラングラーズの通算16作目となるアルバム。初期を想起させる爆発的なエネルギーにあふれたロック作に仕上がっている。
収録曲
01UNBROKEN
格段にへヴィになったギターのカッティングとポップなキーボードのフレーズが渾然一体となったグルーヴィなナンバー。アグレッシヴなサウンドには17年ぶりの復活を告げる、宣戦布告にも似た意思がはっきりと感じ取れる。
02SPECTRE OF LOVE
ストラングラーズの特色ともいえるオルガン風キーボードのフレーズを聴かせつつも、スピード感とタフさを兼ね備えた骨太なバンド・サウンドを前面に押し出したロック・チューン。驚くほどストレートなメロディが直球で迫ってくる。
03SHE'S SLIPPING AWAY
メロディアスなキーボードのフレーズと軽めのバンド・サウンドにニューウェイヴ色がチラホラと漂うナンバー。影のあるメロディに絡みつくもの寂しげなコーラスやピアノが、テンポのいいビートに切なさを加味している。
04SUMMAT OUTANOWT
図太いベースとフリーキーなギターのフレーズに、がなり立てるヴォーカルが乗ったクセの強いサウンドと思いきや、サビで瞬時に同じ方向を向くことで、ポップに昇華されている。2分弱のパンキッシュなナンバーだが、そのインパクトは大きい。
05ANYTHING CAN HAPPEN
切ないキーボードと、ストラングラーズが得意とするヨーロピアンなメロディが哀愁を漂わせるメロウ・チューン。ムーディなサウンドと美しいコーラス・ワークがセピア色の想い出を刺激してくる。
06SEE ME COMING
叩きつけるようなダンサブルなリズムとカラフルなキーボードのメロディが、突き抜けたポップ感を生み出しているアッパーなナンバー。極彩色のサウンドの中でけたたましく鳴り響くストリングスも高揚感を煽りまくる。
07BLESS YOU (SAVE YOU, SPARE YOU, DAMN YOU)
もの寂しげな音色のアコースティック・ギターと透明感のあるピアノ、エンヤのように透き通った女声コーラスのハーモニーが神々しさを感じさせるナンバー。美しさと切なさを内包したサウンドは、まさに癒しの音楽だ。
08A SOLDIER'S DIARY
ラウドなギターとスペイシーなキーボードのフレーズが渾然となり、もの凄いスピードで駆け抜けていくパンク・チューン。タイトルに“戦士の日記”とあるように、メンバーの反戦の強い意思が込められている。
09BARBARA (SHANGRI-LA)
80年代を思い出させる懐かしいキーボードのフレーズを前面に押し出したメロディアスなナンバー。まぶしいくらいに煌めくギターとコーラス、そして何よりもキャッチーで甘いメロディに、胸がキュンとなる。
10I HATE YOU
カントリー&ブルース調の渋みのあるナンバー。おどけた感じのメロディの中に込められた、ストレートな嫌悪感はかなり強烈。剥き出しの怒りの衝動は、全盛期のパンク・スピリットよりもとげとげしい。
11RELENTLESS
憂鬱なメロディとリズミカルなビートが生み出す、影のある美しさをはらんだサウンドを、インパクト大のメロディアスなキーボードが彩る。ニューウェイヴ色が前面に押し出されたスピーディなナンバー。
12INSTEAD OF THIS
90年発表のナンバーのライヴ・ヴァージョン。パーカッシヴなビートとアコースティックなセッションに、そっとキーボードが華を添える。落ち着いたサウンドの中でメロディの美しさが際立っている。
13DEATH AND NIGHT AND BLOOD
三島由紀夫に捧げられたというアルバム『ブラック・アンド・ホワイト』(1978年)に収録されているナンバーのライヴ・ヴァージョン。大仰なキーボードが冒頭から鳴り響き、ストレートなロンドン・パンクが炸裂。燃え上がるパンク・スピリッツが体感できる。