ミニ・レビュー
揺るぎない女性人気を誇るシンガー、約3年ぶりの6作目。今回もその期待に沿い、柔らかくロマンティックなスロー/ミディアムが目白押し。だが歌唱力は高いのだから、アグレッシヴな曲も数曲でも入れれば男性ファンもつかめるのにと思うと痛し痒し。
ガイドコメント
2007年4月発売のアルバム。本作でも、セクシー&アーバンなR&Bスタイルで多くの女性ファンのハートを魅了する。期待通りのジョー節が炸裂したメロディアスなシングル曲「イフ・アイ・ウォズ・ユア・マン」などを収録。
収録曲
01GET TO KNOW ME
Nas「You're Da Man」のトラックをサンプル、というよりはむしろR&Bカヴァーと言った方が正しいかも。新たにベースを加えてはいるが、トラックはほぼ原曲のまま。Nasのラップをフィーチャーし、ストリートへのインパクトは極大に。
02IF I WAS YOUR MAN
北欧出身のプロデューサー・チーム=スターゲイトが手がけるメロウでポップな世界が、ジョーのロマンティシズムと融合。やわらかいサウンドを愛おしく包み込むような、ジョーのやさしくも熱っぽいヴォーカルが胸を熱くしてくれる。
03IF I WANT HER
低音を効かせたリズム・ボックスのバス・ドラムとハンドクラップによるビートの上に、かわいらしいオルゴールっぽい音色を使ってドリーミーにまとめた口説きナンバー。セクシーなトピックをロマンティックに歌い上げている。
04WHERE U AT
メジャー・デビュー前から大きな注目を集めてきたニューヨークのラッパーで、ジョーとはレーベル・メイトに当たるパプーズをフィーチャー。エコーを深めにかけた幻想的なトラックが、恋人を失った男の焦りや不安といった心情をよりいっそう強めている。
05MY LOVE
ゴスペラーズとの仕事で日本でもよく知られたブライアン・マイケル・コックスらによるバラード。余計な飾りなどはまったくなし。アコースティック・ピアノが奏でる切ない調べをバックに、ただただ情熱がほとばしる。これぞジョーのR&Bだ。
06GO HARD
どっしりとしたビートに乗って「ホンモノの男はハードにキメるもんだぜ」と粋がってみせるが、不思議と嫌味はなく、後味も爽やか。しっかりと歌い込むヴォーカル・スタイルで、ヒップホップ・ソウル以前の90年代初頭のR&Bを思い起こさせる一曲。
07AIN'T NOTHIN' LIKE ME
『ドリームガールズ』の音楽を担当して大きな成果を収めたアンダードッグス一派によるプロデュース曲。ラッパー二人をフィーチャー、その上、ジョーのヴォーカルもいつになくラップ的で、ヒップホップ・テイストが極めて濃い。
08IT'S ME
「If I Was Your Man」と同じくスターゲイト制作のミッド・ナンバー。ニーヨの初期ヒットを支えてきた彼らのまろやかなポップ風味は、ジョーにも違和感なくフィット。ジョーはヴェテランならではの余裕のヴォーカルを聴かせてくれている。
09LET'S JUST DO IT
アッシャー「U Don't Have To Call」に似たテイストのアップで、未来的な質感でまとめ上げているあちらに対し、こちらはビートやギターのサウンドが泥臭いのが特徴。ファボラスの気怠さ漂うラップをフィーチャーしている。
10FEEL FOR YOU
マライア・キャリー「We Belong Together」のソングライターとしてグラミーの受賞経験を持つジョンタ・オースティンが、ブライアン・コックスらと共作した繊細で誠実なバラード。運命の女性に出会った男の一途な想いとその悦びがあふれ出ている。
11JUST RELAX
ア・トライブ・コールド・クエストの94年作「Electric Relaxation」のトラックをそのまま拝借し、R&Bソングとしてカヴァー。一部ではラップ風ヴォーカルにも挑戦。オリジナルのヒップな雰囲気を壊すことなく料理してみせた力作だ。
12LOVE IS JUST A GAME
ボーイズIIメン「I Do」のイントロ部分を速回ししてループさせ、哀愁漂うトラックへと仕立てたミッド・テンポ曲。「愛はゲームに過ぎないわ」と澄ましてみせる恋人に、「オレはそんなゲームはやりたくない」と苦悩する男の心情を歌う。
13YOU SHOULD KNOW ME
98年のサントラ盤『Caught Up』に収録された「U Shold Know Me」のリメイク。ブリブリと張り出すシンセ・ベースやアコースティック・ピアノのコード弾きが、ジョーがデビューした90年代初頭のR&Bスタイルを思わせるメロディアスなバラードだ。
14LIFE OF THE PARTY
パーティに明け暮れてるように思われがちだけれど、本当は最高の女性を失ってふさぎ込んでいるんだという、いかにもスターらしい悩みを歌に託したバラード。センチメンタルな世界を演出する電気シタールの使い方など、70年代風の音使いもすばらしい。
15THAT'S WHAT I LIKE
数々のヒットを手がけるティム&ボブがボビー・ヴァレンティノ「Slow Down」で当てたエキゾティックなサウンド・プロダクションを注入。何とも言えない不思議な世界だが、癖になったらやめられない麻薬的なグルーヴ・ナンバーだ。