ミニ・レビュー
『メセニー・メルドー』と同じ時の録音。前作はデュオ中心の選曲だったが、こちらはメセニー+メルドー・トリオというカルテット中心の内容。前作を静とすれば、本作は動の世界。演奏のグレードは高いし、情感は豊か、訴求力も強力とあって、実に感動的な演奏。
ガイドコメント
パット・メセニーとブラッド・メルドーのコラボ作第2弾。前作にも参加していたラリー・グレナディア(b)とジェフ・バラード(ds)を迎えたカルテットで、新生メセニー・グループともいえる息の合ったプレイを披露している。
収録曲
01A NIGHT AWAY
アルバム『カルテット』収録曲の中で唯一のメセニーとメルドーの合作ナンバー。メセニーが「キャリアの中でも自慢の完成度」と誇る1曲で、4人のメンバー全員が個性を出しながら相乗効果的に楽曲のクオリティを上げている。
02THE SOUND OF WATER
タイトル通り、水辺のような静寂さと壮美さを漂わせるデュエット・ナンバー。メセニー特注の4ネック42弦ギターのハープにも似た独特のサウンドとメルドーの繊細なピアノが絶妙に融合し、大陸的情緒を醸している。
03FEAR AND TREMBLING
ソリストを鼓舞するジェフ・バラードのシャープなドラムが映えるスリリングなナンバー。ラリー・グレナディアの奔放なようでしっかり的を射たベースや感情に直結したメセニーの歪んだギター・ソロなども聴きどころだ。
04DON'T WAIT
メセニーがアルバム『カルテット』において、唯一アコギを用いたデュエット曲。極めて美しいオープニングから終盤のクライマックスに至るまで、世代の違いをまったく感じさせないほど息が合っている。まさに非の打ちどころのない演奏だ。
05TOWARDS THE LIGHT
8ビート基調のコンテンポラリー・ナンバー。次第に高音域へとシフトしていくメセニーのギター・シンセ・ソロから重めのロック的間奏パートへの展開が実にドラマティック。メンバー全員が旧知の仲のような一体感だ。
06LONG BEFORE
メセニーの丸いギター・サウンドが印象的なデュエット曲。注目すべきはメセニーがいつにも増してジャズ色の濃いプレイを披露している点で、ジャズ的ベクトルを持つメルドーに自然と吸い寄せられているようだ。
07EN LA TIERRA QUE NO OLVIDA
リズミカルなバッキングを特徴とするラテン風味のナンバー。メルドーの高い演奏技術に裏打ちされたソロと気の利いたバッキングが冴えわたっている。オーソドックスなキメ・フレーズがあるので、曲の構成を把握しやすい。
08SANTA CRUZ SLACKER
モンクのようなユニークな旋律を持つコンテンポラリー・ジャズ曲。ジェフ・バラードの巧みなブラシ・ワークや終盤のソロにも近い派手なプレイに注目。全体的には、メセニー+メルドー・トリオという図式を感じさせる。
09SECRET BEACH
ボッサ・テイストのスロー・ナンバー。派手に感情を爆発させることなく、あくまで落ち着いたムードの中で気品あるソロを聴かせるメルドーと、ギター・シンセを用いてドラマティックなソロを披露するメセニーの対比が面白い。
10SILENT MOVIE
しっとりと落ち着いた雰囲気のバラード曲。ピッタリ息の合ったバンド・アンサンブルはバラードでも際立っていて、バックの2人がメルドーとメセニーの歌心あふれるソロを万全の体勢でバックアップしている。
11MARTA'S THEME
アルバム『カルテット』のラストを締め括る静かなデュエット曲。メルドーの繊細なタッチのピアノとメセニーのメロウなギターがまるでひとつの楽器のように溶け合っている様は特筆に値する。演奏時間は2分半と短め。
演奏
パット・メセニー(G) ブラッド・メルドー(P) ラリー・グレナディア(B) ジェフ・バラード(DS)