ミニ・レビュー
ソングライターとして出発したシンガーの2作目。粒立ちのいいメロディと現代的な音作りを併せ持つスパイスの利いた曲の数々が、一曲ごとに次々と表情を変える万華鏡盤。通りのいい少年声を七変化させて迷いなく歌い抜き、前作以上に逸材ぶりを発揮。★
ガイドコメント
大ヒットを記録した『イン・マイ・オウン・ワーズ』に続く、Ne-Yoの2ndアルバム。愛が持つ二面性(喜びと痛み)をテーマに、キャッチーでポップなナンバーからシックなナンバーまでを、巧みな歌声で聴かせてくれる。
収録曲
01BECAUSE OF YOU
本人曰く「マイケル・ジャクソンの要素が入った曲」という2ndアルバムからの先行シングル。ヒット曲「So Sick」などを共作したプロデューサー・チーム=スターゲイトと再びタッグを組んで、恋に溺れる男の叫びをおセンチに歌い上げる。
02CRAZY
ジェイ・Zがイントロ部分で「ニーヨは若き日のマイケル」とラップしているように、この曲の繊細なヴォーカル・スタイル/コーラス・アレンジは80年代のマイケル・ジャクソンを思わせるもの。メロディの美しさも特筆すべき。
03CAN WE CHILL
電子楽器ながら、シンセ・ブラスやストリングスなどを使ったアレンジは70年代的なバンド・スタイルを思わせ、ブ厚いコーラスもまた往年のソウルのヴォーカル・グループを連想させる“古き良きソウル”。ラジオ・フレンドリーなキャッチーさが最高。
04DO YOU
「So Sick」の続編に当たる曲で、2、3年後に別れた女性がほかの男と婚約し、妊娠しているという設定。いまだ彼女のことを忘れられない男の未練たらしい想いを、もの悲しげなピアノの調べが印象的なトラックをバックに歌う。
05ADDICTED
「ニーヨ:セックス中毒」と題された雑誌の記事に対するニーヨの回答。「セックスなんかに溺れちゃいないけど、オレと寝たらキミがオレに溺れるよ」と、中毒を否定するだけに終わっていないのが痛快。プリンスっぽい裏声も飛び出す。
06LEAVING TONIGHT
『ドリームガールズ』の演技でアカデミー賞の助演女優賞に輝いたジェニファー・ハドソンが、持ち前のダイナミックなヴォーカルを存分に発揮したデュエット。スモーキー・ロビンソン「Baby Come Close」を下敷きにした70'sソウル風のアレンジがよく似合う。
07AIN'T THINKING ABOUT YOU
最高の恋人になろうと最善を尽くしても報われない男が、「もうお前のことなんか考えてやるもんか」とブチギレてみせるという、ユニークなストーリーの恋歌。サビのドラマティックなメロディとビシビシ打ち付けられるスネア・ドラムが強烈だ。
08SEX WITH MY EX
80年代的な質感のドラムやシンセの音色を使い、歪んだギターを挿入するなど、時代のメインストリームR&Bでは珍しいタイプの曲で、かつてのプリンス風。「キミは最高のセックスを与えられてるのだよ」とニーヨは自信満々。淫らな空気に充ち満ちている。
09ANGEL
決して結ばれることのない相手である天使に恋をしてしまったという幻想的な主題を、80年代半ばのポップ・サウンドを模したようなプロダクションで彩る。ニーヨ自身による美しい多重コーラスが不思議な世界へと誘ってくれる。
10MAKE IT WORK
バロック調のハープシコードを使ったトラックそのものだけでメロディアスなところに、おセンチでキャッチーなニーヨ節が炸裂。サビをさらに盛り上げる、いわゆる大サビも用意されており、彼の甘酸っぱい世界がとことん堪能できる。
11SAY IT
爽快でセンチメンタルな作品の多いニーヨには珍しく暗く重めのスローで、「どこに欲しいのか教えてくれよ」と、ねっとりと言い寄るその口ぶりはちょっとサディスティックでもあったり。ニーヨの裏声とともに重厚な弦とコーラスのアレンジが狂気の中の美しさを表現している。
12GO ON GIRL
アコースティック・ギターの清らかな音色と、飾りっ気のないリズム・ボックスのサウンドが切なさを誘うニーヨ&スターゲイト印のポップR&B。遊ばれていたことを知った男が「すぐに立ち直れるから大丈夫さ」と強がる泣きのソウルだ。
13THAT'S WHAT IT DOES
R&Bの枠組みから解き放たれたソングライター=ニーヨだから作ることのできる自由なメロディ。ガラージのようなクラブ・ミュージック的なサウンド。そのふたつをあわせ持った実験的な作品だ。ゴスペルのごとき後半の合唱は圧巻。
14SPOTLIGHT
マーチング・バンドにも似た力強いビートをゆったりと弾ませ、そのリズムがグイグイと曲を引っ張る、陽気で明るい雰囲気に満ちたグルーヴィなナンバー。シンプルなアレンジがかえって魅力で、プロデュースはニーヨのプロダクション所属のへヴィウェイツ。