ミニ・レビュー
UKの5人組による2年ぶりのセカンド。エコー&ザ・バニーメンなどを手掛けたギル・ノートンが制作を担当、ポップな持ち味を残しつつ、よりダイナミックかつソリッドなサウンドを展開。バンドの勢いや充実感がストレートに表現された会心の一枚。
ガイドコメント
WARPレーベル初の正統派ギター・バンドとしてデビューし、瞬く間にスターダムに上り詰めたマキシモ・パークの2ndアルバム。ダイナミックな側面が強調されたサウンドに、彼らのさらなるポテンシャルが垣間見られる。
収録曲
01GIRLS WHO PLAY GUITARS
恋人との腐れ縁を皮肉っぽく綴った、いかにも英国バンドらしいひねくれたポップ・チューン。エレクトリック・ギターの歯切れ良いコード・カッティングの上でベースがメロディアスなフレーズを奏で続ける、たくましいバンド・アンサンブルだ。
02OUR VELOCITY
分厚いシンセサイザー・サウンドによって築き上げられた性急なテクノ・ビートに乗せて、ポール・スミスが愛する人に裏切られた悲しみと孤独をエモーショナルに歌い上げる。ファルセット・ヴォイスによるコーラス・ワークが美しい。
03BOOKS FROM BOXES
灰色のロンドンを想わせる哀愁と憂鬱が全編に漂うギター・ロック・チューン。サイケデリックなフレーズを奏でるクリーン・トーンのエレクトリック・ギターとチープな音色のキーボードが、初期R.E.M.を彷彿とさせる。
04RUSSIAN LITERATURE
「僕らが救われることはない」と、底なしの絶望を吐き捨てるかのように叩きつける激情のロック・チューン。曲に込められた諦観を代弁するかのように、音程を外して暴走していくピアノのフレージングは、スリルと刺激に満ちあふれている。
05KARAOKE PLAYS
人生はどんな悲劇が起こるか分からない。だから“今”という一瞬を大切にして“君”を愛していこう。そんな真摯な想いをエレクトリック・ギターのブルージィなアルペジオに乗せて、切々と綴ったミディアム・チューン。
06YOUR URGE
刹那の快楽に身を委ねることによって振り払おうとしても決して頭から離れることのない虚無感を、自虐的なユーモアを交えながら淡々と描き出す。往年のザ・スミスを彷彿とさせるシニカルかつリリカルなギター・ロック・ナンバーだ。
07THE UNSHOCKABLE
“人生”という限られた時間を無駄にしないためにも、絶対に諦めずに戦い続けるんだ! そんな前向きな意志をスピーディなニューウェイヴ調の8ビートに乗せて力強く歌い上げたロックンロール・ナンバー。
08BY THE MONUMENT
長年のライヴ活動の成果が見事に“音”に還元されたスケールの大きなバンド・アンサンブルで、決して理解し合えることのない男と女の感情のすれ違いを描き出す。むせび泣くようなピアノの悲しげな響きが情感を一層盛り上げる。
09NOSEBLEED
“鼻血”という物騒な楽曲タイトルのインパクトに惑わされるなかれ。マンドリンとアコーディオンがフィーチャーされた大陸的サウンドに乗せて、他人にへつらうことの空しさを歌った優しいメッセージ・ソングだ。
10A FORTNIGHT'S TIME
好意を抱いている女性への強迫観念的な愛情を綴ったラブ・ソング。ザ・フーの「無法の世界」を彷彿とさせる無機的なシンセサイザーのシークエンスを中心に、多種多様なキーボードを使って組み立てられたポップなアンサンブルだ。
11SANDBLASTED AND SET FREE
ヴァイオリンの透明で情緒的な音色を中心に構成された、英国バンドらしい憂いをたたえた曲調。ポール・スミスの文学的で内向的な歌詞。初期U2やザ・スミスにも通じる底知れないスケールの大きさが感じられるミディアム・チューンだ。
12PARISIAN SKIES
右チャンネルで断続的に鳴り響くグロッケンシュピールの柔らかく儚げな音色が印象的なギター・ポップ・チューン。イギリス人がフランス人に対して抱いている敵意とコンプレックスが露わになったユーモラスな歌詞が楽しい。
13DISTANCE MAKES
ザ・ストロークス以降のロックンロール・リヴァイヴァルの系譜に連なるチープかつソリッドなガレージ・ロック・ナンバー。エレクトリック・ピアノとベースが転がるようなフレージングで、楽曲に強靭なグルーヴを与えている。
14MARY O'BRIEN
アコースティック・ギターの繊細なアルペジオだけをバックに切々と歌われるラブ・バラード。ポール・スミスのくぐもった歌声と流れるような美しいメロディが、ダークでロマンティックなムードを醸し出す英国フォーク調のサウンドだ。