ミニ・レビュー
通算10作目となるオリジナル。先行シングル2、3、5、11曲目や提供曲カヴァー4、10曲目も期待どおりだが、ほかの楽曲をカヴァーした1、9曲目でもまったく自然体なのが見事。圧巻は、過ぎ行く人生を色あせつつ味わい深いデニムに喩えたバラードの12曲目。年を重ねるのは素敵なことです。★
ガイドコメント
竹内まりやの約6年ぶりとなるオリジナル・アルバム。シングル「返信」「シンクロニシティ(素敵な偶然)」をはじめ、テレビやCMのタイアップ・ナンバーが満載。松たか子に提供した「みんなひとり」のセルフ・カヴァーも収録されている。
収録曲
01君住む街角 (On The Street Where You Live)
原曲はミュージカル『マイ・フェア・レディ』で感動的に歌われた華やかなヒット・ナンバー。アルバム『デニム』のオープニングにふさわしく、歌う喜びに満ちたヴォーカルとゴージャスで楽しいアレンジが、リスナーの心を弾ませる。
02スロー・ラヴ
温かみのあるメロディとヴォーカル、それを彩る山下達郎のコーラスが心を柔らかく解きほぐす。時には立ち止まってみることも必要だと教えてくれる、極上のミディアム・ポップ・チューン。松たか子主演のCX系ドラマ『役者魂!』の挿入歌。
03返信
映画『出口のない海』主題歌となった、通算39枚目のシングル。“この世を去った愛する人への手紙”という映画のストーリーに沿った、マイナー調のバラード。シンプルな演奏の中での凛とした歌唱が胸を打つナンバー。
04みんなひとり
松たか子に提供し、フジテレビ系ドラマ『役者魂!』の主題歌にも起用されたナンバーのセルフ・カヴァー。原曲と対照的に松がコーラスを担当しているので、聴き比べるのも面白い。新たに加わったセリフも遊び心に富んでいる。
05シンクロニシティ (素敵な偶然)
運命の人との“偶然の一致”が起こす喜びに胸躍る心境を綴った軽快なポップス。夫婦である山下達郎のコーラスと竹内まりやのヴォーカルのハーモニーは絶妙で、楽曲イメージそのもの。宮里三兄妹が出演する明治「アーモンドチョコ」CMソング。
06哀しい恋人
不倫を想起させる詞にドキリとしつつ、純粋に別れの寂しさをすべてのリスナーに訴えるバラード。「生まれ変わったら今度は本当の恋人に」と願う本心が切ない。控えめなアレンジも大人の恋愛の余裕を感じさせる。
07Never Cry Butterfly
杉真理、伊豆田洋之、元チューリップの上田雅利らで結成されたピカデリーサーカスのアルバム曲をカヴァー。彼らの演奏をバックに聴かせる力強いヴォーカルが説得力を持つ、スケール感のあるゆったりとしたナンバーに仕上がっている。
08ラスト・デイト
恋人の移ろいゆく思いに気付き、自ら「一人に戻るわ」と別れを決意する切ないバラード。そうした芯の強い姿を相手に見せつつも、巧みな心象描写が深い悲しみを物語る。愁いを帯びた山下達郎のコーラスが感情を揺さぶる。
09クリスマスは一緒に
日本テレビ系列の特別番組『HAPPY Xmas SHOW! 2006』で使用された楽曲の初CD化。クリスマスに会える嬉しさとクリスマスにしか会えない寂しさが溶け合って、胸がキュンとなるナンバー。
10終楽章
88年、薬師丸ひろ子に提供した楽曲のセルフ・カヴァー。自分の素直な心変わりをリアルに綴った言葉の連続に、男性リスナーは驚くかも。女性の強さを前面に押し出した歌詞と小悪魔的な表情を見せる歌唱の対比も聴きどころ。
11明日のない恋
日本テレビ系『火曜ドラマゴールド』主題歌として起用された大人のラブ・ソング。危険な関係をテーマにしたミディアム・バラードで、ボサ・ノヴァ風テイストがアダルトさを演出している。服部克久によるオーケストラ・アレンジもいい。
12人生の扉
ひとりの女性の半生を歌詞でたどりながら、気付けば自分の人生を重ね合わせてしまう。誰にも平等に流れる時間の速さに驚きつつも、生きていく未来への希望を感じさせる、魂のこもった壮大なバラード。協和発酵CMソング。