ミニ・レビュー
英国1位、史上最速の売上げを誇るデビュー作に続くセカンド。先行シングル「ブライアンストーム」を筆頭に、性急なグルーヴで押し寄せる波動性の激しいサウンドが魅力。デュラン・デュランやカルチャー・クラブら80年代UKサウンドを隠し味的に使ったりと、確実に振幅が広がった佳作。
ガイドコメント
1stアルバムで世界各国に旋風を巻き起こしたアークティック・モンキーズの2ndアルバム。プロデューサーにジェイムス・フォード(シミアン・モバイル・ディスコ)を迎えた意欲作で、前作をしのぐ魅惑のサウンドを提示してくれている。
収録曲
01BRIANSTORM
マット・ヘルダースの超高速ドラミングが炸裂するパワフル極まりない『フェイヴァリット・ワースト・ナイトメアー』からの1stシングル。急激な成功を手にした自分たち自身を皮肉ったかのような、シニカルな歌詞が印象的。
02TEDDY PICKER
ブルージィなギター・リフとメロディアスなベース・ラインが光る、ロッキンなミディアム・チューン。デュラン・デュラン「セイヴ・ア・プレイヤー」の一節まで飛び出す言葉数の異様に多い歌詞は、ヒップホップ的な趣もあり。
03D IS FOR DANGEROUS
バック・コーラスとの掛け合いによって「D」を頭文字に持つさまざまな単語が繰り出されるロックンロール・ナンバー。曲中には、『フェイヴァリット・ワースト・ナイトメアー』というアルバム・タイトルの由来となったフレーズも登場する。
04BALACLAVA
犯罪者が顔を隠すために使うことも多い、ニットの目出し帽の名前をタイトルに冠したロック・チューン。英国社会の荒廃した都市風景の中で繰り広げられる青春ストーリーを描いた、ペシミスティックな歌詞がリアルだ。
05FLUORESCENT ADOLESCENT
エレクトリック・ギターのキラキラとしたきらびやかな音色が印象的な、人懐っこいポップ・チューン。16ビートと8ビートを巧みに使い分けるマット・ヘルダースのテクニカルなドラミングが、楽曲に力強い横ノリのグルーヴを与えている。
06ONLY ONES WHO KNOW
優しく爪弾かれるエレクトリック・ギターのコード・ストロークとスライド・ギターの絡みがひたすらドリーミーなバラード。男と女の刹那的な関係を描いた歌詞とロマンティックな曲調のミスマッチが、不思議と魅力的だ。
07DO ME A FAVOUR
ファットなベース・ラインとタムの連打の絡みがグルーヴィなガレージ・ロック・ナンバー。冷め切った男女カップルの腐れ縁を描いた歌詞からは、アレクッス・ターナーの一筋縄ではいかないシニカルな感性がにじみ出ている。
08THIS HOUSE IS A CIRCUS
“この家はまるでサーカス小屋。とんでもない狂気の沙汰だ”という名フレーズによって、現代を生きる若者の悲惨な現状を見事に切り取ったロックンロール・チューン。エレクトリック・ギターの切れ味鋭いカッティングも聴きものだ。
09IF YOU WERE THERE, BEWARE
陰鬱な曲調の途中でいきなり大音量のエレクトリック・ギターが切り込んできたり、サイケデリックなバラードへと転調する。複雑な曲展開を見せる、アークティック・モンキーズ流プログレシッヴ・ロック・チューンだ。
10THE BAD THING
既婚女性との一夜限りの関係を描いた、まさにセックス・ドラッグ・ロックンロールな世界が展開される、わずか2分弱のスピーディなロック・チューン。ひたすら冷めた視線で綴られる歌詞は、アークティック・モンキーズならでは。
11OLD YELLOW BRICKS
“脱出王”として知られるフーディーニや『オズの魔法使い』といった“古き良き世界”の文化にオマージュを捧げながら、現代社会が抱える“絶望”を描いたロック・ナンバー。エレクトリック・ギターのヴァイオリン奏法が不安感を駆り立てている。
12505
アレックス・ターナーのかつての恋人へ向けて歌われた感傷的なポップ・チューン。もの悲しげなキーボード・サウンドとカオティックなエレクトリック・ノイズをフィーチャーしたサウンドからは、混乱した切実な想いが伝わってくる。
13DA FRAME 2R
女遊びを繰り返す色男の空虚な生活を描いたシニカルなロックンロール・ナンバー。ジェームズ・ボンドやブルース・ウェインが登場する、ポップ・カルチャーへの愛にあふれた歌詞が楽しい。フリーキーなギター・リフがクール!
14MATADOR
アークティック・モンキーズのテクニカルな演奏が堪能できる、インストゥルメンタル・パートに重きが置かれたヘヴィなロック・チューン。強烈なディストーションのかかったギターが暴れまくる、高速16ビートが刺激的!