ミニ・レビュー
韓国人の血が混ざる米R&Bシンガーの3作目。プロデューサーの顔ぶれは大きく変わったがノリのよいダンス・チューンを軸としたクラブ・オリエンテッドな作りは保持し、ポップス感豊かな健やかで溌剌とした歌声が弾ける。前作からの大ヒット「ワン・シング」も収録。
ガイドコメント
艶やかな歌声を聴かせるR&Bディーヴァ、エイメリーの3rdアルバム。クールなラテン・フレイヴァーを導入したシングル「TAKE CONTROL」(ナールズ・バークレイのCee-Loとの共作)ほか、魅力的なナンバーが満載だ。
収録曲
01FORECAST
威勢の良いホーンのリフとともに幕開けする3rdアルバムの冒頭曲。重低音をともなうパワフルでかっちりしたビートの上を、ていねいに多重レコーディングされたエイメリーの麗しい歌声が舞うさまは、神々しささえ感じさせる。
02HATE 2 LOVE U
ヒットした「1 Thing」と同じ路線のアップ・ナンバーだが、こちらはクール&ザ・ギャングの初期曲「ギヴ・イット・アップ」をサンプリング。メロウな持ち味を強く打ち出したジャズ・ファンク・フレイヴァーが抜群に心地よい。
03SOME LIKE IT
ヒップホップ・シーンではよく知られたマルコム・マクラーレン「ワールズ・フェイマス」をネタ使いし、そのオールドスクール・ヒップホップの精神をR&Bに昇華させたアップ曲。80年代エレクトロとエイメリーとの出会いは刺激的で、なおかつ美しい。
04MAKE ME BELIEVE
エイメリー本人によるフルートを交えた70年代ソウル的なサウンドのミッド・テンポ曲。「わたしを信じさせてくれれば、あなたがして欲しいことなんでもしてあげるわ」とちょっと生意気っぽくセクシーに迫るさまがかわいい。
05TAKE CONTROL
ブラジルのトン・ゼーによるアーシーなギター・リフを拝借した猛烈に泥臭いビートと、マイケル・ジャクソン「スタート・サムシング」的な華麗なホーン使いでドラマティックに迫るアップ。シー・ローとの共作という話にも頷けるファンキー・チューンだ。
06GOTTA WORK
サム&デイヴのヒットで有名なソウル・クラシック「ホールド・オン、アイム・カミング」(ここでは別人ヴァージョンを使用)を大ネタ使いしたヒップホップ・ソウル。オールド・ソウル色丸出しのにぎやかなサウンドに合わせて、ビヨンセ並みにワイルドに振る舞ってみせる。
07CRUSH
「あなたにcrush=夢中なの」と甘くささやく、男子は夢見心地必至のミッド・チューン。あえてチープなシンセの音色や懐かしのオーケストラ・ヒットを使用して、80年代ポップス的なプロダクションを再現したサウンドが面白い。
08CRAZY WONDERFUL
本人のソングライト/アレンジによる曲で、アルバム『ビコーズ・アイ・ラヴ・イット』では前曲に当たる「クラッシュ」と連続性のあるドリーミーなナンバー。意中の彼のセクシーさにメロメロになったエイメリーが至福のときを味わうその歌声もまたセクシー。
09THAT'S WHAT U R
「この時をずっと待ってたの」と、ついに訪れた愛し合う瞬間を慈しみ深く歌い上げる官能のミッド・チューン。激しく切ない歌がトレードマークのエイメリーも、ここではどこまでも色っぽく艶やかなヴォーカルを聴かせている。
10WHEN LOVING U WAS EASY
恋の終わりを悟った女性の気持ちを綴る曲。一途に想い続けた昔を懐かしみながらも、ふたりの愛に未来はないという現実と向き合い、失恋を乗り越えていくたくましささえ感じさせる……そんな乙女心をキュートなサウンドで演出。
11PAINT ME OVER
イントロのピアノの調べがセンチメンタルな雰囲気を醸し出す失恋ソング。愛する恋人のために尽くしても尽くしても、相手の望む色に染まることは決してできない……。自分を失いかけてようやく別れを選択した女性の心情を歌う彼女の痛々しさが秀逸。
12SOMEBODY UP THERE
美しいアコースティック・ピアノに導かれて、長い交際によって勝ち得たふたりの絆を神様に感謝する穏やかなバラード。張りのある彼女の声がカスレるたびに切なさが増していく。プロデュースは多くのR&Bヒットを手掛けるブライアン・マイケル・コックス。
13ALL ROADS
ジェイムス・イングラム&パティ・オースティン「君に捧げるメロディー」の美しいピアノのフレーズをサンプリングし、ドラムに深いリヴァーブ(残響音)を効かせて80年代風のサウンドに仕立てたバラード。情熱的なエイメリーのヴォーカルは最高潮に。
141 THING
ウィル・スミス主演映画『最後の恋のはじめ方』のサントラ収録曲にして、R&Bチャート1位/ポップ・チャート8位を獲得したヒット・チューン。エイメリーを初期から支えるプロデューサーのリッチ・ハリソンが手がけた、猛烈にファンキーなビートにKO!
15LOSING U
フランスのシーンで活躍するプロデューサー・チームが参加した曲で、元はフランスのオムニバス盤に収録されていたもの。クランク調のサウンドとエイメリーとの相性は意外にも悪くなく、彼女のポテンシャルの高さを見せつけている。
16TAKE CONTROL
オリジナルは3rdアルバムからのリード・シングル曲で、本作はトップ・クラスの人気を誇る韓国のシンガー=SE7ENをフィーチャーしたデュエット・ヴァージョン。SE7ENのグルーヴへの適応は完璧。韓国シンガーの実力の高さを思い知らされる。
17TAKE CONTROL
3rdアルバムからのリード・シングル曲をDJ HASEBEがリミックス。定番ネタとして知られるターナ・ガードナー「ハートビート」のビートを発展させ、ギター・カッティングを加えて渋めにまとめた、エキゾティックなヴァージョンだ。