ミニ・レビュー
リック・ルービンを共同プロデューサーに迎えて制作した4年ぶりのオリジナル3作目。ミクスチャー性は薄まったが、そのぶんだけ緻密にアレンジされた曲構成やメロディの良さが際立つ作りで、バンドの成熟を伝えるとともに確かな手応えに満ちている。
ガイドコメント
リンキン・パークの3rdアルバム。本作はリック・ルービンとマイク・シノダによる共同プロデュースで、100曲もの候補曲から絞り込まれた楽曲群を収録。サウンド・アプローチも多岐にわたっている。
収録曲
01WAKE
『ミニッツ・トゥ・ミッドナイト』の楽曲制作過程の終盤に完成した壮大なインストゥルメンタル・ナンバー。「ウェイク」という単語が持つ二重の意味合い(「目覚め」と「航跡」)がアルバムのイントロダクションにぴったり。
02GIVEN UP
エレクトリック・ギターがインダストリアルな響きを持つパンク・ロック・チューン。キーがジャラジャラ鳴る音と軽やかなハンドクラップを合わせることによってリズムを強調した、オリジナリティあふれるサウンド・プロダクションだ。
03LEAVE OUT ALL THE REST
チェスター・ベニントンの艶やかな歌声が前面に押し出されたメランコリックなモダン・ロック・ナンバー。ストリングスの厳かな音色とラウドなエレクトリック・ギターの対比によって、楽曲をドラマティックに飾り立てている。
04BLEED IT OUT
マイク・シノダのスピーディなオールドスクール・ラップが堪能できる、パーティ向けのアップ・テンポなミクスチャー・ロック。楽しげなサウンドとは対照的に、歌詞はメッセージ性の強い反戦ソングとなっているのがユニークだ。
05SHADOW OF THE DAY
太陽が沈んでいく風景を眺めながら、人生の光と影に想いを馳せるセンチメンタルなロック・ナンバー。ブラッド・デルソンが弾くハイトーンで伸びやかなメジャー調のギター・ソロが、楽曲全体に希望をもたらしているかのよう。
06WHAT I'VE DONE
ピアノとスクラッチをフィーチャーした王道モダン・ロック・チューン。楽曲タイトルを連呼するサビのキャッチーなフレーズが強烈に耳に残る。映画『トランスフォーマー』の主題歌としても使用された大ヒット・シングルだ。
07HANDS HELD HIGH
もともとは「ソングQ」という仮題が付けられていたインストゥルメンタル・ナンバーが感動的なラップ・バラードに発展。パイプオルガンとマーチング調のスネアをフィーチャーした擬似ゴスペル風サウンドだ。
08NO MORE SORROW
イーボウが奏でるロング・トーンによって、終末感漂う殺伐とした雰囲気を作り上げたヘヴィ・ロック・チューン。チェスター・ベニントンの荒々しいシャウトからは、抑え切れないほどのフラストレーションと鬱屈がにじみ出ている。
09VALENTINE'S DAY
愛する人を失ってしまった男の孤独を描いたロック・ナンバー。歌の主人公が抱える悲しみの大きさを、チェスター・ベニントンのエモーショナルな歌声とディストーション・ギターのヒリヒリとした荒い音色の絡みによって表現。
10IN BETWEEN
マイク・シノダがメランコリックなメロディを噛みしめるように歌い上げるミディアム・チューン。シンセサイザーによって作り出されたストリングスの無機的な音色とパーカッションのループが前面に押し出された、淡くて切ないサウンドだ。
11IN PIECES
エレクトリック・ギターの軽快でリズミカルなカッティングとグルーヴィなドラム・ループの絡みが爽快なロックンロール・ナンバー。ルート音を黙々と鳴らし続けるベース・ギターがバンド・アンサンブルの足元をしっかりと支えている。
12THE LITTLE THINGS GIVE YOU AWAY
ニューオリンズを襲ったハリケーン・カトリーナの大惨事をモチーフに作り上げられたアコースティック・バラード。現地の人々の悲しみとアメリカ政府の対応のまずさへの批判が込められた、社会性の強いメッセージ・ソングだ。
13FAINT
“サマーソニック 06”での演奏を収録したライヴ・ヴァージョン。日本の観客の熱狂的な声援に応えるかのように、オリジナル・ヴァージョン以上の異様なハイテンションで押しまくる迫力満点のバンド・アンサンブルだ。