ミニ・レビュー
英ブリストル出身のシンガー、マルチ・プレイヤーのデビュー作。ドラムンベース、ヒップホップ、ソウルといったクラブ・ミュージックの要素を取り込んだオリジナリティのあるビート。しかもメロディ重視で甘いヴォーカルを聴かせる点も魅力的だ。
ガイドコメント
UKブリストル出身のシンガー兼マルチ奏者、ベン・ウェストビーチのデビュー・アルバム。ジャイルス・ピーターソンが送り出す、ファンクやジャズからハウスまでを採り入れたフロア向けの逸品だ。本作は初回限定のスペシャル・プライス盤。
収録曲
01WELCOME
“トーキング・ラウド”のジャイルス・ピーターソンに見出され、その新設レーベル“ブラウンズウッド”第1弾となるデビュー作の1曲目。語りとピアノをフィーチャーしたゆったりとした曲で、都会的で洗練されたアルバムのイントロダクションとなっている。
02SO GOOD TODAY
小気味良いギターとファンキーなドラムのビートを中心にした1stシングル。シンプルなサウンドの中を自由に泳ぐような、甘くソウルフルなヴォーカルが何とも気持ちがいい。ジャズのテイストもうまく取り入れた都会的な雰囲気も最高だ。
03GET SILLY
ベン・ウェストビーチ流ダンス・ミュージックといった感じのノリのいい曲。とはいえ、あくまでメロディにこだわった適度なポップさがある。ヴォーカルとサウンド、どちらにも偏らないバランスの取れた演奏は、彼ならではだ。
04GET CLOSER
クラシックも含め幅広い音楽的な素養を持つ彼が、ソウルとドラムンベースをメインに作ったリズミックなシングル。スピード感もたっぷりで、持ち前の甘くソウルフルなヴォーカルが、さらに情熱的になっているのが印象的だ。
05BRIGHT FUTURE
『ウェルカム・トゥ〜』収録のインスト。管弦楽器や原始的な太鼓風のドラムの響きなどのユニークなサウンド構成は、アンビエントな作風が詰まったニューウェイヴの歴史的コンピ『ブリュッセルより愛をこめて』をどことなく思い出させる雰囲気だ。
06NOTHING ELSE
浮遊感のあるエレクトリック・ピアノや繊細なコーラスをフィーチャーした心地よいリズムの曲。たまらなくスウィートだが、ダンス・ミュージックとしてもじっくりと耳を傾け、楽しむことができる。その両面を兼ね備えた彼ならではの演奏が見事だ。
07GOTTA KEEP ON
甘くソウルフルなヴォーカルをたっぷりと聴かせるナンバー。巧みなサウンド作りにも注目が集まるが、これはメロディを最も大切にするという彼の姿勢を感じさせる演奏だ。ソウル・シンガー的な魅力が味わえる。
08TAKEN AWAY FROM
去って行った恋人をテーマにしたラブ・ソング。同じ詞の繰り返しが多いためか、どことなく呪術的なムードも漂っている。もちろんメロディは明確で印象的だが、ある種の陰りも感じさせるのが、興味深いところだ。
09GLEY SKIES
アルバム『ウェルカム・トゥ〜』収録のインスト曲。タイトルを頭に入れながら耳を傾けると、確かに黒い雲がのっそり移動するさまが思い浮かぶようなリズムで、ピアノは時折落ちてくる小雨のようにも聴こえる。どことなく悲しい雰囲気を漂わせる曲だ。
10STOP WHAT YOU'RE DOING
アルバム『ウェルカム・トゥ〜』での憂鬱なインストに続くのは、一転してスウィング・ジャズ風のノリノリの曲。しかも拍手も入っていてライヴのような演出だ。エンターテイナーぶりも発揮し、その多彩さに改めて驚かされる。
11DANCE WITH ME
メリハリの利いたドラムンベース調のリズムがパワフルに刻まれるナンバー。どこか懐かしい響きのストリングスをフィーチャーすることで、新鮮な感覚を生み出している。ジェイムス・ブラウンのような高揚感が体感できる……といったら言い過ぎだろうか。
12HANG AROUND
タイトに刻まれるドラム・ビートの上を流れるメロディが美しい、ジャミロクワイを彷彿とさせるサウンドが魅力のダンサブルなソウル・チューン。ベンの浮遊感が漂うファルセットを交えたヴォーカルが、心地よさを与えてくれる。
13PUSHERMAN
ベース・ソロ、パーカッション、ヴォーカルによるシンプル極まりない曲だが、メロディ構築に重きを置くベンだからこその完成度の高さだ。少ない要素でもしっかりリズムを生み出すセンスの良さがうかがえる、ユニークなだけに留まらない愛すべき演奏だ。
14IN / OUT
木琴か親指ピアノのような楽器を軸としたユニークなナンバー。「ハー、ハー」という息を吹きかける声やアフリカ民族音楽風のコーラスをフィーチャーするなど、彼のアイディアの豊富さには驚かされるばかりだ。
15BEAUTY
アルバム『ウェルカム・トゥ〜』の本編ラストとなる、子供の声をフィーチャーしたインストゥルメンタル。全体としてはややひんやりした感触の近未来的なサウンドで、ヴィジュアル的な世界観を感じさせるカラフルな仕上がりだ。
16I WANT TO BE AROUND YOU
アルバム『ウェルカム・トゥ〜』に収録のボーナス・トラック。ドラムンベースのリズミックな響きにレイジーなギターのリフがミックスされたダンス・ナンバーだ。だが、やはりメインとなるのはメロディとヴォーカル。インスト曲と明確に異なるコンセプトを持っていて頼もしい。
17SO GOOD TODAY
アルバム『ウェルカム・トゥ〜』にボーナス・トラックとして収録の、UKでヒットしたシングルのリミックス・ヴァージョン。サウンド軸をダンサブルへと移行させ、気軽に楽しめる濃度に。耳で鑑賞するより体感したいというリスナー向きの演奏だ。
仕様
エンハンストCD内容:ハング・アラウンド (ビデオ)