ミニ・レビュー
重厚なサウンドでデビュー前からフジロックなどで評判を呼んだライヴ・バンドの6枚目のオリジナル・アルバム。疾走感あふれるシングル「声」と神秘的な雰囲気を持ったシングル「美しい名前」ほか、映像が目の前に浮かぶような全12曲を収録。
ガイドコメント
セルフ・タイトルとなった、THE BACK HORNの6thアルバム。シングル曲「声」や「美しい名前」などを収録。“悲しみを見つめて、希望を描く”彼らの世界観が全開だ。
収録曲
01敗者の刑
6thアルバム『THE BACK HORN』のオープニング・ナンバー。不穏なムードが渦巻き、強烈に歪ませたサウンドがズシリとのしかかる。突き刺さるようなヴォーカルとヘヴィなグルーヴが相まって、狂乱の世界へ昇天。
02ハロー
彼らにしては珍しい、シンプルなアレンジのミディアム・チューン。果てしなき到達点を見据えながら歌うヴォーカル、それを引き立てるアコギやキーボードが心地良い。孤独と温かさが絶妙にブレンドされた一曲だ。
03美しい名前
緩急の効いた展開に、彼らの演奏力の妙が光る一曲。恐いくらいにひんやりとした空間の中で紡がれるリリックのひとつひとつが、痛切に胸に突き刺さる。やがて一気に盛り上がる壮大なサビが印象的だ。
04舞姫
ジャジィなギター・リフ、がなりあげるヴォーカル、変拍子に絡むハンドクラップ。彼らの特異なアレンジ・センスが、妖艶かつクレイジーに発揮されたナンバー。ハード&プログレッシヴがごった煮となったサイケデリックな劇場のようだ。
05フリージア
強大な悲しみを背に歌われるミディアム・チューン。美しく妖艶なアルペジオが舞っていたかと思えば、サビでは鬱屈とした叫びがあてもなくさまよい出す。サウンドに漂うリアルな質感がたまらない。
06航海
タイトルからもうかがえるように、人生という終わりが見えない旅について歌ったナンバー。時に静謐に、時に強靭に展開するメロディは、緩急自在。その決意をドラマティックに表出しながら、壮大な音像が紡がれていく。
07虹の彼方へ
ジャジィで鋭利なギター・リフや変則的なリズム・パターンによるサウンド・メイクは、彼らならではのもの。哀愁を引き連れた疾走の中に、どこか懐かしい歌謡テイストが溶け込む不可思議さも妙味だ。独特の感性が全開に弾けた一曲。
08シアター
映画館でのあるワンカットを切り口に人生模様を描くミディアム・チューン。なにげない日常の場面をさりげなく壮大な視点でとらえたリリックが、とにかくユーモラス。ファンタジー映画に没頭しているような気分が最高にたまらない。
09負うべき傷
意味深なタイトルが彼ららしく、そのメッセージもやはり痛烈だ。“存在の耐えられない軽さ”を綴ったかのようなもがきや虚無感が全篇に渦巻く。乾いたギターと図太く重いベース・ラインは、容赦なくさらなる孤独へと陥れるようだ。
10声
疾走感あふれるハード・ドライヴィング・チューン。シンプルなパワー・コードとミュートした歯切れの良いギター、ゴリゴリとしたベース・ラインやステディなドラムスと、無骨ながらも聴く人の心に迫ってくる音塊が魅力。ブリティッシュ風のメロディも印象的だ。
11理想
彼らには珍しい爽やかなギター・ロック・ナンバー。持ち味の重厚なグルーヴが、陰ではなく陽に傾倒しているのが新鮮。疾走感も心地良く、シングル・カットされていても不思議ではないキャッチーさがある。
12枝
6thアルバム『THE BACK HORN』のラストを飾るのは、人間の生命の輪廻を歌った壮大なエンドロール。ヴォーカル山田の絶叫めいた魂の声は鳥肌もの。それに呼応するドラマティックな演奏も見事だ。