ミニ・レビュー
「千の風になって」で新井満の名前を初めて知った人もいるだろうが、彼は28歳のときに歌手デビューを果たしており、現在まで約30年ものキャリアを重ねている。そして今回、大ヒットの産物というべきか、過去4枚のアルバムをリリース。デビュー作の組曲『月山』は作家・森敦の同名小説にそのままメロディをつけて歌ったもの。フォーク歌謡的なサウンドをバックに、確かな歌唱力を聴かせるその真摯なたたずまいは、奇の衒いや迷いなど無縁。また『アルファベット・アベニュー』では神戸をテーマにロマンティックで感傷的な面を押し出し、別れの曲ばかりを集めた『アデュー』には化粧品のCMでヒットしたシングル「ワインカラーのときめき」を収録。リゾート感あふれる『マンダーランド』は、タイトル・センスといい、大滝詠一作曲のせいか歌い方もどこか大滝風な「消防署の火事」といい、不思議なユーモアを感じさせる一枚。