ミニ・レビュー
4年ぶりとなるオリジナル・アルバム。鹿児島への想い、家族への感謝、普遍性を持ったラブ・ソング。すべての楽曲の根底に流れる愛情が、真摯に、時として泥臭くひたむきに伝わってくる。それが強く胸を打つ。ライヴDVD『桜島』のEDロールのみで聴けた「夕焼けの歌」も収録。
ガイドコメント
約4年ぶりとなるオリジナル・アルバム。2006年4月に他界した父親の足跡をたどる旅から生まれた作品で、“人間愛”にあふれた仕上がりだ。CD化が待望されていた「夕焼けの歌」などを収めた、長渕ワールドが全開の一枚となっている。
収録曲
01鹿児島中央STATION
以前は「西鹿児島駅」だった「鹿児島中央駅」をテーマに、自らのルーツを辿るように、変わりゆく故郷への想いを熱く激しくシャウト。その叫びとメッセージが、かき鳴らされるアコギの音とともに胸を直撃する。
02Fighting Boxer
長渕の曲を入場曲に使っていた元プロボクサー・戸高秀樹への応援歌だろうか。アルバム『Come on Stand up!』に彼の名前がクレジットされている。サキソフォンが軽快に躍動する、アツく突き抜けたナンバー。格闘技ファンも必聴!
03いけ!いけ!GO!GO!
ヘコんでいるすべての人に送る軽快なノリの長渕流応援歌だ。反骨精神と小さじ一杯ほどのさりげないユーモアを感じさせるところがいい。普遍性を持ったメッセージが彼の言葉と声で届けられると、いっそう説得力も増す。
04愛して
彼が紡ぐラヴ・ソングは哀切と潔さに彩られ、男と女のつながりの深さを垣間見せる。繰り返される“愛して”という言葉に刻み込まれた想いが、全編に拡がっている。美しくも儚い色を映し出すスロー・バラードだ。
05観覧車
幸せ感に包まれたメロディアスなラヴ・ソング。長渕の淡々としたヴォーカルに鍵盤の柔らかな音とキラキラした女声コーラスが絡み、ほのぼのとした世界を作り上げている。優しくて泣けてくる、そんな真摯な愛がここには確かにある。
06Run&Dash
日本語と英語が入り乱れ、軽快に展開されるロックンロールだが、長渕が歌うと武骨で硬質なものに聴こえてしまうところが面白い。アウトロに至るまでの英詞の連打やクラップも入り、パーティ気分にさせてくれる。
07レオ
愛犬「レオ」への愛情をストレートに表現した、落ち着いた雰囲気のスロー・バラード。パーソナルな内容だが、聴き手が自分の大切なものへの想いと置き換えれば、きっと優しい気持ちになれるはず。レオはアルバム『Come on Stand up!』のブックレットにも登場。
08神風特攻隊
神風特攻隊を美化するわけではなく、その精神をヤワになった現代に投下したメッセージ性の強いナンバー。彼のスピリッツを正面から受け止めることで、愛というものの重さを改めて知ることができる、きわめて“ロック”な一曲だ。
09Tomorrow
シンプルなピアノをバックに歌われる熱さを秘めたAメロ、次第に高揚していくBメロ。そしてストリングスが入ることで、スケール感を増すサビ。揺らぐことのない男女の想いを描く、希望の光に満ちた壮大なラヴ・バラードだ。
10Come on Stand up!
ものすごく悩んでいて、それでもなんとかしなくちゃと思っている者に対する長渕の視線は、限りなく優しい。多くの人を救い、その生きる糧になると思われるメッセージが心に入り込んでくる。彼流のゴスペル・タッチによる愛情あふれるナンバーだ。
11夕焼けの歌
“桜島オールナイトライブ”(2004年)の模様を収録したDVDのエンドロールに流れていたナンバーが待望のCD化。ノスタルジックなアコースティック・ナンバーで、シンプルがゆえにその風景を鮮やかに描き出し、ゆったりとした時間が流れていく。
12鶴になった父ちゃん
父に馳せる想いを、美しすぎるほどのオーケストラの演奏をバックに歌う。強い吸引力を持ったティン・ホイッスルによるイントロは、郷愁を誘う音風景から始まる父と子のストーリー。大切な人に捧げる感涙の“レクイエム”に思わず胸が熱くなる。