ミニ・レビュー
英ロック・バンドの3年ぶりのアルバム(8枚目)。“初心に帰って”というとおり、キーボード類なしのパワフル、ストレートな演奏になった。ギター・ソロもカッコいいし、カーディガンズのニーナ・パーソンとのデュエット「ユア・ラブ・アローン・イズ・ノット・イナフ」、ジョン・レノンの「ラブ・レター・トゥ・ザ・フューチャー」も聴きものだ。
ガイドコメント
約3年ぶりとなるマニック・ストリート・プリーチャーズのアルバム。メロディの良さが際立った中にも、初期を思わせるような勢いと荒々しさが感じられる仕上がりだ。往年のファンにとっても嬉しい一枚。
収録曲
01SEND AWAY THE TIGERS
8thアルバム『センド・アウェイ・ザ・タイガーズ』のオープニング。いきなり重々しい詞で始まるこの曲だが、「原点回帰」を目指すというとおり、歌・ギター・ソロなども含め本来の魅力いっぱいでフレッシュな仕上がり。タイトル曲にふさわしい演奏だ。
02UNDERDOGS
「フリークに捧げる」と歌われるコンパクトな作品だが、彼らの心情がストレートに反映された清々しくパワフルな曲だ。ムダのないサウンド作り、さらに表情豊かで前向きなヴォーカルなども印象的。
03YOUR LOVE ALONE IS NOT ENOUGH
カーディガンズのニーナ・パーソンをフィーチャーし、デュエットしたナンバー。シングルらしいキャッチーなメロディを持った親しみやすい曲で、華のある彼女のキュートな声にぴったり。バンドの新生面を見せたということでも興味深い曲だ。
04INDIAN SUMMER
ギターのアルペジオでスタートするミディアム・ナンバー。バンドの仲間との友情、つまり自分たちのことを歌った3拍子の曲で、重厚なサウンド作りなど、原点に立ち返って再び勢いに乗る彼らの誇らしげな気持ちが伝わってくる。
05THE SECOND GREAT DEPRESSION
ドラマティックなサウンドを聴かせるミディアム・ナンバー。ジェイムスの搾り出すようなエネルギッシュなヴォーカル、美しいコーラス、歌うようなギター・ソロなどが一体となって、聴き手の心を揺さぶる感動的な演奏だ。
06RENDITION
歌詞は政治的だが、スピード感たっぷりな中にキャッチーで爽やかな雰囲気を持った楽曲。ヴォーカルは終始パワフルで、アコースティック・ギターの静けさの中に鋭くギター・ソロが切り込んできたりと、緩急のある引き締まった演奏だ。
07AUTUMNSONG
ストリングスをフィーチャーしたキャッチーなミディアム・ナンバー。何といってもメロディがいい。泣かせるギター・ソロやクイーン風のコーラスもかっこいい。ヴォーカルも喜々として若々しく、名曲と呼べるマスターピースだ。
08I'M JUST A PATSY
歌詞に彼らならではの皮肉、ユーモアが込められた曲。情けない感じで“アイム・ジャスト・ア・パッツィ”とつぶやく瞬間もあるが、全体的には歌、サウンドともにスケールの大きさに圧倒される演奏だ。大人の風格も漂っている。
09IMPERIAL BODYBAGS
ストレイ・キャッツを思わせるロカビリー・タッチのナンバー。歌詞のテーマはイラク戦争などについて触れた重いもので、それにともなってヴォーカルもとてもヒリヒリとしてシリアスなムード。疾走感に加え爆発力がある演奏だ。
10WINTERLOVERS
アルバム『センド・アウェイ・ザ・タイガーズ』の中ではキャッチーな「オータム・ソング」と似たような方向性を持っているが、バラード部分とハードな部分をミックスして個性的な仕上がりに。ギター・ソロとコーラスが絡み合う、感動的なミディアム・ナンバーだ。
11LOVE LETTER TO THE FUTURE
『センド・アウェイ・ザ・タイガーズ』日本盤のみのボーナス・トラック。今回、ボストンといったバンドにもインスパイアされたらしいが、そのためか、アルバム本編とはやや趣の違った、ラジオ向きともいえる快活でメロディアスな曲だ。
12MORNING COMRADES
アルバム『センド・アウェイ・ザ・タイガーズ』日本盤のみのボーナス・トラック。アコギだけをバックにしたバラード・タイプのナンバーだ。ジェイムスの歌いぶりなどは、バラードとはいえピリッとした刺激を効かせて、決して甘くないところがいい。
13SEND AWAY THE TIGERS
アルバム『センド・アウェイ・ザ・タイガーズ』日本盤のみのボーナス・トラック。タイトル・ナンバーをアコギだけで演奏した曲で、印象は一変するが本質は同じという点がヴェテランらしい。聴き応えのあるアコースティック・ヴァージョンだ。
仕様
CDエクストラ内容:Your Love Alone Is Not Enough (ミュージック・ビデオ)