ミニ・レビュー
ソロ・デビュー10周年を記念する豪華ブックレット付きの約3年ぶりのオリジナル・アルバム。バラエティ豊かな楽曲群は、コンポーザーとしての才能をひしひしと感じられる。ゲストに盟友・INORANほか実力派ミュージシャンを迎えた手堅いアレンジも魅力的。
ガイドコメント
シングル「I love you」でのソロ・デビューから10周年となる2007年6月発表のアルバム。存在感のある歌いまわしとメロディメイカーとしての才能が、遺憾なく発揮された充実作だ。
収録曲
01Landscape
ストリングス・アレンジに葉山拓亮、ストリングスにVanilla Moodを迎えた優美なポップ・チューン。全体を支配するストリングスが高貴な雰囲気を醸し出し、普遍的なポップスとはまた違った魅力があふれている。
02誰の為でもなく君に...
ソロとしては約3年ぶり、12枚目となるシングル。高音の伸びが素晴らしい、河村隆一らしいヴォーカルが楽しめるスロー・チューンだ。愛を未来へ、永遠へつなげていきたいというストレートなラブ・バラードが、胸に染みる。
03メルカトルの子孫
アコースティック・ギターのカッティングが印象的なミディアム・ポップ・ナンバー。どこか懐かしさを感じさせるメロディが郷愁を誘う。ベースにオリジナル・ラヴのツアー・メンバーの沖山優司が参加するなど、グルーヴィなリズム隊も魅力だ。
04J.E.1960
伝説のヘヴィ・メタル・バンド、デッド・エンドの足立祐二がギターで参加した、ハード・ロック色の強いミディアム・チューン。アコギとエレキを使い分けたギター・アレンジで、単なるハード・ロックではなく、ポップな彩りを加えたサウンドへと昇華させている。
05Timepieces
アコースティック・ピアノとストリングスだけのイントロから、自然と物語へと導かれるバラード。メジャーで温かみのあるメロディとポジティヴな歌詞がグッと心に染みてくる。ささやきかけるような歌声も魅力的だ。
06恋する花びら
フォーク・ソングのようにシンプルでメロディアスなアコースティック・チューン。河村隆一自らがプレイするアコースティック・ギターが全体のよいアクセントとなっており、よりパーソナルな雰囲気を打ち出している。
07Profile
アルバム『ORANGE』の中ではもっとも短い、小曲のようなワルツ。シンプルなメロディがとても心地よい。名ベーシストの渡辺等が参加し、バックを支えながらも前に出るところは出る“歌伴”のお手本のようなプレイを披露している。
08もう僕は
アコースティック・ピアノをバックにしっとりと歌うバラード。歌詞に「フランス映画」とあるが、ピアノとストリングスを中心としたアレンジは、フランス映画のバックに流れていても遜色がないほどに優美な仕上がりだ。
09Sunset
ギターに盟友INORAN、ベースに元シャバグッチーズの種子田健を迎え、レゲエ風でファンキーなリズムを持ったサウンドを展開。作曲もINORANが担当しており、河村隆一とは異なるサウンド・カラーの違いがおもしろい。
10飛べない鳥
THE THRILLのYUKARIEがサックスでゲスト参加。イントロからフィルイン、オブリガートまでほぼ全編にわたってフィーチャーされ、アルバム『ORANGE』の他の楽曲とは一味違った、ジャズのテイストが感じられるナンバーに仕上がっている。
11夏に降る雪
アルバム『ORANGE』のエンディングを飾る壮大なバラード。とはいえ、リズム隊はリフを刻み続け、いわゆるメロウなバラードとは違った硬派なサウンドとなっている。声が裏返りそうになるほどの熱唱は、まさにラストにふさわしい出来。