ミニ・レビュー
活動休止中のKICK THE CAN CREWのMCであるMCUのセカンド・ソロ・アルバム。2〜4曲目のセツナ・ソングス三部作から名曲「SUMMER CARNAVAL」まで、キャッチーなヒップホップ・ソングのオンパレード。デーモン小暮閣下やQ(ラッパ我リヤ)らが参加した曲も収録している。
ガイドコメント
映画『木更津キャッツアイ ワールドシリーズ』の主題歌や“セツナ系ヒップホップ3部作”などで、ヒットメイカーの仲間入りを果たしたMCUの2ndアルバム。豪華なゲスト陣とともにおくる、にぎやかな一枚だ。
収録曲
01シーサイド・ばいばい (MCU ver.)
主要出演者5人とのフィーチャリング名義でリリースした映画『木更津キャッツアイ』主題歌のMCUヴァージョン。全体的に彼らしいセンチメンタルなサウンドに仕上がっている。リリックは宮藤官九郎、トラックは元電気グルーヴのCMJKが担当。
02BURN (feat.TAS from MADHAND、TSUBOI、KOHEI JAPAN、童子-T)
跳ねるようなファンキー・ビートが前面に押し出されたトラック上で、縦横無尽に回転する5MCのマイクリレー。TAS、TSUBOI、KOHEI JAPAN、童子-Tという豪華な面子による、若さと老獪さが混在するテクニカルなラップ・ゲームが堪能できる。
03SUGAMO-B 弐 (feat.Q)
イントロからピアノをフィーチャーした、ソウルフルでダークなトラックに耳を奪われる。ゲストMCとしてラッパ我リヤからQが参戦。呟くようなスタイルのMCUのラップと男気あふれるQの極太フロウが、絶妙のコントラストを形成している。
04A re-present BMG (feat.MCK)
アフロなパーカッションと跳ねるベース・ラインに乗せて、「レペゼンBMG」が登場。MCKこと株式会社BMGジャパン代表取締役副社長、軽部重信の見事なラップが聴ける、アルバム『A.K.A』に収録の1分弱のインタールード。
05SUMMER CARNAVAL
パーカッションとオルガンが彩るポップな楽曲。回転の速いラップや中盤の派手なスクラッチなど、個性の強いパーツが多く詰め込まれている。サビのコール&レスポンスがライヴでの盛り上がりを予感させる、アッパーなサマー・チューン。
06omoide
アコースティック・ギターのアルペジオが切なく綴る、センチメンタルなラヴ・ソング。“ラップ+メロディアスなサビ”という、メジャーの邦楽ヒップホップ王道パターンがタイトにまとめられている。ストリングスやオルガンなども効果的に用いられ、曲をメロウに引き立てている。
07nukumori
5thシングルは、明日への勇気をくれる応援歌。本人いわく「テーマは旅立ち。旅立つ瞬間、輝いてほしい……」ということで、優しく美しいメロディ・ラインと心に染みるリリックが完成した。
08サヨナラ (album extended ver.)
ハウシーな4つ打ちの上をウワモノとラップが交錯する歌謡ヒップホップのアルバム・ヴァージョン。トラックはクリーンなギターの音色とストリングス。MCUらしいセンチメンタリズムがあふれる、切なくもたくましいラヴ・ソングに仕上がっている。
091973
MCUの生まれた年である1973年をモチーフにしたリリックがユーモラスな楽曲。タイトなドラム・ビートとキーボード中心のシンプルなトラックであるがゆえ、個性的なリリックが引き立っている。中盤のフックやラストの語りなど、演出もユニーク。
10The beginning
不穏なサウンド・コラージュで構成された1分半のインタールード。シンセのメロウなリフから一転、インダストリアルなデジタル・リフに合わせて野太い英語の語りが挿入される。アルバム『A.K.A』の次曲「Hey Johnny」へのイントロダクション的な内容だ。
11Hey Johnny
イントロからハイテンションでかき鳴らされるディストーション・ギターに度肝を抜かれる。渇いた8ビート、しゃがれたシャウト、エフェクトを効かせたサビのヴォーカルなど、ハードロック的なギミックで構成されたアッパー・チューン。
12HERO
ギターのサステインによるダークなイントロから、歪んだ硬質なギター・リフが浮上。不穏なラップが語り上げる退廃した世界観。ヘヴィ・メタリックなうねりのあるトラックとMCUのラップ&ヴォーカルは、意外にも好相性だ。
13Under My Martial Law (feat.デーモン小暮閣下)
『A.K.A』の裏目玉。再生と同時に耳をつんざく、デーモン小暮の高音シャウト。ツーバス、速引き、ドンシャリと、ヒップホップの領域を軽く飛び越えたド派手な演出の数々。デーモンの美声によるサビはもちろん、元イエローモンキーのヒーセのベースにも注目。
14A.K.A〜僕がいればいいと想う〜
オルゴールのような静けさをたたえた、アルバム『A.K.A』の1分弱のアウトロ。短い楽曲ながら流麗なトラックメイキングと、意味深なリリックが独特の存在感を放っている。落ち着いた曲調の中にも、次のステップへの明確な意思が感じ取れる。