ミニ・レビュー
2007年4月発表のシングル「花」で“地上で最も優しい歌声”という圧倒的な評価を確実なものとした中孝介が創りあげたメジャー1作目。この若き島唄の歌い手が、河口恭吾、いしわたり淳治といったミュージシャンたちとの共感から生みだした純粋なうた世界の凄さ。
ガイドコメント
“地上で最も優しい歌声”と評される男性シンガー、中孝介の1stアルバム。森山直太朗や御徒町凧、河口恭吾、いしわたり淳治らとともに作り上げた作品で、まさに珠玉の楽曲集と言うにふさわしい一枚となっている。
収録曲
01花
ファルセットを交えた優しい歌声で、“人は今、大地を強く踏みしめて、それぞれの花心に宿す”とおおらかなメッセージを送る「さつま白波」CMソング。御徒町凧・作詞、森山直太朗・作曲のバラード・ナンバーだ。
02サヨナラのない恋
河口恭吾が詞曲を手掛けた、切なくて繊細な楽曲。透明感のあるピアノや重厚なストリングスなど、優しく儚い輝きを持った複雑かつシンプルなサウンドと彼の絶品ヴォーカルが、感動的なまでの融合をみせている。
03それぞれに
「そよ風が告げる春の訪れ」「黄昏が告げる秋の訪れ」と、季節を繊細に切り取った歌詞が、ゆったりとしたメロディやヴォーカルに美しく溶け合うスロー・ナンバー。豊かな四季がある国に生まれ、そして中孝介というシンガーに出会えた幸せを実感してほしい。
04波の物語
どこか懐かしいようなゆったりとしたメロディと民族楽器やシンセサイザーの幻想的な雰囲気のバランスが絶妙な、ミディアム・バラード。温かさと強烈な個性をあわせ持ったヴォーカルもあいまって、シンプルでありながら唯一無二の世界を生み出している。
05Goin' on
スリリングなフレーズを奏でるアコースティック・ギターとずっしりとしたウッド・ベース、そして妖艶なピアノの音色が生み出す絶妙のうねりが最高にクールな本格R&B。エフェクトをかけたヴォーカルやラップなどの新しい試みも新鮮だ。
06Ave Maria
聖歌のスタンダードのカヴァー。限りなくア・カペラに近いアレンジで彼の声の魅力を余すところなく堪能できる序盤と、ピアノのアルペジオや荘厳で神秘的な雰囲気のシンセサイザーが印象的な終盤。そのコントラストが鮮やかだ。
07ひとさし指のメロディ
郷愁を誘うピアノのリフレインから始まるイントロが強く印象に残る、正統派バラード。ゆったりと、そしてしっとりと聴かせるメロディが、儚い歌詞と彼の優しいヴォーカルを最大限に引き立てている。間奏の情熱的かつ郷愁的なギター・ソロも素晴らしい。
08真昼の花火
「真昼の花火」という、印象深いモチーフを用いた歌詞は、いしわたり淳治(ex.SUPERCAR)によるもの。ノスタルジックにして切ない夏の風景にリアルな手触りを与える“歌”は、聴く者をどこか懐かしい空気で包み込む。
09恋の栞
幻想的なオルガンの音色が特色の、スローでポップなR&B。タイトなリズムと浮遊感の漂う魅惑のサウンドに、抜群の歌唱力と唯一無二の表現力を持つ彼のヴォーカルが絡み合い、絶妙なうねりを生み出している。
10思い出のすぐそばで
運命に流されながらも、それでも自分の足で歩いていこうする人間への愛しさを描き出した、ミディアム・バラード。奄美の伝統的な音楽の影響を感じさせるヴォーカルが、新しい形のポップスとして見事に昇華している。
11星空の下で
ゆったりとしたテンポ、オルガンやコントラバスのほのぼのとしたサウンドに心温まるポップ・チューン。ギターやピアノのファニーなフレーズや魅惑的なコーラスが、曲の雰囲気を盛り上げる。彼自らが手掛けた歌詞にも注目。
12家路 (Acoustic Version)
時間の流れを忘れるようなゆったりとしたテンポと、そっとささやきかけるような美しいピアノの音色が心地いい、癒しソング。子守唄のように優しい曲調とシンプルさを追求したサウンドにより、彼のヴォーカルの魅力が最大限に発揮されている。