ミニ・レビュー
ビリー・コーガンとジミー・チェンバレンを中心に再結成したスマパン、7年ぶりのアルバム。ビリーの轟音ギターとジミーのヘヴィなドラムを軸にグイグイ突進しつつ、その中に切なさも滲ませた楽曲はスマパンならでは。待った甲斐のある復活作といえる。
ガイドコメント
2006年4月に再結成を発表したオルタナティヴ・ロック・バンド、スマッシング・パンプキンズの約7年ぶりとなるオリジナル・アルバム。時を経ても色褪せない普遍的なサウンドと世界観は本作でも健在だ。
収録曲
01DOOMDAY CLOCK
ジミー・チェンバレンの重くタイトなドラムに導かれ、ビリー・コーガンがディストーションを効かせたメタリックなギターを奏でる。終末観を漂わせた歌詞とともに、90年代初頭のグランジ全盛時のスマパン復活を告げる劇的なナンバー。
027 SHADES OF BLACK
愛情と憎悪、歓喜と苦悩、躁と鬱、善と悪、支配する者とされる者……。一人の人間の中に存在する相反する想いを、狂おしいラヴ・ソングに喩えて綴ったナンバー。エモーショナルなサウンドと激情ほとばしる詞が、ピッタリとマッチしている。
03BLEEDING THE ORCHID
イントロのコーラスにハッとさせられるミディアム・チューン。メロディアスなフレーズを奏でるビリー・コーガンの重く垂れ込めるようなギターと諦観すら感じさせるヴォーカルが、詩的な美しさを漂わせた妖しい詞を際立たせている。
04THAT'S THE WAY (MY LOVE IS)
メランコリックな悲しみをたたえた、穏やかなミディアム・ナンバー。特定の人へ向けたというより、もっと広い普遍的な愛が描かれていて、スマパンの成長が伝わってくる。ジミー・チェンバレンのタイトなドラムが全体を引き締めている。
05TARANTULA
シャープなリフを次々に繰り出すビリー・コーガンの奔放なギターが縦横に暴れまわり、ズシッと響くリズム・セクションがそれを支える。絶頂期のブラック・サバスを彷彿とさせるヘヴィ・メタリック・チューン。
06STARZ
ボトムの低いメタリックなサウンドの中にも、どこかフットワークの軽さを感じさせるナンバー。ビリー・コーガン&ジミー・チェンバレンが歩んだ苦難の道のりを想起させる詞には、ロック・ファンを思わずニヤリとさせる言葉がちりばめられている。
07UNITED STATES
不穏な気配を感じさせるジミーのトライバル風ドラムに導かれて幕を開ける、混迷のアメリカ社会へ向けた革命讃歌とでもいうべき、ヘヴィかつカオティックなナンバー。変幻自在に空間を支配するビリーのギターが炸裂する一曲。
08NEVERLOST
80年代のブリティッシュ・ニューウェイヴを思わせる、ロマンティックかつメランコリックな雰囲気を持ったメロディアスなミディアム・チューン。文学的な美しさをたたえた愛の詞を歌う、ビリーの哀感込めたヴォーカルに惹かれる。
09BRING THE LIGHT
アコースティカルなイントロが、かつての名曲「1979」をどことなく思い出させるナンバー。ラウドな面とメロウな面、スマッシング・パンプキンズの二面性がひとつの楽曲に違和感なく溶け込んでいる。ポジティヴな詞にも注目。
10(COME ON) LET'S GO!
ビリー・コーガンが影響を受けたパワー・ポップやニューウェイヴのポップかつメロディアスな要素を、スマパン流のヘヴィネスで消化・吸収、咀嚼した感じのナンバー。疾走感と重量感をあわせ持ち、コーガンの軽快なヴォーカルも実にイイ感じだ。
11FOR GOD AND COUNTRY
深く沈みこんでいくようなダークな感覚に彩られた、ビリー・コーガンのソロ作品に通じるニューウェイヴ風ナンバー。洗練されたアレンジのサウンドをバックにして、キリスト教色の強い詞をじっくり歌い込む姿に、スマパンの成長がうかがえる。
12POMP AND CIRCUMSTANCES
勇壮な曲名とは裏腹に、メロディアスな中に悲壮感すら漂わせた哀愁がにじむ、アルバム『ツァイトガイスト』本編ラストを飾るスロー・ナンバー。悟り切ったようなある種スピリチュアルな詞を切々と歌う、ビリー・コーガンのヴォーカルが胸に沁みる。
13DEATH FROM ABOVE
神や死をモチーフにした美しくも悲しい詞と、吹っ切れたような明るさすら感じさせる軽快なメロディとサウンドやヴォーカルがアンバランスな魅力を醸し出す。光と闇、清濁をあわせのむ、ある意味新生スマパンを象徴するナンバーだ。