ミニ・レビュー
日本のレゲエ・シーンに身を置いてきた彼だが、軸足はかなりヒップホップの方向に傾いているのでは。音楽はどこかで接し合って、明確な境目はないのかもしれないが、クラブ・ミュージック、ダンス・ミュージック的要素が色濃く感じられる2年ぶりのアルバム。
ガイドコメント
大阪出身のレゲエ・アーティスト、RYO the SKYWALKERの2007年7月発表のアルバム。ダンスホール・ナンバーを中心に、ロック/ヒップホップ・アーティストとのコラボなどを収録。ヴァラエティに富んだ作品だ。
収録曲
01outer-net
進化した日本語を体感させてくれる曲。ダンスホール・サウンドに一歩もひかないフロウは空前絶後。テクニック、存在感、センス、どこを取っても向かうところ敵なしといった感じのパフォーマンスだ。韻を踏むだけで青息吐息の諸君はこの曲に学ぶべし。
02HI-KING
チープな音と生っぽい音がほど良くブレンドされたシンプルなダンスホール・サウンド。RYO the SKYWALKERの天性のレゲエ声が高らかに響きわたる、底抜けに明るいサウンドだ。寒い冬に暑くなりたかったら、この曲がオススメ。
03ラッキー・ボーイズ (&マボロシ)
ライムスターのMummy-Dとスーパー・バター・ドッグの竹内朋康によるMC+ギターの異色ユニット“マボロシ”が参加。スライドをちりばめたギター・サウンドとヨコのりビートの混ざり具合が、抜群の出来だ。
04No time fi waste
「日本人がダンスホールなんて無理」という御仁にはこの曲でぶっ飛んでいただきたい。レゲエの基本をすべて血肉に染み込ませた男がパフォーマンスする、太いビートのダンスホール・サウンドに物言いはつかない。踊らなきゃ、損だ。
05おはようJAPAN (&トータス松本)
こんなピースフルな音に出会えるなんて幸せだ。生楽器のシンプルなレゲエがひたすら楽しい。圧倒的な存在感を誇る、フィーチャリングのトータス松本も飲み込んでしまうような、RYO the SKYWALKERのパワフルさが際立っているナンバー。
06For 10 Years
水しぶきのようなホーンとリズム・ヒットがダビーにアレンジされたミュート・ビート・サウンド。グルーヴの神様、朝本浩文プロデュースの奥行きを感じさせる音作りが冴えわたっている。RYO the SKYWALKERの大阪仕込みの高速フロウも超強力。
07ONE-DER LAND〜Interlude〜
ネリー・ファータドのマネージャーにスカウトされたという経歴を持つジャマイカン女性シンガー、クリス・ケリーが、ダイアナ・ロスのような歌唱で艶やかに歌う小作品。RYO the SKYWALKERが抑えめにパフォーマンスしている演出が優秀だ。
08晴れわたる丘
ジャパニーズ・レゲエ界を牽引してきた実力者が放つ、渾身のラブ・ソング。切ない想いの中にも、遊び心を忘れないライミングはさすが。パワフルな声とはアンバランスに思えるメロウなサウンドとの相性もバッチリ。まさに晴れわたる丘で聴いたら最高に気持ち良さそうなナンバーだ。
09Instru-Men (&AFRA)
RYO the SKYWALKERとヒューマン・ビートボックスのAFRAの丁々発止が楽しい。さまざまなヒット曲のフレーズをリズムとともに繰り出すAFRAのパフォーマンスは多彩だ。楽器や機材がなくても、立派に音楽が成り立つことを実証している。
10Fight Music
ヒップホップ界から馳せ参じたDJ HAZIMEによるダンス・クラシックの匂いがプンプンするトラックが、RYO the SKYWALKERのフロウにより輝きを与えている。ラップの新しい世界とも言えるが、ここまでくるとサウンド全体が革新的だ。
11心・技・体 (&BOXER KID、TAKAFIN、JUMBO MAATCH from MIGHTY JAM ROCK)
大阪出身のレゲエ・ユニット、MIGHTY JAM ROCKからBOXER KID、TAKAFIN、JUMBO MAATCHを迎えた強力ダンスホール・サウンド。同郷のマイクリレーが生み出す熱はことさら熱く、どぎついほどだ。
12Maching For Freedom
打ち込みを全面に施したダンスホール・レゲエ・ナンバー。関西弁の遊び心あふれるライミングとパワフルなヴォーカルは、圧巻の一言。「やっとオレらに時代が追いついた」という詞は、ブーム以前からレゲエを盛り上げてきた彼の本音かもしれない。
13忘れておしまい
AOR/シティ・ポップス系シンガー、ケン田村が80年代に歌った名曲のレゲエ・アレンジ。RYO the SKYWALKERが珍しく歌っているが、普段のパフォーマンスと変わらない切り口で無骨に名作に挑んでいる。
14Solid Ground〜Bingi 2007〜
トラックだけ聴けばポップ・ソングだが、RYO the SKYWALKERの歌唱によってレゲエ魂が吹き込まれている。洗練されたレゲエ・ニュー・ミュージックといった感じだ。ハイセンスなシンセ・アレンジと感受性豊かなリリックに、心奪われる。
15光りの海へ (&bird)
birdが変幻自在なヴォーカルで曲に潤いを与える、さわやかでダビーなレゲエ・サウンド。男気あふれるRYO the SKYWALKERが歌うラヴ・ソングは湿っぽくなく、ひたすら爽快だ。タイトルどおり、サウンドがキラキラ光っているように聴こえる。