ミニ・レビュー
Def TechのMicroにとって初のソロ・アルバム。SPECIAL OTHERS、Yoshiki of 姫神、伊藤由奈などの幅広い人脈との共演もある作品は、ナチュラルな姿勢を湛えたオーガニック・サウンドをカラフルに発色させながら、コンセプトである小宇宙を作り上げている。
ガイドコメント
Micro(Def Tech)の2007年8月発表のアルバム。名取香りや光永亮太ら豪華なゲストを迎え、幅広い音楽性を披露している。飾らないスタイルを貫きながらも、ポップで親しみやすいサウンドが満載だ。
収録曲
01Cruzin'
ファンキーなベース・ラインとエレピのリフがたくましく響くトラック。清涼感のあるMicroのヴォーカルで歌われるポジティヴなメッセージが胸に刺さる佳曲。アコギも取り入れられているが、不思議と硬質なヒップホップ・サウンドの方が印象に残る。
02Cuz (feat.Lafa Taylor)
アフリカンなパーカッションのボトムが前面に押し出された肉感のあるトラックに、Lafa Taylorによるワイルドなラップが絡む情熱的な楽曲。英語と日本語のリリックがスムースに交錯するヴォーカル・パートは、Def Tech時代からの彼の得意とするところ。
03“HANA唄”
数本のアコースティック・ギターが流麗なリフを構成する、涼しく悲しげなトラックが白眉。悲しみを経た上でのポジティヴさが垣間見える、深みのある歌詞が祈るように歌われる。間奏で取り入れられる口笛の音など、オーガニックなサウンドが印象的だ。
04夏の花 (feat.SPECIAL OTHERS)
SPECIAL OTHERSをゲストに迎えたサマー・チューン。ギターが単弦で奏でる優しげなリフ、控えめなドラミングなど、トラック全体が柔らかなエネルギーに満ちている。幼い頃からの成長が歌われる、Microのリリックとの相性も抜群だ。
05Dub Song of 16 Bars (feat.PJ)
タイトルどおり、トラック全体にダブ処理が施されたダウナーなレゲエ・チューン。社会性のあるリリックとの相性も良い。PJ(Dubsensemania)によるパートでは本格的なレゲエのフロウが取り入れられ、Microのアーティストとしての懐の深さを改めて感じることができる。
06Why not? (feat.名取香り)
寂しさをたたえたアコースティック・ギターが爪弾かれ、アップ・テンポなドラミングに艶を添える。名取香りによるセクシーなR&BテイストのフロウとMicroの素朴なヴォーカルが意外にも好相性な、官能的な真夏のデュエット。
07NOENA (feat.Yoshiki of 姫神)
神秘的なサウンドスケープが全編を支配する、壮大なインスト・トラック。姫神のYoshiki(星吉紀)の幻想的なシンセサイザーが大胆にフィーチャーされ、Microの新たな世界観を創り上げている。
08Eddie would go
音数を抑えたノンビートに近いドラム、アコースティック・ギター、美しいシンセのフレーズが、小波の立つ静かな海のような表情を見せる佳曲。そのトラック上でMicroが自由奔放にポエトリー・リーディングをするという、オーガニックなサーフィン賛歌だ。
09Mic Doesn't Lie (feat.Tarantula (Spontania))
Microのヒップホップ・サイドが露わになったラップ・チューン。アコースティック・ギターとドラム・マシンとの組み合わせは、もはや彼の真骨頂と呼べるかもしれない。Tarantulaとの激しいマイクリレーは、ポジティヴで力強いメッセージを放っている。
10Apple Pie (feat.L-VOKAL)
ジャジィなピアノを大胆に取り入れた、セクシーなトラックが耳に残る。ダウナーな韻を踏むゲストのL-VOKALと儚げなMicroのフックが形作るラヴ・ソング。メッセージ性のあるリリックが、シンプルな楽曲にひねりを加えている。
11Discoteque '80s
ファンキーなホーンとカッティング・ギター、ゴージャスな女性コーラスと、文字どおり80年代ディスコ・サウンドのディテールを踏襲したトラックが印象的。Microのヴォーカルは一抹の知性をたたえ、不思議な落ち着きのあるダンス・ナンバーに仕上がっている。
12Heal (feat.伊藤由奈、WISE、PJ、BIGGA RAIJI and Primary Color Allstars)
伊藤由奈、WISE、PJ、BIGGA RAIJI and Primary Color Allstarsと豪華過ぎるゲスト陣を迎えた大胆な歌モノ。トラックはアコギとドラム・マシンのシンプルなものだが、その上を高揚感のあるマイクリレーとユニゾンが彩る。
13After the Laughter (feat.光永亮太 and 光永泰一朗)
光永亮太と光永奏一朗をゲストに迎えたアルバム『Laid Back』のラスト・トラック。伸びやかな男性ヴォーカルによるデュエットが、オーガニックでナチュラルな表情を形作る。アルバムの最後を飾るにふさわしい、希望に満ちあふれた優しい楽曲だ。