ミニ・レビュー
大ヒットしたデビュー作から2年、18歳になってのセカンドは外見も力量も成長著しく、制作陣も売れっ子から新進まで鉄壁の布陣。前作からも見て取れた歌への真摯な取り組みは、健やかなポップ性を保ちながら確実に実を結んでいる。Ne-Yoの好敵手だ。★
ガイドコメント
ヒット・シングル「ウォール・トゥ・ウォール」を含むクリス・ブラウンの2ndアルバム。リリース当時若干18歳の彼が、フロア向けの極太チューンやメロウなR&Bなどで魅了している。
収録曲
01THROWED
裏打ちと表打ちのリズムが交錯する裏切りビートが、恐ろしくダンスがうまいクリスにバトルを挑んでいるようで楽しい。聴いているだけでダンスを観ているような錯覚を感じさせてくれる、クリスならではの奥行きのある曲だ。
02KISS KISS
同じ音階で展開する歌メロに対してフレーズが動いていくトラックが、インテリジェンスにあふれるT-PAINのプロデュース作品。ハイ・ペースで全米NO.1にかけあがった勢いを感じる“ヒット曲の中のヒット曲”といった感じのサウンドだ。
03TAKE YOU DOWN
クリス・ブラウンはメロウもしっかりこなすんだ!! と叫びたくなるほどにしっとりとしたサウンド。ブレーキのかかったヴォーカルがリズムそのもの、といった雰囲気で激しい抑揚をもって迫ってくる。奇麗に歪んだギターも曲の切なさをうまく演出。
04WITH YOU
R&Bの香りをいただきながらもアコースティック・ギターがすがすがしい、万人受けするポップスだ。マイケル・ジャクソンの再来と称されるクリスのポテンシャルが、余すところなく発揮されている、ジャンル分け不可能の快心作。
05PICTURE PERFECT
ウィル・アイ・アムのプロデュースらしい、めまぐるしい音の洪水といった感じのニュータイプR&B。ウィル作品の必修科目であるラップをクリスがしっかりこなしている。ブラック・アイド・ピーズの作品よりも一つ上を行く感じの、かっこいいサウンドだ。
06HOLD UP
アウトキャストのビッグ・ボーイのラップで幕を開けるダビーなサウンド。クリスの行儀良さとビッグ・ボーイの暴れん坊ぶりが好対照で楽しい。サビで歌われる「GENUINE」がヒット曲「PONY」のベース・サウンドの流用の種明かしになっていて面白い。
07YOU
リアーナの「アンブレラ」、J.ホリデイの「ベッド」で名をあげたLOS・ダ・マエストロとザ・ドリーム制作の、誰もがヒットを予感してしまうような作品。死語と指弾されてもかまわない、誰が聴いても“胸がキュンとする”はずだ。
08DAMAGE
繊細さと男気が交錯する洗練されたメロウ・サウンドは、ランナーズのプロデュース作品。ヒップホップ畑の制作とは思えないほど多彩なメロディがふんだんに披露され、歌心のある生ベースが曲をボトムから大いに盛り上げてくれる。
09WALL TO WALL
クリスにはこんなジャンプ・ナンバーがよく似合う。クリスのリズムと戯れる模範演技が存分に楽しめる、名将ショーン・ギャレットの作品。出世作「Run It!」にも通底する強力なダンス曲は、是非ともダンス可の場所で聴いていただきたい。
10HELP ME
粘っこく絡み付くクリスのヴォーカルが印象的な、テクノっぽいR&B。ソリッドなリズム・アレンジが心地良く、いろいろな声色とヴォーカル・アプローチで楽しませてくれる。リスナーを飽きさせない工夫にあふれている曲だ。
11I WANNA BE
ゆったりしたピアノのリフ・フレーズと絶妙な譜割りの歌メロが、見事に絡み合うバラード。自在にリズムを操るヴォーカルは圧巻。随所で感じる肌の色を超えたポテンシャルは、クリスがR&Bスターでなくポップ・スターであるゆえんだ。
12GIMME WHATCHA GOT
リル・ウェインのサグいラップもクリスのパフォーマンスによってポップに聴こえてしまう、ジャジー・フェイのプロデュース作品。艶と透明感がほどよく溶け合う完成度の高いサウンドに包まれながら、クリスがなんとも気持ち良さそうに歌っている。
13I'LL CALL YA
ソングライターにショーン・ギャレット、スウィズ・ビーツがプロデュースという強力曲。テンポ感を幻惑するバウンス・ビート、ドラマティックなトラック、シリアスなクリスのヴォーカル、どれをとっても一級品のV.I.P.サウンドだ。
14LOTTERY
2000年以前にはなかったハイパー・サウンドの新型メロウ・バラード。音の洪水といった感じのシンセがとても情熱的で、クリスの一歩も引かないタフさも光る曲だ。ソフトばかりじゃない、強いクリスを感じることができる一曲。
15GET AT YA
クリスにしては珍しく下世話なリリックが披露される南部サウンドだ。T.I.が得意とするような一辺倒なトラックだが、さまざまなヴォーカル・アプローチで楽しませてくれる。張りのある声が低い音の固まりのようなトラックに心地よく刺さっていく。
16MAMA
数あるママ・ソングの中でも語り種になるぐらいのポテンシャルを秘めた曲。優しいメロディと“ママはラッキー・チャーム(幸運のお守り)”といったリリックがよくマッチしている。母親について考えさせられる最強のママ・ソングだ。
17NICE
クリス・ブラウンを「ラン・イット!」で世に知らしめたスコット・ストーチのプロデュース曲。エッジの効いたリフ・フレーズは一度聴いたら忘れられないほど印象的。中間部で登場するゲームの客演はとても短いが、歯切れの良さがやけに耳に残る。
18DOWN
カニエ・ウェストの参加作品らしいインテリジェントなポップ・サウンド。キャッチーなギター・フレーズが満載されたアレンジは、音の見本市といった感じ。音数は多いが、その整理の仕方はさすが。ヒップホップやR&Bといった枠を超越した作品だ。
19FALLEN ANGEL
派手なシンセ・リフと控えめなピアノが織りなす世界が、とても切ないメロウ・サウンド。似通った音域のトラックだけに、いっそうクリスのヴォーカルが映えて聴こえる。メロウ作品なら山ほどあるぜ、といった感じの迫力を感じるボーナス・トラックだ。