ミニ・レビュー
沖縄のテクノ・ツインズ、3ヵ月連続リリースの最後は、アルバムとしては1年ぶりとなる3作目。タイトルはINSULARISMとRHYTHMを合体させた造語で、意味は“島国根性”だそう。沖縄で育った彼らのルーツを明るく揶揄したのだろう。
ガイドコメント
RYUKYUDISKOの3rdフル・アルバム。テクノを基盤にロックや沖縄民謡を取り入れた鋭敏なサウンドが展開されており、「ナサキ」をはじめ3ヵ月連続で発表されたシングル曲などが収録されている。
収録曲
01NICE DAY (feat.BEAT CRUSADERS)
日本語/英語/琉球弁をチャンプルーした歌モノのロッキン・ダンス・チューン。BEAT CRUSADERSのパワフルなビートとシンセの響きに三線の音色と掛け声が加わり、“ハイサイ”テクノを作り上げている。
02ナサキ (feat.MONGOL800)
同郷のミュージシャン、モンゴル800をフィーチャーしたロック・チューンで、RYUKYUDISKO初の日本語詞の楽曲。キヨサクの声にはヴォコーダーが通され、ビートも極太のドラムンベース仕様だが、あくまで歌のメロディが前面に押し出されたポップな仕上がり。
03パラダイス (feat.仲村奈月)
シンプルな沖縄音階の歌と上モノが、エレクトリックなドラムとエフェクトによってRYUKYUDISKO調に生まれ変わっている。以前からライヴでは演奏されていたという、ファンにはなじみの楽曲。チルアウトに適したピースルフルなサウンドだ。
04Super Spin Spam
ド派手なビート感が前面に押し出された力強い楽曲。粗い4つ打ちのボトムに乗るターンテーブルのスクラッチやところどころで垣間見える蛇味線サウンド、キュートな高音スクラッチなど、彼ららしいユーモアにあふれている。
05TAIKO DISKO
タイトルが示すとおり、“タイコ=ドラム”をメインに据えた楽曲。いかにもRYUKYUDISKOらしい沖縄風味のディスコ・トラックに仕上がっていて、途中のブレイクから高速ドラムンベースへの転調など、フロアを盛り上げる遊び心に満ちている。
06Cats&Dogs
BPM175で疾走する超高速テクノ・トラック。ディストーションが施されたサイバーなヴォーカルが耳に残る。ガバを彷彿とさせるハードコアな仕上がりだが、それでも上モノにはあくまで沖縄音階が用いられ、彼らの作風が保たれている。
07Sem Parar (Okinawa Sanshin Session) (feat.KALEIDO)
ブラジルのユニット、カレイドをフィーチャーした、女性ヴォーカルによるラヴ・ソング。ポルトガル語で歌われるハッピーなメロディとアッパーなテクノ・トラックが好相性。南国出身のアーティスト同士が生んだ、湿度0パーセントの爽快な楽曲だ。
08bibiBEACH (feat.lichard.)
地元のパーティ仲間であるlichardと作ったという楽曲。彼らの曲には珍しく、アコースティック・ギターのカッティングがメインで用いられている。夕暮れのビーチで聴きたくなるような、清涼感のある作風に仕上がっている。
09ELEKIデKANADERU★MINYOヲUTAU (feat.仲村奈月)
オウテカなどを思わせる、RYUKYUDISKO初のノンビート・トラック。三線、エレキ・ギター、沖縄音階のヴォーカルなどが、切っては貼られ、現れては消えていく。実験的なニュアンスが感じ取れる、アクの強いサウンドだ。
10dies ist Symphonie (season off)
彼らの曲の中では比較的シリアスで幻想的なトラック。トーンを落としたビート感や流麗なシンセのサウンドが、ピーカンの青空よりはむしろ輝く星空を連想させる。真夜中の野外レイヴで聴きたくなるような、ポップで神秘的な楽曲だ。
11夢のFUTURE (feat.KOTOMI)
大阪の女子高生ミュージシャン、KOTOMIをフィーチャーしたシングル・トラック。彼女のピュアネスに満ちた声とメロディが、RYUKYUDISKOの持つ清涼感と見事にシンクロしている。聴くだけで優しい気分になれるポップ・チューン。
12Ami Nu Ku Tuu (feat.SHINICHI OSAWA)
大沢伸一との共作で生まれた、“琉琴”と呼ばれる沖縄特有の楽器が用いられたスローなチルアウト・トラック。曲の抑揚を抑えながらも、メロディが存在感を放っている。アルバム『INSULARHYTHM』のラストにふさわしい、落ち着いた楽曲だ。