ガイドコメント
ロック・バンド、ガービッジの12年にわたる活動を網羅したベスト・アルバム。「プッシュ・イット」をはじめヒット曲が満載されているほか、ストリングスを導入しスケール感を強調した新録曲「テル・ミー・ホウェア・イット・ハーツ」も収録。
収録曲
01VOW
記念すべきデビュー・シングル。デジタル・エフェクトとグランジをブレンドしたゴテゴテなサウンドと、シャーリー・マンソンのビッチ臭漂う妖艶な歌声の絶妙なマッチングが、世間に鮮烈なイメージを植えつけた。
02QUEER
エレクトロなサウンド・エフェクトとスッカスカのブレイクビーツのリズムが気怠いスロウ・ナンバー。酩酊しているようなヴォーカルと変態を賞賛するような歌詞の内容など、終始、どこか背徳的で淫靡な香りが漂っている。
03ONLY HAPPY WHEN IT RAINS
インダストリアル・サウンドらしいズシンと重たいビートとファズの効いたノイジーなギターが気怠く疾走している、緩やかなロック・チューン。エッジのあるサウンドだが、甘ったるい歌声とキャッチーなメロディが全体の印象を丸くしている感じだ。
04STUPID GIRL
浮遊感のある妖艶なサウンドとノイズ・ギターのハードなカッティングが印象的なミドル・ロック・チューン。鬱々としたサウンドと歌詞が吐き出すダーティなメロディは、グランジっぽくもあるが、ニューヨーク・パンクの影響下にあるようにも思える。
05MILK
幻想的で曖昧としたサウンドの中をぼんやりと漂う輪郭のはっきりしないシャーリーの歌声が印象的なメロウ・バラード。自身をミルクに例えたシンプルな悲恋歌ではあるが、圧倒的なヴォーカルの存在感が独特でダークな世界観を作り上げている。
06 1 CRUSH
レオナルド・ディカプリオ主演の映画『ロミオ&ジュリエット』に提供されたナンバー。電子ビートをフィーチャーし、妖艶さを押し出したサウンドは、中期のスマッシング・パンプキンズのよう。映画同様、一途な恋心を描いた内容だ。
07PUSH IT
彼ら一番のヒット・ナンバー。エレクトロ・ビートのしなやかさと、オルタナティヴ・ロックのハードさ、インダストリアル・ロックのゴテゴテしたサウンドを理想的にブレンドしたともいえるノイジーなダンス・ビートは、脳髄をぐらぐら揺らすほどの破壊力。
08I THINK I'M PARANOID
エレクトロ・サウンドの浮遊感が心地良い前半部と、ノイズ・ギターが炸裂するサビの部分のギャップが抑揚を生み出す、抜群のポップ感あふれるミドル・チューン。電子音と生音の融合を試みていた彼らのネクスト・ステージを指し示した一曲。
09SPECIAL
ハードなビートと、ビートルズ的とも言える誰で口ずさめるようなキャッチーなメロディが抜群のバランスで同居したポップ・チューン。耳を疑うほど軽やかなコーラスに独特の妖艶さはないが、シャーリーの意外にもガーリィな一面を垣間見ることができる。
10WHEN I GROW UP
高速ブレイクビーツを大胆に取り入れた爆裂ディスコ・ポップ・チューン。ダンサブルなリズムとノイジーなギターが生み出す高揚感のあるサウンドは、ロックとダンスの垣根を蹴破り、すべての人々を踊りへと誘うほどの求心力を持っている。
11YOU LOOK SO FINE
メランコリックなピアノのフレーズと、ダークなエレクトロ・サウンドが融合したバラード・ナンバー。ドラマティックな泣きのメロディの美しさも素晴らしいが、心のひだへと入り込んでくる、繊細な歌詞の内容も胸を打つ。
12THE WORLD IS NOT ENOUGH
同名の『007』シリーズの主題歌として制作された、劇中音楽らしい大仰なストリングスが入るバラード。タイアップということで彼ら独特の毒はほとんどないものの、意外な一面を見せたという面では、プロフェッショナルな仕事をしたと言える一曲だ。
13CHERRY LIPS (GO BABY GO)
80年代のカイリー・ミノーグ、マドンナを彷彿とさせるキュートでガーリーなダンス・ナンバー。ハンドクラップとアッパーなサビがチアー・ソングのようにも聞こえ、これまでにない大胆な変化が感じられる。
14SHUT YOUR MOUTH
ワウ・ギターとラップ調のヴォーカルをフィーチャーしたルーズな一曲。DJのスクラッチなどもさらっと取り込み、遊び心満載のグルーヴでぐいぐい引っ張っていくサウンド・メイク力は、さすがともいうべきクオリティ。
15WHY DO YOU LOVE ME
へヴィなギターで幕を開けたかと思いきや、一気に疾走感ばりばりのロック・チューンへと様変わり。キャッチーなメロディと壮快なサウンドで聴かせるギミックなしの直球サウンドは、文句なしの格好良さ。
16BLEED LIKE ME
チェロの引きずるような旋律、陰鬱としたメロディの中に垣間見せる繊細さと美しさは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを思わせる。そこにブレイクビーツを融合させたサウンドは、懐かしいようで新しい。
17TELL ME WHERE IT HURTS
極彩色のストリングスが降り注ぐ、カーディガンズを彷彿とさせるような、驚くほどのポジティヴさに彩られたポップ・チューン。洗練されたメロディとやさぐれたシャーリーの歌声の組み合わせは意外だが、かなり絶妙だ。
18IT'S ALL OVER BUT THE CRYING
陰鬱とした電子音によるナイトメア・サウンドと妖艶なシャーリーの歌声というガービッジの旨味を存分に堪能できる美しきスロウ・ナンバー。失恋に沈む陰鬱とした歌詞の内容だが、メロディの美しさがすべてを洗い流してくれる浄化感を持つ。