ミニ・レビュー
“ケツメイシのような”で通じる独特のメロディ&ラップの世界はすでに円熟の域に。2、4、10、13曲目のシングル曲はあくまでポップに、「VS」のようなハードコアな曲もいいスパイスになっている。ラップを超えた“いい曲”をとことん突き詰める4人の気迫勝ち。
ガイドコメント
ケツメイシの5thアルバム。“禁欲合宿”を経て生まれたという色鮮やかなサマー・アルバムで、ヒット・シングル曲「旅人」「男女6人夏物語」「また君に会える」などが収録されている。
収録曲
01スタート
前作から約2年ぶりのアルバム『ケツノポリス5』のトップを飾るのは、痛快なケツメ流エレ・ヒップポップ。タイトルどおり、スタート・ダッシュさながらの勢いで駆け抜ける。盟友アルファのWADAとTSUBOIがラップを、プロデュースをYANAGIMANが担当。
02また君に会える
セミアコの柔らかな音色が醸し出す清涼感とどこまでも続く青い空のように広がるストリングスが印象的。これまでもステキな夏の風景を演出してきたケツメが放つサマー・ポップ・チューンだ。エビちゃんこと蛯原友里出演の資生堂「アネッサ」CMソング。
03歌謡い
“マイクだけ持ち いざ辿り着きたい/宗谷岬から波照間へ”。さすらいの歌謡いチーム、ケツメイシの決意表明チューン。ファンキーなブラスとブリブリのバングラ・ビートが、つかず離れず絡み合う。プロデュースはNAOKI-T。
04男女6人夏物語
男女3対3の甘酸っぱいグループ交際を歌い上げるサマー・ラブ・ソング。MAO-d(傳田真央)をフィーチャーした、初のデュエット曲でもある。自然に体が動き出すミディアム・テンポで、ダンス向きな1曲だ。
05サマーデイズ
はしゃぎすぎた夏ほど、その終わりにもの悲しい哀愁がやってくる。さまざまなドラマが生まれた夏へ向けて、そしてこれからも幾度となく訪れる夏に思いをはせて歌う。ゆったりとした空気感に包まれたレゲエ・テイストの心地よいナンバー。
06ケツメイシ工場
ローカルTVのアナウンサー風ナレーションで始まる、ケツメイシらしいユーモラスなチューン。名曲の数々は、4人の“過労死寸前”な労働によって、ケツメ工場から送り出されるのだ。“違法コピー もう焼かないで/中古で売りには出さないで”と心の叫び。
07恋の終わりは意外と静かに
“君はもういない 二度と戻れない”。流麗なストリングスをフィーチャーした、壮大なラップ・バラード。ブリッジ部のメロディとギター・ソロに泣きのツボを押されまくり。リアルな歌詞と畳み掛けるMCに胸が詰まる。
08ハッピーバースデー
ケツメイシ・プレゼンツのハッピーなバースデイ・ソング。“今日君は 世界一の幸せ者/だけどママがお腹痛め 君を生んだって事を/忘れちゃいけないの”。ほのぼのした温かいリリックに、弾むようなピアノのループとにぎやかなホーンが花を添える。
09夢の中
“あなたよ/また夢で会えますか?”ちょっぴり切なくてドリーミーなミディアム・ヒップホップ。二胡の音色と中国音階のフレーズがオリエンタルな雰囲気を醸し出している。“徒然”“久方”“たまゆら”など、和的な言葉選びも印象的だ。
10トレイン
シンセのサウンドが淡々と刻まれるシンプルなトラック上を、メロディアスなマイクリレーが駆け巡る。サビのメロディが力強い訴求力を持って奏でられるケツメイシの黄金パターン。スネアのロールが電車の車輪を彷彿とさせるキュートな楽曲だ。
11VS
“今日もまたメディアじゃ 偉そうに/聞き飽きたぜ もうそのきれい事”。ミッド・テンポのレゲエ風リズムに乗せた、硬派なメッセージ・ソング。ラストは、もの言う若者代表・ケツメイシによる痛烈な政治批判とアジテーションで締めている。
12ライフ イズ ビューティフル
ケツメイシの専売特許ともいえる、感涙のヒップホップ・バラード。ピアノとストリングスの美しい音色に鼻の奥がツーン。“泣きたい日は泣け 笑いたい日は笑え/泣いたり 悩んだりするから 人生は美しい”。一生懸命生きている、すべての人への応援歌だ。
13旅人
14君色
ベテランのブラス・セクションをフィーチャーした、ビッグバンド・ジャズの陽気なヴォーカル・チューン。とても明るいナンバーなのに、切ないのは何故だろう。ホンキートンク・ピアノとユニゾン・コーラスに、胸が熱くなる。
15さよならまたね
『ケツノポリス5』のクロージング・ナンバーは、“悲しみの終わりが 旅の始まり/また会えるさ この場所で”と名残を惜しむミディアム・スローのラップ・バラード。ライヴの最後にオーディエンスと大合唱する様子が目に浮かぶよう。