ミニ・レビュー
サマーソニックでお馴染みの米国産による4作目。バッド・ボーイ・ロックの香りも漂わせつつ、キルスウィッチ・エンゲイジ的なメタルコア、さらにブルースやキャバレー・ミュージックも巧みに吸収し、ポピュラリティと完成度が高い作品だ。「オールモスト・イージー」は日本盤のみ。
ガイドコメント
カリフォルニア出身の5人組ロック・バンド、アヴェンジド・セヴンフォールドの2007年11月発表のアルバム。印象的なツイン・ギターやメロディックな楽曲、そしてカントリー調のバラードまで、さまざまなエッセンスがミックスされている。
収録曲
01CRITICAL ACCLAIM
“世界で最も危険なロック・バンド”というマスコミ論が実感できる強烈なメロディック・メタル。攻撃性と圧迫感たっぷりに押し寄せる音圧、狂気のシャウト、そして随所に現れる切なくメロディックな旋律に、高い音楽性がうかがえる。
02ALMOST EASY
ピアノやストリングスを隠し味的に取り入れた、美しく退廃的な疾走型ヘヴィ・メタル。搾り出すように叫び続けるヴォーカルと地鳴りのようにとどろくドラミング、そしてクレイジーなギター・ソロに、多彩な演奏技術が隠されている。
03SCREAM
女性の鋭い叫び声が響き、演奏へ突入するゴシック・メタル。切なく胸をえぐるメロディとテクニカルに興奮をかき立てるツイン・ギター、そこに荒々しくパンキッシュな歌声が突き刺さる。雰囲気を重視した彼らの音楽観が生きている曲。
04AFTERLIFE
美しくも妖しげなストリングスの音色が、独特の雰囲気を作るロック・オペラ風。趣向を凝らした情熱的な演奏が、複雑でありながら明快な響きを持って聴き手に届く。セルフ・プロデュースのナンバーらしく、彼らの個性が詰まっている。
05GUNSLINGER
カントリー調のギター・バラードに始まり、徐々に音に厚みを持たせていくミディアム・ロック。シンプルにまとめた演奏と情念が漂うメロディック・ヴォーカル、前半と後半でガラリと変わる演奏に、彼らの振り幅の広さが表われている。
06UNBOUND (THE WILD RIDE)
彼らが“最も冒険的で野心的な曲”と語る、流れるようなキーボードの旋律がクールなメロディック・ロック。ピアノの音色を効果的に取り入れたほか、音楽的にもさまざまな要素を盛り込んでいる。聖歌隊を思わせる子供たちの歌声も可愛らしい。
07BROMPTON COCKTAIL
メロディックなコーラスと、ゆったりとしたサウンドを追求したグルーヴ・オリエンテッド・ナンバー。ブロンプトン・カクテルとは、癌やHIVの末期患者の痛みを取り除くために使われる薬の名前。病気というシリアスな題材を歌っている。
08LOST
ヴォコーダーを駆使したアップ・ビートなスカンジナビア・メタル風。オート・チューニングというヴォーカル・エフェクトに挑戦しつつも、メロディックな部分はしっかりと残している。ギターのシニスター・ゲイツお気に入りのナンバー。
09A LITTLE PIECE OF HEAVEN
オーケストラや映画のスコアといった劇場的なものが大好きな彼らが、新たに挑んだロック・オペラ風。愛する女を美しいまま記憶に残そうと殺してしまう戯曲的な詞を、起伏のあるシンフォニックなメロディの中に綴っている。
10DEAR GOD
新境地といえる、カントリー調のメロウ・バラード。神に“俺がいない間、彼女を抱きしめていてほしい”と、ゆったりとした甘美なメロディの中で歌っている。ギターのシニスター・ゲイツがウォッカを一本空けて、酔っ払いながら書いた曲。
11ALMOST EASY