ミニ・レビュー
全盛期のアルバムと勘違いしそうな、躍動感にあふれた快心作。Eストリート・バンドの好サポートが大成功の要因のひとつだが、原点回帰と政治的な主張を唱えながら、3、6曲目をはじめとする新しい代表曲を生み出している。アメリカでは初登場第1位を記録。
ガイドコメント
“ボス”ことブルース・スプリングスティーンによる、ロック史に残る名作アルバム。プロデューサーにはおなじみのブレンダン・オブライエンを迎え、ポップでロマンティックなギター・ロックを展開している。
収録曲
01RADIO NOWHERE
“俺は激しいリズムを感じたいんだ”と繰り返し歌われるロックンロール・アンセム。ブルース・スプリングスティーンとEストリート・バンドとのコンビネーションの良さを改めて感じさせてくれる、瑞々しいギター・ロック・サウンドだ。
02YOU'LL BE COMIN' DOWN
アコースティック・ギターとエレクトリック・ギターの力強いコード・ストロークが印象的な、王道ギター・ロック・ナンバー。世の中の因果応報について描いた歌詞には、アメリカ大統領に対する辛辣な皮肉も込められている。
03LIVIN' IN THE FUTURE
ダニー・フェデリッチのハモンド・オルガンとクラレンス・クレモンズのサックスが力強く絡み合う、典型的なEストリート・バンド節が堪能できるロック・ナンバー。ブルースのゴスペルへの傾倒がうかがえる、コーダ部分の大合唱が感動的だ。
04YOUR OWN WORST ENEMY
幻想的なストリングス・アレンジと分厚いコーラス・ワークが新鮮な、ブルース・スプリングスティーン流ウォール・オブ・サウンドが展開されたポップ・ナンバー。パティ・スキャルファの甘い歌声が、良いアクセントになっている。
05GYPSY BIKER
アコースティック・ギターとハーモニカによる素朴な弾き語りからEストリート・バンドのダイナミックなバンド・サウンドへとなだれ込む、力強いロック・ナンバー。ブルース自身が奏でる伸びやかなリード・ギターが印象的。
06GIRLS IN THEIR SUMMER CLOTHES
アーウィン・ショーの名著『夏服を着た女たち』を思わせるタイトルが印象的な、ブルースの文学的なセンスが発揮されたギター・ポップ・ナンバー。ポップでドリーミーなサウンドは、ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』風。
07I'LL WORK FOR YOUR LOVE
ブルースの実生活でのパートナーであり、Eストリート・バンドのメンバーでもあるパティ・スキャルファからインスピレーションを得て作られた、情熱的でロマンティックなラヴ・ソング。ロイ・ビタンが奏でるピアノのアルペジオが美しい。
08MAGIC
パトリック・ウォーレンが奏でるチェインバレンの不気味な音色とスティーヴ・ヴァン・ザントが弾くマンドリンの儚い響きが妖しく絡み合う、幻想的なアコースティック・バラード。ブルースの寂しげな歌声も印象的だ。
09LAST TO DIE
スージー・タイレルの力強いヴァイオリンの音色がフィーチャーされた、ドラマティックなロックンロール・ナンバー。“過ちのために最後に死ぬことになるのは誰だ?”というサビの歌詞は、ジョン・ケリーの有名な発言をアレンジしたもの。
10LONG WALK HOME
精力的な活動を続けるルシンダ・ウィリアムズに触発されて作られたロック・ナンバー。深い悲しみから立ち上がるかのように徐々に熱を帯びてくるバンド・アンサンブルと、どこまでもまっすぐなブルースの歌声の絡みが感動的だ。
11DEVIL'S ARCADE
砂漠の戦場で戦友を失った兵士の深い悲しみと絶望を描いた、「デビルズ・アンド・ダスト」にも通じるアコースティックなプロテスト・ソング。楽曲をドラマティックに飾り立てる重厚なストリングス・アレンジが胸に迫る。