ミニ・レビュー
約1年4ヵ月ぶりのサード・アルバム。まさに音速ライン節ともいえそうなどこか懐かしさを感じる美メロがたっぷり。ハード・ロックやオルタナのようなハードなサウンドでも、歌メロが始まれば彼らとわかるほど力強いメロディが並んでいる。
ガイドコメント
ロック・バンド、音速ラインの3rdアルバム。シングル3曲に加え、ライヴで人気の「旅ガラス」などを収録。独特の緩やかな雰囲気や疾走感と切なさにあふれる世界観がたまらない。
収録曲
01手紙
アルバム『三枚おろし』のオープニングを飾る、1分に満たないオーヴァーチュア的なナンバー。歌詞もこれから物語が始まるかのような挨拶のような内容。アコースティック・ギターとピコピコしたシンセサイザーのアンサンブルがキュートだ。
023428
オーヴァードライヴしたパワー・コードにチューニングの高めのスネアとゴリゴリのベースで、いわゆるオルタナ的なハードなサウンドを披露。歌詞はたった2行の文章を繰り返すだけというアグレッシヴなナンバー。
03旅ガラス
彼らの本領ともいえる、ポップなメロディ・ラインをもったミディアム・チューン。ハードなイントロからは想像できないディスコ・ナンバーに仕上がっており、ステディなリズム・セクションがとてつもなくグルーヴィだ。
04真昼の月
根岸孝旨がアレンジを担当しているが、決してベースが前面に出ることのない、歌メロを活かしたアンサンブルを聴くことができる。どこかしら懐かしさを感じさせるメロディが魅力の、6枚目のシングルとなった8ビート・チューン。
05恋うた
イントロのパワー・コードを使用したへヴィ・メタリックなリフが意表をつく7枚目のシングル。切ない気持ちを歌った詞と同様、メロディもエヴァーグリーンな懐かしさを感じさせてくれる。まさに音速ライン節ともいえる作品だ。
06未来サントラ
くじけそうになりながらも「この先の未来へ行こう」と自分を奮い立たせるポジティヴな意志に貫かれた、メロディアスなポップ・ソング。なめらかな音色のシンセサイザーで奏でられるシークエンスがキャッチーだ。
07真夏の匂い
アルバム『三枚おろし』の中盤に配された、わずか1分余りのインタールード的なナンバー。アコースティック・ギターとブルース・ハープによる、どことなく昭和のフォーク・ソングを思い起こさせるサウンドだ。
08僕らの物語
ハイテンポの1stヴァースから2ndヴァースではハーフ・テンポに落とすという、ユニークな展開。サビではヴァースのテンポに戻るが、2分音符と4分音符でメロディ・ラインを構築しているため、せわしなさは不思議と感じられない。
09ヒトカケ
ハイテンポながら4分音符を中心としたのびやかなメロディ・ラインが印象的。ストレートなポップ・チューンかと思いきや、間奏では4/4拍子から3/4拍子にリズム・チェンジ。どことなくプログレッシヴ・ロックっぽさも感じさせる。
10青春色 (あおはるいろ)
8thシングルは、カラフルでセンチメンタルに仕上げたポップ・ロック。ストリングスを巧みにフィーチャーしたメロディ・ラインに、美しいヴォーカルが混じり合う。そこへ乗せられた青春回顧の詞が胸の奥まで届く。
11ありがとうの唄 (ver.2)
人への感謝の想いを描いたミディアム・ナンバー。ナチュラル・トーンのエレクトリック・ギターとステディなリズム・セクションで、余計なことを一切そぎ落としたアレンジが潔い。語りかけるような藤井敬之のヴォーカルが胸に響く。
12ウソラシド
ユニークなイントロとちょっとセンチな詞が印象的。ニューウェイヴの影響下にあるような前半部から、ディスコ・ナンバーさながらのグルーヴィなリズムの後半部との2部構成。わずか30秒の中にも繊細なサウンド創りがうかがえる。
13また明日
アルバム『三枚おろし』のエンディングは、ライヴの終わりのMC風のクロージング・ナンバー。小曲ながらも、テープの逆回しのようなサイケデリックな風味や残像が続いていくような後半部など、凝りに凝ったサウンドだ。