ミニ・レビュー
これまでに発表したカヴァー曲、メンバーがソロ名義で参加したコラボレーション曲などを収めたコンセプト・アルバム。コーラス・グループとしての実力を示す「Stand By Me」、“Jazztronik featuring 黒沢薫”によるクラブ・ジャズ・ナンバー「流星」などを収録。
ガイドコメント
バックストリート・ボーイズのハウィー・D.とのコラボ・ナンバーや黒沢薫と夏川りみのデュエット・ソング、久保田利伸のカヴァー曲などを収録した、初のコンセプト・アルバム。存在感と美しさに満ちたハーモニーが聴きどころだ。
収録曲
01Stand By Me
オーソドックスなドゥー・ワップのスタイルで、ベン・E.キングの名曲をカヴァー。豊かな広がりを持つコーラス・ワークのなかで、原曲の魅力をしっかりと体現している。間奏パートのアレンジメント、口笛を使ったソロもステキだ。
02It Still Matters〜愛は眠らない (ゴスペラーズ with Howie D.)
ハウィー・D.(バックストリート・ボーイズ)とのコラボレーションが実現した、甘くて切ないラヴ・ソング。愛は終わることがないという肯定感に満ちたリリックと大らかな広がりを感じさせるメロディ・ラインが、スウィートなムードに包み込む。
03夏のクラクション
稲垣潤一の83年のヒット・チューンのカヴァー。筒美京平の作曲によるノスタルジックかつ高品質なメロディ・ラインが、彼らの卓越したハーモニー・ワークによって美しく蘇る。生楽器を軸にしたアレンジも心地いい。
04ギタリズム (加藤登紀子×村上てつや)
加藤登紀子と村上てつやによるデュエット・ナンバー。スパニッシュの香りをたっぷりとたたえたメロディと大人の情熱的な色香を感じさせるふたりのヴォーカルが、ゆったりとひとつになっていく。三沢またろうによるパーカッション・プレイも印象的。
05うつぼかずら (Fairlife featuring ゴスペラーズ)
浜田省吾、水谷公生らによる音楽制作ユニット“Fairlife”とのコラボーレション曲。異国情緒が漂うトラック・メイクと“ジプシー×J-POP”とでも言うべきメロディを融合させるアプローチが斬新。
06思い込み
小椋佳のクラシカルなバラード・ナンバーを、笹路正徳の編曲によりカヴァー。穏やかな空気を生み出すストリングス、しっかりと洗練されたバンド・サウンドにのる5人のヴォーカルには、耳の肥えた大人を納得させるだけの深みがある。
07The Longest Time
ビリー・ジョエルの代表曲を、ア・カペラ・スタイルでカヴァー。生々しくも心地いいグルーヴ感と有機的に絡み合っていくコーラス・ワークがたっぷりと堪能できる、普遍的な魅力を持ったトラックだ。
08CHATTANOOGA CHOO CHOO (島健 featuring ゴスペラーズ)
スウィング感たっぷりのスタンダード・ナンバーを、50年代っぽいオーセンティックなバンド・サウンドによって再現。ジャズ〜J-POPなど幅広いフィールドで活躍する名ピアニスト、島健とのコラボレーション曲。
09Rebirth (kitago-yama)
コーラス・グループ“TRY-TONE”の多胡淳と北山陽一によるユニット“kitago-yama”名義のア・カペラ・ナンバー。郷愁感たっぷりのメロディと重厚なエモーションが重なるコーラス・ワークが、グッと胸に迫る。
10沈まぬ夕陽 (ajapai featuring 酒井雄二)
11満点の星の夜 (黒沢薫 duet with 夏川りみ)
12流星 (Jazztronik featuring 黒沢薫)
“Jazztoronik featuring 黒沢薫”名義によるナンバー。クラブ・ジャズのエッセンスを注入したクールなトラックのなかで、黒沢のセクシーなヴォーカリゼーションが響く。クラブを舞台にしたリリックも、黒沢が手掛けている。
13タクシーと指輪とレストラン (村上てつや)
加藤和彦のトリビュート・アルバムに村上てつやが提供した作品。村上“PONTA”秀一など凄腕のミュージシャンが参加、成熟した大人のためのポップ・ミュージックを見事に提示している。抑制の効いたヴォーカルもいい。
14Dance If You Want It (ゴスペラーズ meets ナニワエキスプレス)
80年代から活躍を続けるフュージョン・バンド、ナニワエキスプレスとの共同制作による、久保田利伸のカヴァー。ソウル/ファンク/ジャズの要素をバランスよくレイアウトしたサウンド、コーラスが、この上なくカッコいい!
15Tシャツに口紅
ラッツ&スターの83年のヒット曲を、2000年代のR&Bとして再構築したカヴァー・ナンバー。太いビートと繊細に重ねられたコーラスが、美しくもシックなコントラストを描き出している。トランペットには桑野信義をフィーチャー。
16スローバラード
2000年3月に日本武道館で行なわれた、忌野清志郎の30周年ライヴでの貴重な音源を収録。“日本人によるソウル・ミュージック”をまっすぐに叩きつけながら、叙情的な曲想を描き出していく村上てつやのヴォーカルが素晴らしい。
17A HAPPY NEW YEAR
幻想的なロマンティシズムをたたえた原曲の雰囲気を、“声”だけで表現することに成功した珠玉のカヴァー・ナンバー。なめらかな広がりを持つコーラス・ワークに思わずウットリしてしまう……。編曲を手掛けているのは、北山陽一。