ミニ・レビュー
セルフ・リミックス・アルバムのリリースから間を置かずに、6作目のオリジナル・アルバムが届いた。今や日本のポップスの中心地に間違いなくいる中田ヤスタカの本拠地であるcapsule。自分の好きなクラブ系のサウンドとポップの折り合いが非常に興味深い。
ガイドコメント
中田ヤスタカ率いる男女2人組ユニットの通算10枚目のオリジナル・アルバム。ジャンルレスな音楽性に加え、よりメロディアスになったサウンドとリズムが唯一無二の個性を放っている。
収録曲
01construction
アルバム『FLASH BACK』の冒頭、1分間のイントロダクション。ミドル・テンポのシンプルなマシン・ビートに、“ファミコンサウンド”なシンセのフレーズがポップに絡む。カラフル極まりないこのアルバムのカラーを、雄弁に物語っているといえる。
02FLASH BACK
突如鳴り響く、アラームのようなシンセの絶叫。そこからさらにテンションの高いドラム・ビートと、ブリブリに歪んだシンセとベースがあふれ出す。ディスコ・パンクといっても差し支えないくらいの、ロックでエレクトロニックなインスト・ナンバー。
03Eternity
アルバム『FLASH BACK』3曲目にしてようやく顔を出す、待ってましたのヴォコーダー・ヴォイス。中田ヤスタカが作るクールなメロディ・ラインは相変わらず健在で、キュートなこしじまとしことの相性も良い。トラックはダンサブルな80年代ディスコ仕様。
04You are the reason
カラフル、ポップ、キュートの3拍子が揃った、capsuleの真骨頂。Aメロ、Bメロ、サビの展開がはっきりと存在し、歌謡曲としての機能性も持ち合わせている。全英詞で歌われる流麗なヴォーカルがソウルフルだ。
05Love Me
ノイジーなエレクトロ・サウンドで奏でられるサイバーなディスコ・ナンバー。こしじまとしこがつぶやきにも似たヴォーカル・スタイルで“Do you love me?”と連呼する、セクシーでクールな楽曲に仕上がっている。
06I'm Feeling You
シンプルで整合性のあるトラックであるがゆえに、ヴォーカルのメロディ・ラインが際立つ。全編日本語で歌われるポップで聴きやすいメロディの効果もあって、capsuleの歌謡曲サイドの特徴がよく現れている楽曲だ。
07MUSiXXX
ノイズまみれのデジタル・サウンドが不思議なキャッチーさを持って鳴り響く、capsuleらしい楽曲。ハウシーな4つ打ちやシンプルなフレーズとコードのリフレインが、曲にダンス・トラックとしての機能を持たせている。
08Get down
チープさスレスレの軽妙なシンセ・サウンドから幕を開ける、キュートなヴォーカル・トラック。力の抜けた詞世界とヴォーカル・スタイルは、聴けば聴くほどいつの間にかクセになる。Perfumeの楽曲にも通ずる、中田ヤスタカの真骨頂といえる好ナンバー。
09Electric light Moon light
揺らぎのあるビートと美しいシンセが絡む、R&Bのようなトラックが印象的。心地良いヴォコーダー・ヴォイスやポップでキャッチーな歌謡曲的展開を用いながら、洗練された切なさも同時に感じさせる、完成度の高い楽曲だ。