ミニ・レビュー
木根尚登を中心に、小室哲哉、宇都宮隆が参加、TM以前に活動していたバンド・SPEEDWAY。わずか2枚のアルバムを残して解散したバンド名をタイトルに持ってきたことによって、いわばSPEEDWAYのサード・アルバムともいえそうなサウンドと詞世界を持った作品。
ガイドコメント
およそ3年ぶりとなるオリジナル・フル・アルバム。彼らの前身バンドの名前である“SPEEDWAY”をタイトルに冠し、若かりし頃に向けられた今だから伝えられるメッセージが歌われる。懐かしくもあり新鮮でもある一枚だ。
収録曲
01ACTION
シンセサイザーによるオーケストレーションとシーケンスに生ピアノといった重厚なサウンドの壁。デジタル機器を使用しながらも、その合間を縫うかのように木根尚登のアコギが流れる。それはデジタルな“現在”とアコースティックな“過去”とを繋いでいるようだ。
02DIVING
コンポーザー・木根尚登がプレイするアコースティック・ギターがサウンドをリードしていく、フォーキーなマイナー・チューン。仮タイトルは「K-REX」とのことで、その名のとおりどことなくT-REXの雰囲気が漂うギター・スタイルが肝。
03PRIDE IN THE WIND
木根尚登作曲によるロッカ・バラード。宇都宮隆のヴォーカルは絶望感にあふれた未来をドラマティックで感情豊かに響かせる。アナログ・シンセのようなモノ・フォニックなソロが、過去に在籍したSPEEDWAY時代を思い起こさせてくれる。
04RED CARPET
木根尚登と宇都宮隆が肩を並べてコーラスをレコーディングしたというポップ・ナンバー。サビ〜ヴァース部分のどことなくノスタルジックなパートと、2ndヴァースでの、いわばTMっぽさがたっぷりのパートとの対比がプログレッシヴだ。
05TEENAGE
アルバム中、最も“SPEEDWAY”時代を思い起こさせてくれるナンバー。イントロのブルース・ハープと温かみのある音色のコード・ワークは、当時へタイムスリップさせるよう。作曲は木根尚登、作詞は小室哲哉が担当している。
06WELCOME BACK 2 (1983 Edit)
アルバム『SPEEDWAY』のリード・シングルで、本作中唯一のゲスト(ドラマーのそうる透)が参加したナンバー。さすがに手数たっぷりのドラミングがフィーチャーされている。彼らの曲名が歌詞中にちりばめられていて、ファンならニヤリとするはず。
07夏の終わり
小室哲哉がプレイするエレピと木根尚登がプレイするアコギがサウンドを彩る、フォーキーなミディアム・チューン。時代を懐かしむような哀愁が漂う詞を、宇都宮隆が切々と歌い上げている。
08N43 (1983 Edit)
小室哲哉がプレイするエレピから高らかに始まる、ノスタルジックなナンバー。タイトル「N43」は札幌に実在した店の名前で、「1974」が北海道地区でヒットしていた当時の記憶からとのこと。作詞曲は木根尚登。
09ELECTRIC MUSIC
アルバム『Major Turn-Round』でもプログレ的なアプローチをしたが、それよりもいわば70年代のプログレ黄金期の雰囲気を持ったインスト小曲。シンセやオルガンの導入の仕方などには、小室哲哉のこだわりを垣間見ることができる。
10YOU CAN FIND
歌詞カードに唯一手書きで掲載されたインスト・バラード。歌詞はSPEEDWAY時代のメンバーで、80年に交通事故で他界した故・阿部晴彦に依頼されたもの。ここでは歌は歌われていないが、天国にいる阿部には歌が聴こえていることだろう。
11MALIBU
攻撃的なサウンドを持ったインストゥルメンタル。へヴィなリズムの中でディストーション・サウンドのシンセ・ソロが響きわたる。ソロはアナログ・スタイルながらリズムは現代風の、過去と現在を繋いだアルバム『SPEEDWAY』のクロージングだ。